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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 塔の外で色々やろう
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(3) トラブル(定番)

おや、考助の様子が?

 考助たちが持っているギルドカードは、リュウセンで作られたものなので、他の街でも活動できるようにするためには、それぞれの街でカードの更新作業をする必要がある。

 更新と言ってもリュウセンで作ったカードを、ナンセンの公的ギルドの窓口で提示するだけだ。

 そうすれば、ナンセンでも手続きがされたことがカードに記録されるので、それだけで後はナンセンの活動が認められる。

 更新に引っかかるような行為も特に起こしてない考助たちは、すぐに更新が認められて手続きはすぐに終わった。

 二人分の更新が終わった後は、元々予定してた掲示板のチェックを行う。

 掲示板の依頼は、基本的に一般的な物だけで、特殊な案件はほとんどない。

 そういう案件は、信頼のあるパーティーや人物に個別に依頼されるのがほとんどなのだ。

 特に職人関係の依頼は、そういう傾向が強い。

 公的ギルドに出される職人関係の依頼は、大別して二種類の物がある。

 一つは個人が職人に依頼を出す物。

 もう一つは、職人ギルドが出すものだった。

 後者の依頼は、人材が欲しいギルドが腕を見極めるために出したりしている。

 そこでいい作品を作ったりすれば、ヘッドハンティングするのだ。

 考助たちが職人関係の依頼から確認するのは、どういった種類の依頼がどこから出ているかを確認していた。

 それですべて把握できるわけではないが、ある程度の傾向は見ることができると、シュミットからアドバイスをもらったのだ。

 

 ミツキと二人で掲示板をチェックしていると、考助に声をかけてくる者がいた。

「よお。お前さん、ちょいと面貸してくれねえか」

 考助が振り返ってみると、強面のいかにもという男が、にやけた顔で考助を見下ろしていた。

 周囲を確認すると、後ろの方で同じように、にやついてこちらを見ている集団もいた。

 それを確認した考助が、テンプレきたー、と思ったのは、リュウセンではそういったことが起こらなかったので、致し方ないだろう。たぶん。

 だからといって、それに真面目に付き合うつもりは、当然ながらあるわけがない。

「・・・はあ。どういう用件でしょうか? 僕は掲示板で依頼を見ているんですが?」

「どうせお前みたいなガキは、大して稼げないだろうが? 親切な俺様が、儲け話を見繕ってやろうと思ってな?」

 相変わらずにやけた顔でこちらを見てくる男に、考助はあっさりと言い放った。

「結構です。自分の仕事くらい自分で見つけます。用件がそれだけなら、こちらの邪魔しないでください」

「テメエ! 人の親切をなんだと・・・オイ、無視してんじゃねえよ!!」

 声を無視して掲示板を見る考助に、男が掴み掛ろうとして考助に手を伸ばした。

 だがその手は考助まで届かなかった。

 男と考助の間に割って入った者がいて、その腕をつかみ取りそのまま男を投げ飛ばしたのだ。

 様子を見ていた周りのものは、何が起こったか分からないくらいの早業だった。投げ飛ばされた本人もよく分かっていない様子で、投げ飛ばした相手を見ている。

「ハイハイ。考助様がもう用はないって言っているんだから、それくらいにしてね。これ以上、何かするんだったら私が相手するわ」

 ミツキだった。

 ちなみに、足元ではナナとワンリが威嚇していたが、すぐに考助が宥めている。

 二匹の首筋を宥めるように撫でたあと、立ち上がった考助は、ギルドカウンターの方を見ながら言った。

「・・・なんか、仕事探しどころじゃなくなったみたいだし、出ようか。カウンターの人たちの視線が怖いし」

 ギルドの受付にいる複数の職員がこちらを注目していた。

 ギルド内での争いは、厳禁なのだ。

「そうね。そうしましょう」

 考助の提案に、ミツキも意味ありげに笑って同意した。

 そして、床に転がったままの男を無視して、二人はそのまま公的ギルドから出ていった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「おい、待ちな」

