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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 旅(サミューレ山脈編)
359/1358

(7)プロストの棺

 通路を進んだ先には扉が一つあったが、考助は難なく仕掛けを見つけて開けることが出来た。

 さらにそこから進むことが出来たのは、考助達がナナを含む五人と神殿側が五人の十人だ。

 扉から一歩踏み込むと、そこはある程度の広さの広間になっていた。

 その広間には、中央にある物が置かれている以外には何もなかった。

 壁面にはいくつかの扉と壁画のような飾りが施されているだけだ。

 一同は、部屋の中央に置かれているところまで近づいて行った。

「・・・・・・棺?」

 そう声を上げたのは、神殿側の神官の一人だったが、それは考助から見ても棺にしか見えなかった。

「これは一体何なのでしょうね?」

 神殿長がそう考助に問いかけて来たが、考助にもそれが何であるかは分からなかった。

 素直に、分からないと答えようとしたその時、シュレインが突然言葉を発した。

「そうか。そういう事だったか」

 一同が首を捻る中、そのシュレインの声が部屋に広がり一同の視線を集めた。

「何かわかったの?」

「ああ、全部とは言わないけど大体はの」

 考助の視線を受けて、シュレインが頷いた。

「何故あんな曖昧な噂に止まっていたのかも分かったぞ?」

「へー。それはまた。説明してもらえる?」

「いや、それをするのは吾の役目ではないだろう。これがここにあるという事は、説明すべき者がいるはずだからの」

「説明すべき者?」

 首を傾げた考助に、シュレインがさらに説明しようとしたその時、一同が入ってきた方向とは真逆のところから声が聞こえて来た。

 

「それは、私の事かしら?」

 全員の視線が其方の方向へと集まった。

 そこには、いくつかある扉のうちの一つがあり、女性が一人立っていた。

 その女性に向かって、神官の一人が飛び出して行った。

 その手には剣が握られている。

 何をしようとしているのかは一目瞭然だったが、ミツキたちは動いていない。

 勿論ワザとだ。

 その神官の剣が、女性に到達する寸前にキンという高い音が部屋に響いた。

「くっ・・・・・・!?」

 その神官が怯んだような表情になったが、その時には別の神官たちもそこに集まっていた。

「あらあら。折角出て来たのに、穏やかじゃないわね。・・・・・・っと!?」

 神官たちの動きには焦った様子を見せなかったその女性が、驚いたような表情になった。

 考助が、短くミツキに向かって一言つぶやいただけで状況が一変したからだ。

「止めて」

 たったその一言でミツキはすぐに姿を消して神官たちへと向かって行った。

 その数秒後には、神官たちはそれぞれの武器を遠くへと弾き飛ばされていた。

「これ以上続けるんだったら・・・・・・わかるわよね?」

 圧倒的な実力差を見せたミツキが、そう言ってニッコリと笑った。

 その笑顔を見た神官たちが、うろたえた表情になった。

 

「なっ・・・・・・!? 貴様、何をする?」

 ミツキに向かって、神殿長と同じように動いていなかった神官が言って来た。

 先ほどから考助に向かっていろいろ言ってきている神官だ。

「何をするも何も、話も聞かずにいきなり攻撃する方が穏やかではないでしょう?」

 その神官に答えたのは考助だった。

「邪魔をするのですか?」

 神官に替わってそう聞いてきたのは、神殿長だった。

「邪魔も何も・・・・・・この町の結界が失われてもいいんですか? 場合によっては、人が住めなくなりますが?」

「・・・・・・どういうことでしょう?」

「どうもこうもないですよ。この町を覆っている結界があるのは、この神殿があるからというのは分かっているのですよね?」

「それは勿論」

「でしたら、その機能を維持管理している者がいるとは考えなかったのですか?」

 考助の言葉に、神官が馬鹿にするように言って来た。

「馬鹿なことを! この神殿は神与物だ。維持をしているのは、神の御力によるものだろう!」

 それを聞いた考助達は、思わず絶句してしまった。

 出て来た女性も呆れたようにつぶやいている。

「うわー。今ではそんな風に思われているんだ」

 その女性にちらりと視線を向けた考助は、呆れたように一つため息を吐いた。

「成程。これは神託も出すわけだ」

 考助の言葉に、シュレイン達が同意するように頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助が、神殿長と神官たちに向かって話始めた。

