(4)ガールズトーク
管理層のくつろぎスペースに、女性陣が集まっていた。
フローリアとシルヴィアがラゼクアマミヤに関わるようになって、全員が揃う事がほとんどなくなったために、こうしてまとまって集まるのは久しぶりの事だ。
ちなみに、考助は神域への定期訪問の日のため管理層にはいない。
折角なので、ガールズトークでもしようと呼び掛けて、全員の予定を合わせたのである。
考助が神域にいるために、コウヒやミツキも出席している。
ハクは、ナナの所に遊びに行っている。
フローリアとシルヴィアの子供たちは、乳母と共にアレクの家で預かってもらっている。
元気に走り回る相手としていつものように狐達もついているので、二人とも心置きなく楽しむことにしていた。
いつものように、神域へと向かう考助を見送ってから、女性だけの時間が始まるのであった。
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まず最初に出て来たのは、考助が最近特に気に入っているオチャ、クトゥールだった。
ミツキに用意されて初めて飲んだシルヴィアは微妙な表情になっていたが、意外にも(?)シュレインやピーチは普通の表情で飲んでいた。
「ふむ。中々深い味わいだの」
「そうですね~」
シュレインの言葉に同意するように頷きながら、ピーチは甘味にも手を伸ばしていた。
「あ、やっぱり美味しいですね」
そう言いつつ食べているのは、クッキーに近いお菓子だ。
クッキーを食べた後は、実においしそうにお茶を飲んでいる。
それを見たフローリアは、不思議そうな顔でピーチに問いかけた。
「飲みなれている感じがするが、同じものを栽培してたりするのか?」
「いえいえ、違いますよ~。一族に似たような飲み物が伝わっているんですよ。ただ、あれはこうした場で飲むような物ではなく、療養中に飲んだりする飲み物ですが」
ピーチの一族には、病気の最中やその後の回復に、クトゥールに似たような飲み物が伝わっているのだ。
もっとも茶葉とは違った種類の葉を使っているため、品質的には似て非なる物なのだ。
どちらかといえば、薬湯に近い扱いがされている。
ただ、それこそ子供のころから出される事が多いので、飲みなれているのだ。
「へー。薬湯ね」
ピーチの説明に、コレットが納得したように頷いた。
薬と言われて飲めば、独特の苦みのような味も納得できる。
「もっとも、こちらの方が味わい深いですけれどね~。ずっと美味しいです。これなら普通に飲めます。あちらの方が苦みが濃いですから」
「これより苦いって、完全に薬じゃないの、それ?」
「そんなことないですよ~」
ピーチは否定するように、パタパタと手を振った。
飲み薬として飲まれているわけではない。
病気になった時の薬は、他に出されたりしているのだ。
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「オチャに関してはいいとして、何かコウスケ様が性に関して悩んでいたんですって?」
そう切り出したのは、シルヴィアだ。
ピーチからマドサクの時の様子を聞いたのだ。
「む? 何の話だ? 私は初めて聞くぞ?」
女王業をしていて、中々管理層の様子を聞けないフローリアが、首を傾げた。
「あ~。あれはねえ」
ピーチと同じように、その時の考助の様子を見ていたコレットは、ため息を吐いてからさらに続けた。
「はっきり言えば、いつものようにコウスケの考えすぎよ」
「そうなのか?」
コレットの意見に、ピーチも同意するように頷いている。
「そもそもコウスケさんは、そちら方面の話に疎い所がありましたからね~」
「・・・・・・ああ」
シルヴィアが、思いっきり納得したような表情になった。
「ついでに言うと、私達の存在のせいもあるかもね」
「そうですね」
ミツキとコウヒも話に加わって来た。
「どういう事?」
「私達が常に傍にいることで、危機意識が薄れていた所もあるしね」
「塔の管理でモンスターと触れ合う事があるので、そちらは大丈夫でしたが、性に関してはここにいる全ての方々が押せ押せでしたから」
コウヒの言葉に、その場にいた全員が苦笑をした。
思い当りがありすぎる。
