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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その2)
350/1358

(5)永遠

 くつろぎスペースがとても賑やかな状況になっていた。

 それも当然だろう。

 管理層としては、初めてとなる赤ん坊が来ているのだ。

「やっぱりかわいいわねー」

「そうだのう」

「おめめがくりくりしています~」

「お兄様とフローリアお姉さまそっくり!」

「これが人間の赤ちゃんか」

 赤ん坊を囲んで、女性陣が賑やかに話をしていた。

 それを遠巻きにフローリアが笑いながら見ている。

 ついでに、赤ん坊は大きめのバスケットのような物に入れられて床に置かれている。

 なぜそんな状態かというと、勿論ナナにも見えるようにしているのだ。

 そのナナは、赤ん坊の気を引こうと目の前で尻尾を振ったり、頬を舐めたり必死になっている。

 赤ん坊は、嬉しそうにナナの尻尾を掴もうとしたりしていた。

 

 赤ん坊の名前はトワと名付けた。

 名付けの親は考助である。

 周囲がこぞってお前が名前を付けないでどうすると言って来たのだ。

 勿論、考助としても名前は付けてあげたかったので文句はなかったのだが、フローリアの現状を考えると許されないと思っていたので、かなり嬉しかった。

 そういうわけで、付けた名前は日本語で「永遠」の意味を持つトワだった。

 名前を発表した時に意味も聞かれたのだが、基本的には表音文字になっているこの世界で、漢字という文字は興味をひいたらしい。

 永遠という文字だけで意味を持っているという事に新鮮さを感じたようだった。

 考助が名前を発表してすぐさま、赤ん坊の名前はトワに決定したというわけだ。

 そのトワと初産の山場を超えたフローリアが、ようやく外出を許されたのは今日の事だった。

 フローリアが一番の外出先に選んだのが、当然と言うべきか管理層だったというわけだ。

 ちなみに管理層には、アレクとその妻であるソニアも来ている。

 最初は興味津々に管理層を見ていたソニアも、今はフローリアと落ち着いて会話をしていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 初めての外泊となったトワはともかくとして、フローリアは久しぶりに食べるミツキの料理を堪能していた。

「これこれ。相変わらず美味しいなあ」

 感激したようにミツキの料理を食べるフローリアであった。

 ちなみに皆が食事している間のトワは、ナナが必死にあやしている。

 これまで一度も泣き声を上げていないことから、かなり優秀な子守り役のようだ。

 おかげでフローリアは、トワのことを気にせずに食事にありつけている。

 

「本当に美味しいわね」

「そうだな」

 初めてミツキの料理を口にするアレク夫妻も口々にそう言っていた。

「たまには家に来て作ってほしいわ」

 ソニアはそう口にしたが、ミツキは微笑したまま断った。

「申し訳ないけど、私は考助様以外には作る気はないわよ?」

「残念だわ。お店でも開けば、人気出るでしょうに」

 そう言って来たソニアだったが、食卓の話題にしただけで特に本気にはしていないようだった。

 ミツキの素性をアレクから前もって聞いていたので、ミツキの言葉には特に驚きは示さなかった。

「店など開いてしまったら考助様の傍にいられる時間が無くなるから、あり得ないわ」

「そうよねえ」

 ミツキの言葉に、ソニアも納得したように頷いている。

 その話を聞いていたメンバーもソニアと似たり寄ったりの表情になっていた。

 この管理層では既に何度も繰り返されている話題なのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 代弁者の料理という珍しい物を堪能していたアレクだったが、食事もいよいよ終わりという所で、その話題を口にした。

「それで? フローリアから聞いたが、子供が持っている能力はどんなものなんだ?」

 アレクとしては、トワが持っている特殊性の話を折角の場なので聞きたかったのだ。

「うーん、難しいですね。今のところ分かっているのは、寿命が長い、神力が使える、というものくらいで、後は本人の成長に合わせて変わります」

「それだけか?」

 答えを聞いたアレクが、拍子抜けしたような表情になった。

 神力が使えるというのは、確かにあり得ない話だが、本人が意識しない限り勝手に発現することは無い。

 考助がこの世界に来て初めての時に左目の力を発現できたのは、神域で神力の訓練をしていたからだ。

 さらに、エルフが普通に存在している世界において、長寿命というのはさほど問題にはならない。

 勿論、長い間同じ人間が国家を支配しているというのも問題が出る可能性があるため、その辺は調整する必要があるが、そのくらいである。

 普通に(?)生活をしていく分には大きな問題ではない。

「そうですねえ・・・・・・。ああ、あとは神々の加護を得やすいという事でしょうか」

 これに関しては、神力が扱えることと、考助との繋がりがあるためだ。

 考助が初めてトワのステータスを見た時に分かったのだが、称号に「考助の一族」というものがついていた。

 エリス曰く、加護よりもより強い結びつきが得られるらしい。

 この称号があると、他の神が加護を与えられる条件が薄まるらしい。

 さらに、この称号が血がどれだけ薄まっていっても付与されるのか、あるいは代を重ねると消えるのかは現時点では分からない。

 

