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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その4)
385/1358

(5)教会の動き

 シルヴィアはラゼクアマミヤの居城で、客人を迎えていた。

 傍にはリリカも控えている。

「ご無沙汰していましたね。神殿長」

「巫女様もお元気そうで何よりです」

 シルヴィアの挨拶に穏やかに笑って答えたのは、ミクセンの神殿長の一人であるローレルである。

 ラゼクアマミヤが出来た前後は、ゴタゴタしていたが現在はそれなりに良好な関係を築いている。

 ミクセンの三神殿側が考助を神殿内に祀ることを決めてから、適度な距離を置いて付き合うようになったのだ。

 神官や巫女を神殿内に置けなどと言う要求は、現在ではされていない。

 こうもすんなり関係が改善したのには、大陸内における考助の現人神としての認識が高まったことに起因している。

 新しい神であるがゆえに、新しい祀り方もあるものとして神殿側にも受け入れられたのだ。

 今では第五層にある神殿に、ミクセンの三神殿はもとより大陸にある他の神殿の神官や巫女も清掃に来たりしているほどなのだ。

 それだけ冒険者の間で、考助の信仰が徐々に根付いてきたのだ。

 何より神与物である第五層の神殿で考助の神威を感じることが出来ると聖職者たちの間ではもっぱらの噂になっている。

 実際にローレルも何度か神殿に訪れたが、ミクセンにある三神殿よりも強く神威を感じ取れた。

 そのため、神威を感じ取ることを修行の一つとしている聖職者たちにとっては、絶好の修業の場となっているのだ。

 その中でも一番の成長頭は、今シルヴィアの傍に立っているリリカだ。

 シルヴィアの片腕になる前は、ただの一冒険者だったと考えれば信じられないほどの出世なのだ。

 シルヴィアに見いだされたばかりの頃は、中傷に近いような噂なども流れたことがあるが、それらの噂は現在では既に消え去っている。

 巫女としての実力も認められているのだ。

 コウスケ神の巫女であるシルヴィアは勿論として、リリカもまたセントラル大陸内では知名度が上がっているのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「それで? 本日はどうされたのでしょうか?」

 一通りの挨拶を終えたシルヴィアは、スパッと切り出した。

 ローレルはたまに神殿に顔を出すことはあっても、シルヴィアに直接面会を申し出ることは珍しいのだ。

 そんなシルヴィアに、ローレルはクスリと笑った。

「ただ様子を見に来たと言っても信じないのでしょうね?」

「下手に手を出すのは駄目だと身に染みているのに、そんな危険を貴方が冒すとは思えません」

「まあ、そうなんですけれどね」

 ローレルは一つだけ溜息を吐いてから要件を切り出した。

「・・・・・・また最近になって、北の動きが活発になっているようですよ」

 その言葉を聞いたシルヴィアは、ローレルと同じように呆れてため息を吐いた。

「まだ懲りてないのですか?」

 ローレルが言う北というのは、北の大陸にある教会を指している。

 なんとか影響力を持とうと、ラゼクアマミヤが建国した当初から色々とちょっかいを掛けてきているのだ。

 建国する前に起こした騒動で、教会の一つは完全に力を落としているのだが、それとて一つの勢力でしかない。

 信仰の力が他の大陸に比べて大きい北の大陸では、他の教会の勢力もあるのだ。

 それらの勢力が主導権を握ろうと、色々と話を持ってきているのである。

 勿論、ゲイツ王国の時のようなあからさまな物ではなく、あくまでも第五層の神殿に神官や巫女を送り込んで影響力を持ちたいと言った程度なのだが。

 それはあくまでも通常の教会としての活動に収まる範囲内なので、前の時のように神々の怒りを買うと言った物ではない。

 

「彼らにしてみれば、あの時の失点をどうしても挽回したいという思いがあるのでしょうね」

「そもそもコウスケ様に普通・・を求めても駄目だと、これまでの経緯で分かっているでしょうに」

「彼らにはそれが通じないのでしょうね」

 二人そろって再びため息を吐いた。

「頭が固いというか、もう少し柔軟に対応してもいいと思いますわ」

「耳が痛い話ですね」

 今となっては態度を変えているミクセンの神殿であるが、以前は同じような対応をしていた。

 ローレルの言葉を聞いたシルヴィアは、首を左右に振った。

「ミクセン、と言うよりこの大陸の神殿はまだいいですわ。きちんとコウスケ様に合わせるという事をしていますから。ですが、他の大陸はそうもいかないようですね」

「北だけではないのですか?」

 ローレルの疑問に、シルヴィアは頷いた。

「他の大陸も似たり寄ったりですね。北ほどあからさまにやってこないだけですわ」

 北の大陸の教会と違って、他の大陸の場合は国を通して要求を通そうとしたりするので、なおさらたちが悪かったりする。

 その中には、どうしてもシルヴィアが対応をしないといけないことも出ているのである。

 

「それは、また・・・・・・。これは要求と言うより、あくまでも提案として聞いてほしいのですが、いいですか?」

「・・・・・・なんでしょう?」

「そろそろ他の人材も増やしては如何ですか?」

 ローレルの提案に、シルヴィアは片方の眉を跳ね上げた。

 その顔を見たローレルは、手をパタパタと振った。

「私のところの巫女や神官を受け入れろというわけではありません。それこそ、そちらのリリカ殿のように市井にある聖職者などを入れてもいいでしょう?」

 ローレルの言いたいことを理解したシルヴィアは、それでも首を左右に振った。

 リリカを受け入れたのは、考助の加護を持っているという特殊な事情がある。

 ローレルはそんなことは知らないからこそこんな提案をしていのだ。

「それは少なくとも現状は、難しいですわ。私ではなく、コウスケ様の都合もありますから」

「そうですか。神の都合であれば仕方ないでしょうね」

 神々が人の思惑通りに動かないことなどはごく当たり前のことだ。

 それを無理に動かそうとしたり、事実を捻じ曲げたりしようとすると、それこそゲイツ王国と同じ運命を辿ってしまうこともあるのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 北の大陸に関しては、今まで通り様子見という事でローレルは帰って行った。

 これまでも何度か大きな動きをする前兆があったりしたのだが、そのたびにつぶれたりしている。

 今度も大きなことにはならないだろうと考えているのだ。

「本当に、よろしいのですか?」

 ローレルが去った後で、リリカが聞いてきた。

「あまりよろしくはないわ。リリカだってずっとこのままでいいわけではないですしね」

 リリカも既に適齢期終盤を迎えようとしている。

 シルヴィアとしても良縁があれば、当然そちらを優先してほしいと思っている。

 リリカもシルヴィアの助手として動くようになったからか、以前のようなお転婆なイメージから落ち着きを見せるようになった。

 そのため、道を歩けばそれなりの異性が振り向くようになっているのだ。

「あ、いえ、その。私は、別に・・・・・・」

「あら、そう?」

 慌てるリリカに、シルヴィアはニンマリと笑った。

 

「言っておくけど、コウスケ様に近づくには中々厳しいハードルがあるわよ? ただし、もしどうしても、と言うのであれば私は応援しますわ」

「シルヴィア様!!」

 シルヴィアのからかうような宣言に、リリカの悲鳴のような絶叫が響き渡るのであった。

最後はリリカを落ちに使ってしまいましたが、今のところ彼女がメンバー入りすることは考えていません。

いい相手が見つかればいいですねw

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