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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 大陸最後の未勢力圏

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(1)十教会

前半は説明回です。
 ラゼクアマミヤが建国してから早十年。
 セントラル大陸の街や村を特に武力に頼るわけでもなく、順調に吸収していった。
 最後に残っていたのは、北の街とその周辺にある町や村だけになっていた。
 ラゼクアマミヤが出来る以前のセントラル大陸の勢力図では、東西南北の四つの町が三十万近い人口を抱えてそれぞれの勢力を誇っていた。
 だが、その勢力図はこの十年で大きく変わっていた。
 アマミヤの塔にある町は、この十年で六十万以上の人口を抱える都市へと発展していた。
 文句なくセントラル大陸最大の都市という事になる。
 それだけではなく、早期にラゼクアマミヤに組み込まれた西と南の街も二十万以上の人口が増えている。
 更には遅れて組み込まれた東の街も十万以上の人口が増えた。
 ラゼクアマミヤという国家に組み込まれたことによって、明らかに都市としての規模が大きくなっているのだ。
 その一番の理由として、アマミヤの塔から送られる安定した食料の供給があげられている。
 塔の階層で作られた食料は、常に過不足なくそれぞれの都市に送られているのだ。
 さらに、塔の中では氾濫が起きないという事もある。
 勿論、氾濫自体が全くないと考えられているわけではない。
 ただし、塔の階層という限られた範囲内だけで冒険者、特に初心者の冒険者たちが活動するために、モンスターの活動が活発化すればすぐに分かるようになっているのだ。
 モンスターの大量発生のような動きがあれば、ある一定上の力を持つ冒険者をすぐに動員できるのも大きな点だ。
 結果として、大陸内の他の生産地と違って、モンスターの襲撃をほとんど受けずに安定して生産が出来るメリットがあるのだ。

 街の人口が増えれば、塔の階層で活動する冒険者が増える。
 大陸内の他の町と違って、冒険者になったばかりのひよっこが街の周辺警備の仕事などに就いて実力を上げられるのも冒険者が増える大きな要因になっている。
 セントラル大陸の冒険者達の間では、冒険者を目指す者はまずクラウン本部を目指せ、と言う言葉さえ出来ているのだ。
 食糧が安定供給されれば、街を維持するための人口を支えることが出来る。
 人口を維持するためには食料だけではなく仕事も必要になるのだが、それに関しても塔からもたらされていた。
 塔からはモンスターの素材が大量に流出している。
 その全てを塔内の街だけで加工するのは不可能で、当然町や村に送られて加工されたりするのだ。
 その加工の仕事が希望した町や村に回されることによって仕事も発生している。
 ラゼクアマミヤ国内では、これらの循環が上手く動いた為に全体的な人口増という結果になったというわけである。

 一方、ラゼクアマミヤに与することのなかった北の街は、以前と変わらない状況が続いていた。
 これは別にラゼクアマミヤが北の街を見捨てたというわけではない。
 当然ながら国内を優先するために、勢力圏内に入っていない町や村に仕事を回すという事はしていない。
 希望があれば商取引などは当然行っているが、優先順位が下がるのは仕方のないことだろう。
 そのために、ラゼクアマミヤが建国される以前と変わらない状況が続いている。

 北の街が今までラゼクアマミヤの勢力圏に入らなかったのには、北の大陸の存在がある。
 北の大陸では、教会の力が強く、時には国よりも教会の意向が強く働くことがある。
 北の街とその周辺の町や村もまた、その教会の影響を強く受けているのだ。
 人の意識というのはすぐには変えられない。
 特に宗教となるとその影響は強固なものになる。
 ラゼクアマミヤの勢力圏に入れば、北の街もまた他の三つの街と同じように成長が見込めることがわかっているのに、十年も状況を変えることが出来なかったのには、そうした事が影響しているのだ。
 だが、その北の大陸からの影響も十年という歳月の中で薄まりつつあるというのが、ラゼクアマミヤの為政者たちの見解であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 豪奢な部屋の作りに備え付けられたテーブルや椅子。
 滅多に一同が揃う事が無いそれらの椅子には、それぞれの主人が座っていた。
 椅子の色は、主人が属している教会の色に染まっている。
 椅子の数は全部で十。
 その数はそのまま北の大陸にある教会の数になっている。
 椅子の主人はそれぞれの教会の教主と呼ばれている者達だ。