 公的ギルドを出た二人を、追いかけて声をかけてきた者達がいた。

 言わずもがな先ほどの男とその仲間たちであった。

 その場所は、公的ギルドを出てすぐの大通りだ。

「・・・こういう時は、呆れればいいんだろうか、それとも驚けばいいんだろうか」

 予想通りの行動をとってきた男たちに、考助がそう感想を漏らした。

 いや、予想以上の馬鹿な行動を、と言い換えるべきか。

 絡んでくるのは予想していたが、人通りがないところで襲ってくると思ったのだ。まさか人前で堂々と絡んでくるとは思っていなかった。

「とりあえず、驚いておけばいいと思うわよ?」

「わー、な、何の用だ!?(棒)」

 明らかに男たちを馬鹿にした二人のやり取りに、当事者たちが騒ぎ出した。

「おい、馬鹿にしてんじゃねえぞ?」

「そっちの女は、ちょっとはできるようだが、俺たちにかなうと思ってるんじゃないだろうな?」

「俺様に恥かかせやがって!」

 その騒ぎに、流石に周りの者たちの注目が集まった。

 とはいえ、こういう事は日常茶飯事なのか、大半がまたか、といった視線だ。

「いや、敵う敵わないじゃなくて、さっきので自分たちとの実力差が分かってないのか?」

「うるせえ。いくらその女が強かろうが、俺たち五人に囲まれたら敵わないだろうが!」

 その男の声を皮切りに、男たちが剣を抜いた。

 流石にその様子をみて、周りのやじ馬たちがざわつきだした。

 主に、男たちを非難する内容である。

「うるせえ! 外野は黙ってろ!!」

 がなり立てる男に、外野が黙る。さすがにとばっちりは食いたくないのだろう。

 だが、それを見て考助は、逆に安堵のため息を吐いた。

「これで、正当防衛成立、かな?」

 この世界では、剣を抜いて相対した時点で殺意があると認められると、誰かから聞いたことのある考助であった。

「さすがに、そこまで気にしなくてもいいと思うわよ?」

「そうなの? どうも、その辺の加減が分からないんだよな。・・・まあ、いいか。ミツキ、一応殺さないようにね」

「コウヒじゃないんだから、そこまでしないわよ」

「・・・・・・コウヒだったらするんだ・・・」

「多分、あなたに絡んだ時点でアウトじゃない?」

「あー・・・・・・」

 なんとなく納得できてしまった考助である。

 ついでに、殺すのだけは止めるようにしようと心に留め置いた。

 

 どこまで行っても緊張感が出ない二人に、業を煮やして切れた男たちが動いた。

 男たちもそれなりの実力者なのか、ただ突っ込んでくるわけではなく、四人がミツキに襲いかかり残り一人は考助の構図だ。

 さすがに、ギルド内でのミツキの強さを考慮したのだろう。

 もっともその作戦は、全く功を奏することは無かった。

 ミツキが、あっさりと片づけてしまった。

 持っていた剣を抜くことすらしなかった。

 まず、自分に向かってきた四人を無視して、考助へ向かった男を投げ飛ばして気絶させる。

 先程のように、転がすだけのような手加減はしていない。思いっきり地面にたたきつけている。

 続いて四人の方に戻って順番に殴り落としていった。

 男たちとて、黙ってみていたわけではないが、ミツキのスピードに全くついていけてなかった。

 あっさりと三人を無手で気絶させたミツキは、最後の一人の剣を奪った後首筋に突き付けた。

 ギルド内で考助に絡んできた男だ。

「・・・ヒイッ。わ、悪かった。謝るから許してくれ」

「あら。何に対して謝るのかしら?」

「あ、あんたらに絡んだことだ!」

 どうする、とミツキは考助の方を見た。

「・・・あんたらが、今まで同じようにしてきた相手も、同じことを言ってなかったかい? で、あんた等はそれを許してきたのか?」

 彼らが、常習犯だと見切っている考助である。

 周囲の様子からもそれは分かる。

「・・・・・・」

「だよな。あんたらみたいのは、そういうことは絶対にしないだろうな」

「・・・ど、どうすれば、許してくれるんだ?」

「さて、どうしようかな・・・」

 考えるように考助は腕を組んで、男を見た。

 実際に落としどころに悩んでいるのだ。

 このまま逃したところで、同じことを繰り返すだろうし、何よりもう一度自分たちを襲ってくることさえあると思っている。

「とりあえず、あんたはまた同じことをしそうだし、二度と剣を持てないようにするとかどうだ?」

「・・・じょ・・・冗談、だよな?」

 男を無視して、考助はミツキの方を見た。

 ミツキも頷いて、持っていた男の剣を振りかぶった。

 男は逃げようとするもミツキのプレッシャーに押されて、腰を抜かしてるので動けないようだった。

 ミツキが剣を振り下ろして、男の利き腕を切ろうとした瞬間、息を呑んで様子をうかがっていた周囲の者達の中からその行為を止める声が響いたのであった。

すいません。中途半端ですが、いったんここまでです。

続きは明日になります。


2014/5/11 誤字脱字修正

2014/6/9 誤字脱字訂正

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