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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 スミット王国
392/1358

(5)転移門

 転移門で使うカードの登録はすぐに終わった。

 フローリア女王が何やらどこかと会話をした後で、レメショフが転移門にある認証用のプレートにカードをかざすことで終了した。

「これで登録は終わりだ。使用するときは、そのカードに其方の魔力を込めてそこにかざせば自動的にスミットへとつながる」

 フローリア女王から簡単に使い方の説明を受けながら、レメショフは慎重な様子で頷いていた。

「そのカードがあれば、いつでも自由に行き来することが出来る。ただし、其方の魔力で反応するようになっているので、其方以外は使えないことに気を付けるといい」

「私だけ・・・・・・ですか? クリストフ王太子や王は・・・・・・」

「使えない。其方だけだ」

 フローリア女王のあっさりとした返答に、レメショフが顔を青くした。

 いくらなんでも国王すら使えない物を、自分が管理することになるとは思っていなかったのだ。

「王が使えるようにするには・・・・・・」

「出来ない。一枚のカードに付き使えるのは、一名だけだ。カードを望んだのは、其方の国だ。諦めたほうがいい」

 何とか重すぎる責任を回避しようとしたが、フローリア女王の答えはどうにもならない物だった。

 レメショフは抵抗を諦めて、渋々と肩を落とすのであった。

 

 その二人の会話を聞いて、クリストフはある疑問を抱いた。

「アマミヤの塔には、他にも転移門が存在していると思いましたが、それらはどのように使われているのですか?」

 専用のカードを使用しているのに、冒険者たちは自由に転移門を使用していると報告が来ていた。

 転移門を利用する全ての者達にカードを渡しているのか、不思議に思ったのだ。

 塔において、転移門は防衛の要になるので、正確な答えは返ってこないだろうと考えつつ質問したのだが、特に秘密にしていないのか、あっさりと答えは返って来た。

「このカードを利用する必要があるのは、塔と外部をつなぐ転移門を利用する場合だ。塔の内部をつないでいる転移門を使用する場合は必要ない」

 もう少し細かく話をすると、と前置きをしたうえでフローリア女王は転移門の扱いについて説明をした。

 塔の中の移動であれば、転移門は決まった場所へと繋がるようになっているため、カードは必要が無い。

 塔の外からの移動にはカードが必要になるのだが、クラウンに登録済みでクラウンカードを持っている場合は、レメショフが持っているカードと同じ役割をしているという。

「・・・・・・という事は、冒険者たちの中にはこの転移門が使える者もいるというわけですか?」

 危機感を募らせてレメショフが聞いた。

 今はしっかりと管理されているが、冒険者が大挙してスミット国に押し掛けてくる可能性もあるのだ。

 一応今でも条約に従って監視を置いているとはいえ、国境警備に比べればざるとも言える。

 だが、その心配をよそにフローリア女王は首を左右に振った。

「いや。カードには個々に利用できる転移門が登録されている。ここにある転移門は冒険者たちのカードでは使えない」

 それを聞いたクリストフは内心でホッとした。

 フローリア女王もそうなることがわかっていて情報を開示したのだ。

 余計な疑いは持たれないようにするのが当然なのである。

 もっとも、フローリア女王が全て正しいことを言っていることが前提になるのだが。

 そもそも塔に関しては不思議の塊なので、どの情報が正しいのかどうかなど判断することはできない。

 だからと言って転移門を使えないようにしてしまうのはデメリットが大きい。

 リスクを負ってでも転移門を設置する意味があるので、ある程度の事については目を瞑るしかないのだ。

 こればかりは、ラゼクアマミヤ国およびクラウンを信用するしかないのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 カードの使い方をある程度聞いた後は、一度フローリア女王とは別れた。

