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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その5)
402/1358

(7)階層見学前編

 ミアとルカの階層見学は後日という事になった。

 二人だけ先に見せると、他の兄弟たちが拗ねてしまうと思ったからだ。

 さらに、二人の母親の許可もきちんと取ったほうが良いだろう。

 シルヴィアにしてもフローリアにしても、コウヒやミツキの事はよく知っているので、万が一にも何かがあるとは考えないが、それとこれとは別だ。

 事後報告よりは前もって知らせておいた方が良いのは間違いない。

 という事を二人に説明をして、納得してもらってからその日はお開きという事になった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 後日。

 管理層は賑やかな様相を呈していた。

 いつものメンバーに加えて、シルヴィアとフローリアの子供たち全員が揃っているのだ。

 下は五歳から上は九歳までの五人の子供が揃うと、非常に姦しい。

 ついでに、普段子供たちに付き添っている狐達もいるので、普段の管理層では見れない状況になっていた。

 

「皆、大きくなったのう」

 子供たちの様子を見て、シュレインが感慨深げに目を細めた。

 月に二度はどちらかの子供が管理層に来ているので、会うのが久しぶりというわけではない。

 ただ、一度に揃うことは滅多にないので、時の流れを感じたのだ。

「そうですね~。皆、子供らしく元気いっぱいでよかったです」

「そう? 年の割には落ち着いていると思うけど?」

 子供の様子を見つつコレットが首を傾げた。

 トワを筆頭として、走り回ったりしているが、子供らしい叫び声のような物を上げることは無い。

「その辺は養育係のしつけだろうな。私が見ている限りでは、普段でもこんな感じだぞ?」

「そうですわね」

 フローリアの感想に、シルヴィアが同意した。

 シルヴィアの子供はともかく、フローリアの子供たちはいずれ人の上に立つことが決まっているので、しつけは厳しくされているのだ。

 女王の子供だからといって、甘やかしすぎに育てるような養育係は付けていない。

 もっとも、シルヴィアの子供の養育係も似たり寄ったりだったりするのだが。

 

 そんな大人たち(?)を置き去りに、子供たちは狐達と元気に遊んでいた。

 テンションが高いのは、全員そろって管理層に来たのが久しぶりだからだ。

「父上、今日は塔の階層を見学できると、ミアから聞いていますが・・・・・・」

「ああ、その通りだよ」

「よろしいのですか?」

「うん? 何がだい?」

「塔の事は、他の人たちには秘密ではないのですか?」

 トワの利発な問いかけに、考助は思わず目を見開いた。

 まさか、十歳にもなっていない子供からそんな心配をされるとは思っていなかった。

 思わずトワの頭を撫でつつ、考助はニコリと笑った。

「大丈夫だよ。だから今日見たことは、いろんな人に話してあげるといい」

 考助としても全ての階層を見せるつもりはない。

 何より百層全てを見せる時間などないのだ。

 ついでに、上級モンスターが出てくる階層に行くつもりはない。

 いくら最強の保護者が揃っているとはいえ、何があるか分からないのでわざわざ危険を冒すつもりは無かった。

 もし本気でそういった場所へ行きたいと言われれば、もう少し成長してからが良いと考えてる。

「わかりました」

 父親でもあり、塔の管理者でもある考助から確約を貰って、トワも安心したような表情になるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「それじゃあ、そろそろ行こうか」

 子供たちの準備が終わったのを見て、考助がそう声を掛けた。

 トワはココロと、ミアはリクと手をつないでいる。

 一人余ったルカは、ちゃっかりハクと手をつないでいた。

 ルカに懐かれているハクが戸惑った表情になっている。

「「「「「はーい」」」」」

 子供たちの返事に合わせて、考助はメンバーが頷くのを確認した。

 人数が多いので、現在の転移門は一人一人転移門を使うのではなく多人数仕様になっている。

「じゃあ、まずはミアの希望した砂漠から行くよ」

「やったー」

 考助の言葉に、ミアがリクと手をつないだままぴょんと跳ね上がった。

 それを笑って見ながら、考助は転移門を起動した。

 目指すは宣言した通り砂漠のある階層である。

 

「あっつーい!!!?」

 砂漠の階層に着いた瞬間、ミアが文句を言いつつそれでもどこか楽しそうな声で叫んだ。

 暑い暑いとは大人たちから聞いていたが、想像していた以上に熱くて驚いたのだろう。

 他の子供たちを見ると、似たり寄ったりの表情になっていた。

「父様、このような熱い所に、本当に生物はいるのですか?」

 そう聞いてきたのはトワだ。

 知識としては生物がいるのは知っていても、実感としてわかなかったのだろう。

 常に傍にいる狐達がいつもとは違う様子を見せているせいでもあるのだろう。

「勿論。こんな環境でも生きて行けるように特化した生物がちゃんと生きているよ」

「すごい!」

 ミアに手をつながれているリクが、目を見開いて周囲を見回している。

「・・・・・・本当に生き物はいるの?」

 考助の言葉を信じつつも今だ信じられないのか、ココロが聞いてきた。

「いるよ。・・・・・・そろそろ来るんじゃないかな? コウヒ、頼むね」

 周囲を警戒しているナナを見ながら考助がそう断言した。

 ナナの様子は近くにモンスターが寄ってきていることを示している。

 コウヒは考助が言いたい事をしっかりと理解してその場から離れた。

 折角見本となるようなモンスターが寄ってきているのだ。

 子供たちに生き物がいることをきちんと見せたい。

 

 考助の指示を受けたコウヒは、しっかりと役目を果たした。

 皆がいる場所から少し離れた所にいたモンスターをしっかりと引き連れて来た。

「・・・・・・大きいですね」

 そう言って何とか声を出したのはトワだ。

 他の子供たちは、モンスターの迫力に声を失っている。

 コウヒが引っ張って来たモンスターが、中級でも上位に当たるモンスターだったため第五層にいるモンスターとは迫力が違ったためだ。

 ちなみに彼らの前に来たモンスターは、全長二メートルを超えるサソリ型のモンスターである。

 餌の少ない砂漠の環境でどうやってその巨体を維持しているのかは分からない。

 考助としては、周囲に漂う魔力を糧にしているという可能性も考えているが、それは余談である。

「これから行くところもそうだけど、塔にはこういった危険なモンスターがたくさん出てくるから、絶対に一人で移動したりしたら駄目だからね?」

 子供たちには転移門を自由に移動できる権限は与えていないが、こういった念押しは重要だ。

 特に、生きた教材が目の前にいる状態で忠告すると、子供はよく覚える。

 考助の忠告に、子供たちは必死に頷くのであった。

 

 コウヒが引っ張って来たモンスターは、あっさりとコウヒ自身が片づけてしまった。

 普段子供たちの傍にいるコウヒが、さっさと強大なモンスターを倒してしまったことに別の意味で子供たちは驚いていた。

 コウヒが闘っているところなど普段見ることは無いので、当然の反応かもしれない。

 他にもモンスター以外の小動物などを見せた後は、すぐに別の階層に移動することにした。

 普段とは全く違う環境に長時間子供たちを置いておくと、何が起こるかわからない。

 一番砂漠に来たがっていたミアも十分堪能したようなので、一行はまた次の階層へと向かうのであった。

子供たちを引き連れての階層見学でした。

次回は眷属たちと会わせます。

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