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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 旅(フロレス王国編)
333/1358

(2)爺バカとエイレンの町

 フロレス王国のフィリップ国王は、自分の息子からの情報に目を剥いていた。

「どういうことだ?」

「どうもこうも。コウスケ殿が昨日、フロレス王国に入ったそうだ」

 涼しい声色で同じことを繰り返したアレクに、フィリップ国王は一気に沸き起こった感情と共に、頭を抱えた。

「・・・・・・昨日?」

「そう。昨日入ったと、先ほどこちらに報告があった」

「・・・・・・なぜ、一日遅れになったのか聞いてもいいのか? いや、そもそもなぜ来ることを言ってくれなかった?」

 事前に言ってくれれば、色々対応することも出来ただろうにと若干恨みがましい表情になった。

「止められてたからだな」

「いや、いくら止められてたとはいえ、多少の情報は・・・・・・」

「馬鹿を言うな。そんなことをすれば、私が責められる対象になる。折角上手くやっているのに、そんな危険は進んで冒したくない」

 多少の危険は承知で、という事は言えなかった。

 そもそも今使っている遠距離通信の魔道具さえ、考助が作った物なのだ。

 今現在聞かれているとまでは思っていないが、後から通信記録を調べることが出来ないとも言い切れないのだ。

 ちなみに、実際はそんな機能を付けてはいないのだが、わざわざそんな機能を付けなくとも、調べる方法はいくつか持っている。

 一番手軽に出来るのは、魔法を使う事だ。

「そうは言うが・・・・・・」

 アレクの言う事も理解は出来るので一瞬同意しかけたが、一国の王としては納得できない。

 それについて責めようとしたフィリップ国王だったが、ハタと気づいた。

 気づいてしまった。

 

「・・・・・・もしかして、入国した以上の情報が言えないとかは無いだろうな?」

 そのフィリップ国王の問いに、アレクは一瞬間を置いて、

「するどいな。その通りだ」

 息子の無情な返答に、フィリップ国王は冗談抜きで倒れる所だった。

 それこそ、いったい何の冗談だ、と叫びたくなった。

 王国内のどこの町にいるかさえも教えてもらえないと言うのは、何も対応できないと言うのと同じことだ。

「・・・・・・もしかして、こちらには何も手出しをするなという事か?」

 流石に鋭いフィリップ国王だった。

 アレクの、というよりも考助の思惑を察することが出来た。

「そういうことだな。コウスケ殿は、ごく普通の一般冒険者として王国入りしているはずだ。特定するのは・・・・・・」

 無理だ、と言おうとしたアレクだったが、口ごもってしまった。

 断言できない理由を思いついてしまったのだ。

「? 何かあるのか?」

 淡い期待を抱いて、フィリップ国王が問いかけたが、アレクは一瞬迷いを見せた後で、その情報を出した。

「いや。コウスケ殿は、普通に過ごしているつもりでも、周りがそうはさせないという時があってな」

「・・・・・・どういうことだ?」

 何となく不穏な空気を感じで、フィリップ国王が顔を引き攣らせた。

「どうにも、普通の人間よりもトラブルに巻き込まれやすいという体質を発揮することがある。まあ、普通の人間ではないからかもしれないが」

 人間ではないどころか神ではないか、と突っ込もうとしたフィリップ国王だったが、寸前で自重した。

 そんなことをアレクに言ってもしょうがない。

 それよりも、アレクからの情報の方が重要だ。

「・・・・・・トラブル体質という事か?」

「まあ、端的に言うとそういう事だな」

 アレクの返事に、またしてもフィリップ国王は頭を抱えた。

 どう考えてもフロレス王国にとって良い結果になるとは思えない。

「出来ることなら、さっさと王位を譲ってしまいたいな」

 周りに誰もいない状態で、話している相手がアレクだからこそ言える冗談だった。

「そう言うな。新しいひ孫も出来るんだから、それまで元気でいてくれ」

「ちょっと待て! 新しいひ孫だと!? どういう事だ!!!?」

 今までで一番の驚きを見せるフィリップ国王に、アレクが勝ち誇ったような表情になった。

「どうもこうもない。フローリアは今、身重になっている。ひ孫の顔を見せられないのは残念だよ」

「うぐぐぐぐぐ・・・・・・」

 アレクからの情報に、悔しそうな表情を見せるフィリップであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助達は現在、フロレス王国のエイレンという町にいた。