 教主たちはそれぞれの区域の教会のトップに立つ者達だが、全ての教主が揃って会議を行うことなどほとんどない。
 大陸を揺るがすような大事件が起こったときなどは別なのだが、十数年ほど前まではそうした大事件が起こることもほとんどなかったのだ。
 だが、その状況が変わったのは、セントラル大陸でアマミヤの塔が攻略されてからのことだ。
 塔の中に町をつくるという前代未聞の事をやってのけた後は、あれよあれよという間に国を作るまでになった。
 今までのように教会の力で、その町に影響力を作ろうとしたが、それも全て跳ね除けられてしまった。
 しかも塔の攻略をした者は、現人神というあり得ない存在になってしまった。
 教会側としては、そのような存在を認めるわけには行かなかった。
 認めてしまうと、今まで築き上げて来た力がそがれてしまう。
 現人神が現れた時、十教会の教主たちはそう考えてしまったのだ。
 結論とすればそのようなことは無く、ほとんどと言って良い程表に出てくることは無かった。
 ただ、当時としてはそのようなことは分からず闇雲に、敵対するような行動をとることになってしまった。
 その結果が、ゲイツ王国の騒動に繋がることになる。
 現人神以外の神々の降臨騒ぎにまでなってしまったその騒動は、北大陸の十教会においてそれまでの影響力をそぐ結果になってしまった。
 強固にあった国家との繋がりが薄くなってしまったのだ。
 そうした背景があり、十教会はラゼクアマミヤに対して直接的な干渉を行うのを控えるようになった。
 唯一影響力を行使していたのが、北の街とその周辺の街や村という事になる。
 だが、その影響力もこの十年の間に、影を落とすことになっていた。

「馬鹿な。それではあの街を見捨てるというのか?!」
「人聞きの悪いことを言うな、青の。見捨てるのではない。あちらにとってもラゼクアマミヤに入ったほうがいいと言っているのだ」
「それを見捨てると言っているのではないか!!」
「まあまあ、青の。この場で怒りを見せても仕方あるまい。折角の機会なのだから話し合いをしようではないか」
 思わず激昂した青の椅子に座っている教主に対して、隣に座っている藍の椅子の教主が諌める仕草を見せた。
 それを見た青の教主は、一度だけ大きく深呼吸をした。
 確かにここで怒鳴ったところで自分が疲れるだけで、意味がないと思い直したのだ。
「とにかく、私は北の街を手放すことなど、絶対に認めない」
「ではどうするのだ? 今まで行って来た援助を其方のところだけで維持するのか?」
「何!?」
 思いもよらない所からの主張に、青の教主は眉を顰めた。
「何を驚く? この十年におけるあの街への援助は、我々にとって莫大なものになってきた。にもかかわらず、大きな成果も上がっていない」
 赤の教主の言葉に、他の教主たちも頷いている。
「北の街への援助を大陸内へとまわせていれば、より効果が高かっただろう。それを考えれば、今からでも打ち切りを考えてもおかしくはないであろう?」
 紫の教主からも赤の教主を援護する言葉が出てくる。
 それに慌てたのが青の教主だ。
「そ、そのようなことをすれば、我等が大陸の北の街への影響力が落ちてしまうではないか!」
「勘違いをするな。我等が大陸ではない。青の教会の影響力が、だ」
「我々にとってこの十年の援助は、全く意味のないものだった。かろうじて青の教会の影響力を維持できただけではないか」
「もっとも、それもそろそろ陰りが出ているようだがの」
 口々に出てくる他の教主たちの否定的な言葉に、青の教主は見えない所で拳を握りしめた。
 ようやくここに至って、否定的な意見を言っているの教主達が今日の話し合いでこの話を持ち出すことを事前に話し合っていたことに気付いたのだ。
「ともかく、私のところはこれ以上の援助は行わない」
 赤の教主がそう言うと、いくつかの教主がそれに同意するように頷いた。
「他の教主たちが援助をすることは止めない。好きに続けるがいい」
 最後に白の教主がそう締めくくった。

 結局、この話し合いで十の教会の内、五つの教会が打ち切りを決定し、他三つが保留とした。
 明確に青の教会に歩調を合わせたのは、他に一つだけという結果になった。
 この結果に、青の教主はただ黙って受け入れることしかできないのであった。
不穏な空気を見せていた北の教会が動き出しました。
この章で、北の大陸とラゼクアマミヤの関係もある程度の決着がつく予定です。
・・・・・・タブン。
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