(6)英才教育?
祝!400話!!
前々話から数年先へ飛んでいます。
研究室にこもって魔道具の研究をする考助の元へ、珍しい客が訪れた。
「お父様!」
その声に慌てて顔を上げた考助は、声がした方を見て笑みを浮かべた。
「ミア・・・・・・と、ルカか。どうしたんだ?」
二人の傍にコウヒがいることから、彼女が管理層に連れてきたことはすぐに見当が付いた。
親たちの許可が無ければ、コウヒが子供たちを連れてくることは無いので、当然母親の許可は取っているのだろう。
ちなみに、ミアはフローリアの長女で八歳に、ルカはシルヴィアの長男で五歳になっている。
フローリアは二男一女の三人兄弟で、シルヴィアは一男一女の二人姉弟となっている。
今のところ考助の子供で一番下はルカになる。
考助の返答に、ミアは少しだけむっとした表情になった。
「何か用事が無ければ、来てはいけませんか?」
折角来たのに、という感じで落ち込むミアに、考助はクスリと笑ってミアを抱き上げた。
「そんなわけないだろう? ・・・・・・よっと。おっ、また大きくなったな」
ミアを持ちあげた考助は、目を細めて子供の成長を感じた。
足元に寄って来たルカも前に見た時より大きくなっている気がする。
と言っても前に会ったのは半月ほど前なので、見た目で変わっていることがわかるわけではない。
あくまでも気分の問題だ。
流石に二人同時に抱き上げることは出来ないので、足元にいるルカは空いている手で頭を撫でてあげた。
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研究もひと段落ついていたので、ミアを抱き上げたままルカの手を引いてくつろぎスペースへと向かおうとしたところで、ミアがストップをかけた。
「お父様、また制御室見せてください!」
「制御室? それはいいけど、ほんとに好きなんだな」
「はい!」
ミアが満面の笑みを浮かべて答える。
「ルカもそれでいいのか?」
「うん!」
考助が視線を向けると、ルカも思いっきり頷いた。
どうやら二人共、元々制御室を目当てに来たらしい。
ミアは制御室にある三種のクリスタルが気に入っているのだ。
ミアが初めて制御室に入った時には、目を輝かせてクリスタルを見ていた。
クリスタルは、見ようによっては宝石のように輝いているので、子供が気に入るのも分かる。
これでクリスタルが子供の扱い方によって壊れやすいというような物であれば見せる許可はしないのだが、どうあがいても動かせるような物ではないのでいつも好きにさせている。
ルカの場合は、どちらかというと制御室そのものよりも、良く制御室にくるハクが目当てのような気もするのだが。
アマミヤの塔の制御室に入ったミアは、まっしぐらに制御盤へと向かった。
当初ミアの興味はクリスタルへと向いていたのだが、ここ数回は制御盤を眺めるのが好きなようだった。
手で触れると次々と情報が入れ替わって表示されるのが楽しいらしい。
これに関しては、ルカも同じなようで目を輝かせて画面を見入っている。
残念ながらハクはいなかったが、それでも気にした様子は見せていない。
勿論、二人には権限が無いので、あくまでも閲覧だけできる状態で何かを決定できるような権限は付けていない。
それでも何が楽しいのか、ミアは制御画面で次々と表示内容を変えて遊んでいる。
前の時に不思議に思ったので、フローリアに文字はどれくらい読めるのかを聞いたのだが、普段子供たちが使っているような言葉は普通に読めるようだった。
数字は普通に読める。
制御画面に出てくる文字のほとんどは名詞なので、大体理解できているのだ。
一方のルカは流石にまだ文字を読むことはほとんど出来ないようなので、純粋に画面の切り替わりを楽しんでいるだけだ。
もう一つの空いている席で、楽しそうに画面上を指でこすって表示を切り替えている。
単純にその動きが面白いと思っているのだろう。
「お父様、これは何ですか?」
「うん?」
ルカの様子を見ていた考助は、ミアの方へと寄って見た。
「ああ、これはいろんな階層に物を置ける画面だよ」
「階層?」
コテンと首を傾げるルカに、考助はどう説明したものかと少しだけ悩んだ。
「普段ミアが住んでいるお城がある場所は、塔のお外と比べて狭い場所だって言うのは知っているかい?」
「うん!」
それすらも聞いていなければ、どう説明したものかと悩む所だったが、聞いているのならなんとか説明できる。