 エイレンの町は、アイリカ王国との接点になっている町で、町から少し歩いた所には検問所も設けられている。

 現在フロレス王国とアイリカ王国は、良い関係を築いているので戦争は起こっていないが、過去戦争があった時には、狙い撃ちにされていた町でもある。

 そのため人々の防衛に対する意識は、非常に強いものになっている。

 アイリカ王国は東大陸で一番セントラル大陸と近い国である。

 セントラル大陸とフロレス王国の間には海路もあるのだが、敢えて陸路を通って来たことになる。

 もっとも、陸路と言っても飛龍たちを使ったので、正確には空路でショートカットをしてきたのだ。

 この世界においては、空路という認識がないので、完全に盲点になっているだろう。

 わざわざそんな方法を取ってフロレス王国入りしたのは、勿論王国上層部への目くらましのためである。

 考助が王国に入ったと知られたら、どんな扱いを受けるのか分かったものではない。

 少なくとも、王宮で歓待を受けるのは間違いないだろう。

 考助としては、それは御免だったので敢えて目くらましをするような方法を取ったのだ。

 考助に付いてきているメンバーは、ミツキ・ピーチ・ワンリ・ナナの三人プラス一匹である。

 コウヒとシルヴィアは、妊娠しているフローリアに付きっきりになっていて、シュレインとコレットはそれぞれの塔の管理があるため来なかった。

 ピーチが付いてきているのは、基本的にデフレイヤ一族に対して何かをすることが無いためだ。

 ハクは、塔を見回ることがあるシュレインとコレットの護衛のために残っている。

 ハク自身は、ドラゴンという特徴もあってか人間の営みには特に興味が無いようで、塔に残ることになっても特に残念そうにはしていなかった。

 考助と離れることに関しても特に表情を変えることは無かった。

 それを見た考助の感想は、反抗期でもきたかな、というものだった。

 実際はどうかわからないが。

 

 考助から見たエイレンの町は、何処となく東南アジアを思わせる雰囲気だった。

 といってもテレビで見ていた風景から感じたことなので、実際とは違っているかもしれないが。

 建物の材質も石材より木材が多く使われているように見える。

 空から見た風景では周辺に森もあったので、そこから伐採をして建材にしているのだろう。

 流石に検問所に続く街だけあって、商人らしき者達が多くいる。

 その商人たちの護衛の冒険者たちもいるようだった。

 エイレンの街を拠点に、フロレス王国内の他の町を目指したり、あるいはアイリカ王国を目指して行商を行うのだ。

 元々軍隊が通ることを想定しているためか、メインの通りは広めになっている。

 商人が多いのか、馬車の数も多いようだった。

 少なくとも考助がセントラル大陸の町で見た数よりも多くの馬車が行き交っている。

 ただし、クラウンの大規模商隊は除いて、だが。

 

 取りあえず、到着した当日は宿を取って休むことにした。

 本格的に活動を開始するのは、明日からという事になる。

 まずはエイレンの町の公的ギルドを訪ねると決めていた。

 ギルドカードに関しては、どういう扱いになるのか、まずは訪ねてみないことには分からないのだ。

 念の為、アイリカ王国内で公的ギルドのギルドカードを更新してある。

 大陸が変わっているので、新しく作り直さなければならないと考えていたのだが、そんなことは無かった。

 セントラル大陸の街で行った更新作業と同じくらいの時間で終わったので、逆に拍子抜けしたくらいだった。

 フロレス王国内での更新作業はまだ行っていないので、どういう事になるのかは、明日公的ギルドに行ってみないことには分からない。

 明日からは本格的に、フロレス王国で活動していくことになるので、まずはギルドカード作りが大事な作業になるのであった。

ギルドカードの話が中途半端になってしまいましたが、明日の話できちんと説明します><

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