「ふむ・・・・・・何とも不安になるな」

「そう心配しなくてもいいですよ? 何か大事があれば間違いなく神々が出てくるでしょうし」

 それが一番心配なんだが、と頭を抱えるアレク。

 そのアレクを無視するように、ソニアが会話に加わって来た。

「フローリアは子供を作るのに苦労したみたいだけれど、トワのお相手は苦労することになるのかしら?」

「どうでしょうね? 今のところその兆候は出ていないですが、その辺に関しては二次性徴まで行かないと分からない所もあるそうです」

「なるほどねえ」

 納得できる理由に、ソニアが呑気に頷いていた。

「まあ、僕の場合は元々が特殊なうえに、神なんかになってしまいましたからね。そこまで特殊なことにはならないようです」

 トワ自身が神にでもなれば、同じようなことになるかも知れないが、流石にそれはないだろうと神々は推測している。

 子供には、余計な苦労を背負ってほしくない考助としてもその推測は是非とも当たってほしいが、子供がどういう成長を望むのかは分からない。

 あるいは本気で第二の現人神を目指すというのなら、それはそれで構わないと思っている。

 もっとも国王になることが約束されている身では、それもなかなか難しいだろう。

 

「なんだ。ということは、寿命が長いヒューマン、という感じなのか?」

「その辺が微妙なんですよね。初めての種だという事で、神々も分からないことが多いらしくて。基本はそう思っていいそうですよ」

 場合によっては、成長と共に何か変化が起こる可能性もあるが、それは実際に成長してみないと分からないという事だった。

 アレクとしては、娘から考助がこの件で神々に呼ばれて神域に行ったことまで聞いていたので、もっと大事になっていると思っていたのだ。

 だが、ふたを開けてみれば、今のところ大した事はないように思える。

 この程度の特殊性など亜人が多いこの世界では、当たり前にあるのだ。

「油断は出来ないが、さほど心配するほどでもなさそうだな」

「そうですね。神々も一応の警告として教えてくれただけですから」

「普通に人として育てていいという事か?」

「勿論です」

 アレクとしては、何か変わったことまで起こると考えていたのだが、そうではないと知って一安心という所だった。

「といっても、現人神の子ということで、周りが特殊な扱いをしそうですが」

 考助の言葉に、アレクもソニアも苦い顔になった。

「そればかりはな・・・・・・」

「私達としても出来るだけ避けたいんだけど・・・・・・」

 こればかりは、フローリアも含めて家族がどれだけ言ってもどうしようもないところがある。


「何とかお馬鹿な性格にはならないように育てないといけないな」

 フローリアの決心するような言葉に、話を聞いていたメンバーたちが首を傾げていた。

「コウスケとフローリアの子供なら、そんなことにはならないと思うけど?」

「普通の家庭と同じように、ずっと二人で育てられるならそうだろうがな」

 残念ながら考助もそうだが、フローリアも女王としての仕事があるため、四六時中一緒にいるというわけにはいかないのだ。

 むしろ乳母に任せることになってしまうだろう。

 そうなると、周囲の者が余計なことを吹き込むか、そこまで直接的ではないにしろ、子供が敏感に察して育ってしまう可能性がないわけではない。

「その辺は私が見るしかないわね」

 そう言ったのは、ソニアだった。

 アレクも宰相として忙しいので、結局家族で常に傍にいれるのはソニアくらいしかいないのである。

「面倒をおかけします」

「何を言うの。自分の孫なのよ。面倒なんて思うはずがないわ」

 頭を下げた考助に、ソニアが少し怒ったようにそう言って来た。

 

 神々からも注目されるトワが、これから先どういう成長をしていくのか。

 それはまだ誰にも分からないのであった。

第一子の名前は「トワ」に決定しました。

トワ国王・・・・・・。

決めてから後に国王になることに気付いたのですが、微妙でしょうか?w

名前は永遠トワですが、不死というわけではありません。

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