「塔は、お城の一階二階みたいに、そう言った場所がいっぱい集まって出来ているんだ」
「うーん・・・・・・?」
とは言え、やはり難しかったらしくミアは首を傾げてしまった。
どうやって説明するか悩んだ考助は、丁度ルカが開いた画面を使って説明することにした。
画面上にミアが普段住んでいる城がある第五層を表示させた。
「これがミアが住んでいるお城がある第五層という階層だよ」
「ダイ、ゴ、ソウ?」
「そう。ほら。ここがお城がある場所だ」
管理画面では、ネットのマップのように各階層をある程度まで縮小したり拡大したりできる。
その機能を使って城があるのがわかるように拡大をして見せた。
「あ、お城がちっこいよ!」
「そうだね。少しだけ縮小したら・・・・・・ここがお城があって、ここが街。その周りに畑とかがあるのがわかるだろう?」
「うん!」
ミアは、側近たちに連れられて兄弟と一緒に町並みを見学することもある。
その記憶と画面に出ている位置関係がきちんと一致したようだ。
「これからもっと縮小して・・・・・・」
「お城がどんどん小さくなっていく!」
「そうだね」
画面上から見える城がどんどん小さくなって行くのを、ミアは目を丸くして見ている。
いつの間にかルカも傍によって来て、画面を見入っていた。
画面は、第五層全体が見えるところまで引いている状態になった。
「ほら。ここがお城で、この辺りが街のある範囲だよ」
「わ。小さい」
ミアは普段広いと思ってみている町並みが、画面で見ると小さくなっていることに喜んでいる。
隣に座っているルカも目を丸くして見ていた。
ちなみに、ミアは小さいと言っているが、第五層の街は既にかなりの大きさになっている。
最初の頃は最大表示にするとほとんど見えなかったのだが、今では町並みだけでもかなりの大きさになっていた。
周辺の畑まで入れると相当な広さになっていることがわかる。
この画面だけでもかなり発展してきていることがわかるようになっている。
「今ミアとルカが住んでいる町がある場所は、これくらいの広さなんだよ」
「うーんと・・・・・・走っても中々端っこに着かなさそう?」
「そうだね。今のミアの速さだと難しいね」
子供の足なので、とてもではないが一階層の端から端まで行くのは無理だろう。
勿論大人の冒険者となると話は別だ。
とはいえ、画面を見ただけできちんとそれが想像できたのは、かなりすごいことだと考助は思った。
「今のこの画面で見えているのが一階層だよ。塔は、どんなに頑張ってもこれより先には進めないんだ。無理に進もうとすると迷子になるから、一人で行こうとしたら駄目だからね?」
「はーい」
「で、塔というのは、こういう階層がこんな風にいっぱい集まってできているんだよ」
考助はそう言いながら画面を操作して、次々と階層を変えて行った。
その中でミアが一番反応したのは、砂だらけの砂漠の階層だった。
「ここは何にもないの?」
「何にもないんじゃなくて、ほとんど砂しかないんだよ。・・・・・・今度、一緒に行ってみようか」
「ほんと?!」
「勿論」
「やったー!」
何の準備もなしに砂漠のような環境に長時間いるのは厳しいだろうが、短時間なら構わないだろう。
砂漠の暑さだけでも経験させると面白いかもしれない。
勿論無茶をさせる気は全くないので、すぐに戻るつもりだ。
折角だから、眷属たちを見せるのも面白いかもしれない。
喜んで両手を上げているミアとルカを見ながら、考助はそんなことを考えるのであった。
というわけで、英才教育(?)でしたw
ここからミアとルカがどう成長していくのか楽しみですね。
階層についての説明を子供にしようとすると非常に難しいです><
次話は、子供たち(五人)を引き連れて、塔の見学でもしようかと思います。
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次話に向けて参考資料です。
フローリア
嫁五号。
トワ(永遠)
フローリアの第一子。長男 A才春生まれ
ミア(海空)
フローリアの第二子。長女 A-1才夏生まれ
リク(竜空)
フローリアの第三子。次男 A-3才秋生まれ
シルヴィア
嫁二号。
ココロ(心優)
シルヴィアの第一子。長女 A-2才春生まれ
ルカ(流海)
シルヴィア第二子。長男 A-4才冬生まれ