「まずはっきりさせておきますが、アルキスの神殿が神与物であることは間違いがありませんが、この神殿を維持しているのは神ではありません」

 考助の断言に、神殿長がゆっくりと確認するように聞いてきた。

「では、誰が?」

「勿論、この女性あるいはその仲間でしょう。はっきり言えばこの女性がいなくなれば、永遠にアルキスの町が失われる可能性があります。それでいいのですか?」

 それを聞いた神殿長は、首を左右に振った。

「それだけでは信用に値しません。維持しているのがこの女性だという証拠はどこにあるのですか?」

「証拠。証拠ね」

 神殿長の言葉に、ついに考助は今までの態度を改めた。

 神殿長もまた神官であるがゆえに仕方ないのかもしれないが、余りにも盲目的すぎる。

「さきほど僕は、証拠たりえることを言いましたが? そもそも貴方が私達を信用していたのはなぜ?」

 そもそも神官長が考助達をある程度まで信用したのは、神託があったためだ。

 監視などを付けたりもしていたが、神託が無ければそもそも一冒険者のいう事などここまで聞いたりはしなかっただろう。

「それとこれとは話が違う。神託があったのは、この神殿の事についてではない!」

 噛みつくように言って来る神官に、考助はこれは話しても無駄だと判断した。

 神殿長は戸惑うような表情になっているが、神官たちは今この場でどうこうすることは無駄だろう。


「ミツキ、彼らを動けないようにして」

「分かったわ」

 考助に指示されたミツキは、さっさと魔法で神官たちを縛ってしまった。

 たったそれだけで、神官たちは動けなくなってしまう。

 神殿長と神官代表(?)はその被害に遭っていないが、勿論ワザとである。

 一人だけでも神殿側の人間がいないと駄目だろうと判断しての事である。

「取りあえずこれで、話を続けてもらっていいかな?」

「勿論よ」

 女性は今まで、一連の流れを苦笑しつつも黙って見ていた。

 その女性がいきなり考助の目の前まで来て、いきなり片膝を立てて跪いたので考助は驚いた。

 そのポーズがヴァンパイアが相手を敬うときに使う姿勢だという事は、塔にいる二つの種族から教えられている。

 

「<至上の君>にお会いできたことを光栄に思います。私はプロスト一族のビアナと申します」

 その言葉に目を見開いて驚いたのは、シュレインだった。

「何と・・・・・・!?」

 女性がプロスト一族を名乗ったことに驚いたわけではない。

 別の扉から出て来た時からその予想はしていた。

 問題は、ビアナが考助の事を<至上の君>と呼んだことだ。

 何となく嫌な予感がした考助は、恐る恐る<至上の君>が何であるかを聞いた。

「ええと、出来れば聞きたくないんだけど、<至上の君>って何?」

 考助がそう問いかけると、ビアナがちらりと視線を同族であるシュレインへと向けた。

「言ってなかったの?」

「いや、待たんか。吾がコウスケと会ったのは、コウスケが現人神になる前のヒューマンだった時の事だぞ? いくらなんでも<至上の君>とは結びつくはずが無かろう?」

 シュレインの台詞に、神官たちが息をのんだり短く悲鳴を上げたりしたが、考助達はそれは無視をしている。

「そうなの? ・・・・・・それはとにかくきちんと説明をしますので、こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」

 シュレインと考助ではまるっきり態度が違うビアナに、むずがゆい物を感じつつも考助は言われるがままに移動した。

 移動と言っても、部屋の中央にある棺のところまで戻っただけなのだが。

 

 部屋の中央にある棺まで来たビアナは、一同にまずは目の前にあるプロストの棺についてから説明を始めるのであった。

最後の一行に出てくる名前がタイトルに><

次話はプロストの棺に付いての話になります。

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