考助自身は自分が鈍いとは思っていないのだが、それ以上に女性陣が積極的だったために、流されるまま今の状況になっているように見える。
「私とシルヴィアと会ったときはそうでもなかった思うけどね」
「でもあれは、どちらかというと、身の危険の方が大きかったのでは?」
「それもそうね」
余計なトラブルを避けるためにさっさと塔に逃げ込んだので、それ以降特に何も起きなかったのだが、もし捕らえられたりしていたらどんなことをされていたか分からない。
もっとも、冒険者として活動していたコレットやシルヴィアは、そうした危険は常にあったのだが。
「考えてみれば、そうした意味では私もそうした危機意識は低下しているかもしれませんわ」
ふと思い当たったように、シルヴィアがそう口にした。
塔の管理層という閉じられた世界に籠ってしまったために、そうした視線を感じなくなっていたのだ。
今でこそ城という不特定多数の人間が闊歩する空間にいるために異性の視線を感じるが、管理層にいるときはそうした視線を気にする必要が無いのだ。
当然ながら考助に関しては、警戒するべき対象からは完全に外れている。
「そうかもな」
シルヴィアの言葉にそう同意したのはフローリアだけで、他のメンバーはそうなのか、といった表情になっている。
コウヒやミツキを除くその他の三人は同族たちの管理があるために、管理層で活動していたとしても普通に異性と接触する機会が多いためだ。
コウヒやミツキに関しては、そもそも身の危険を感じたとしても、返り討ちに出来るだけの力があるので気にする必要が全くない。
そう言う意味では根本から普通とは違っているので、二人の感覚は全く参考にならないのだ。
「まあ、うじうじと悩むようだったらさっさと誰かが忠告すればいいだけよね」
コレットの結論に、メンバー全員が同意するように頷くのであった。
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その後しばらくは、ごく普通のありきたりな会話をして楽しんでいた。
当然ながら子育てを始めた二人には、その話が集中することになる。
といってもシルヴィアもフローリアも普段は乳母に任せている状態だ。
暇を見つけては乳母が母親に会わせに来るような状態なので、ごく一般的な子育てをしているかは微妙だ。
「其方達は、子供はいいのか?」
折角子供の話が出たので、フローリアが子持ちじゃない三人に問いかけた。
「私はまだまだ先だと思うわ」
「吾もそうだの」
「私はどうなんでしょう~? よくわかりません。いつできてもおかしくはないんですが」
三者三様の答えが返ってきて、フローリアは首を傾げた。
「子供が欲しくて、進化を目指したのではなかったか?」
「その辺は元の種族の違いだろうの」
「そうなの?」
「ああ。そもそもヒューマンのように焦って子供を作る種ではないからな。ヴァンパイアは・・・・・・エルフもそうじゃろ?」
「そうね」
シュレインが視線を向けて来たのを確認したコレットが同意して頷いた。
ヒューマン基準で考えれば、シルヴィアもフローリアも十分適齢期のため子供を産むのはごく自然な考えだ。
だが、ヴァンパイアやエルフは種族的に行き遅れという概念そのものがない。
長寿種の特徴であるとも言えるかもしれない。
結果として男女が結ばれたとしても、周囲もすぐに子供がどうこうという話にはならないのだ。
「成程そういうことか。では、サキュバスはどうなんだ?」
このフローリアの問いかけに、ピーチは首を傾げた。
「うーん。どうなんでしょうね~。基本的には好きな時に作ればいいという考え方なので、そう言う意味ではヴァンパイアやエルフと似ているかもしれません」
サキュバスは、ヴァンパイアやエルフに比べて性欲という意味では強い面があるので、もともと子供の数は多い。
ただし、ヒューマンのように結婚をしてすぐに子供が望まれるというわけでもない。
この辺りはやはり種族的な違いなのだろう。
それぞれの考え方の違いや体質などもあるために、子供に対する望まれ方も種族によって大きな差があることを確認した女性陣なのであった。
というわけで、女性の集いでしたw
何となく普段会話されていそうな内容を書いてみましたが、本筋とはほとんど関係なかったですね><