 クリストフ達は、大使館の扱いになる屋敷を見るために街の案内を兼ねて色々見て回ることになっているのだ。

 その間は高官が案内することになっているので、フローリア女王は城へと引き返したのである。

 ラゼクアマミヤの首都である城下町は、塔の中に存在しているとは思えない程に大きな街になっていた。

 高官の説明によると今でも街は広がっていて、とても数年で出来た街とは思えない規模になっている。

 そんな街の様子を感嘆の想いで見ながら、クリストフはスミット国の王太子としての視点で見ることも忘れていない。

 ラゼクアマミヤは、同じ大陸内に一つしか存在していない国家のために外敵が無いと言って良い。

 普通に考えれば、海を渡って他の大陸から占領されることもあり得るのだが、ことセントラル大陸に関してはそれは起こりえない。

 既に国家間では常識になっている塔の防衛機能が高すぎるのである。

 そのことから考えても、ラゼクアマミヤ国が滅亡するとすれば、内部の反乱かもしくはセントラル大陸内の支配権外の勢力が蜂起するかしかないのだ。

 だが、ラゼクアマミヤの支配権は既に大陸の四分の三近くなっている。

 とてもではないが、支配権外の勢力がラゼクアマミヤを打倒することは出来ないだろう。

 そもそも武力らしい武力を持っているわけではないのだ。

 内部の反乱に関しても、セントラル大陸初の国家と言うことで、住人達の期待が非常に大きいのでこれも難しい。

 フローリア女王の治世が上手くいっていないのであれば付け入る隙もあっただろうが、今のところはそのような隙はまるで見当たらない。

 と、こんなことを考えているクリストフだが、スミット国はラゼクアマミヤ国が滅亡することを期待しているわけではない。

 むしろ出来るだけ長く続いてほしいと考えている。

 その方が、安定してフリエ草を供給してもらえるためだ。

 スミット国は、ラゼクアマミヤと言う国が出来る前からクラウンとフリエ草の取引をしてきたが、やはり国家という共同体があった方が様々な取り決めをする対象としてやりやすいのだ。

 

 そんなことを考えながら、スミット国の大使館となる屋敷を訪問して、その後は城へと向かった。

 クリストフがいるために、正式にスミット国からの訪問団としての扱いを受ける。

 この辺りは、大小の規模の違いはあるが、他の国々と変わることはない。

 ラゼクアマミヤの高官たちが集まる城内で正式に大使館が設置されて、そこに常駐の駐在官としてレメショフが紹介された。

 夕食の席では、グッと人数を絞って会食が行われた。

 料理のレベルも他国と比べて遜色がない物だった。

 そんな中で、ちょっとした事件が起こった。

 スミット国として用意した贈り物の中に、特産品の一つであるクトゥールも入っていた。

 そのクトゥールを見たラゼクアマミヤ側にいた者が、驚いたような声を上げたのだ。

「こ、これ、お茶じゃないの?!」

「オチャ? そうなのか?」

 その者はフローリア女王に近い席に着いていたので、それなりに身分が高いと思われるのだが、「コウ」という名前だけ紹介されて役職などが無かった。

 だが、親しげにフローリア女王と会話をしたりしていたので、重要な人物だという事は分かっていた。

 今もまた、フローリア女王が首を傾げつつその者に問いかけていた。

 

「オチャ・・・・・・ですか? それは我々の国のクトゥールという特産品です」

「その中にある物をお湯に浸して飲む物になります」

 クリストフの説明に、レメショフが補足した。

 その説明を聞いたコウと言う者は、喜び勇んで飲んでみたいと言い出してきた。

 飲んでもらうために用意したクトゥールだ。

 スミット国側としても否やはない。

 すぐさまラゼクアマミヤの者達に、クトゥールが振る舞われることになるのであった。

というわけで、お茶が登場しましたw

クトゥールは、緑茶になります。

緑茶は今まで出してなかったはずなので初登場になります。

(作者の記憶違いで既に出ていたら申し訳ありません><)

ちなみに、スミット国以外では薬湯扱いになっています。

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