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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 旅(フロレス王国編)
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(1)旅の始まり

章タイトルにフロレス王国編と銘打っていますが、他の国を書くかどうかは未定ですw

 くつろぎスペースのソファーでごろごろとする考助に、シュレインが一言。

「そんなに暇なら、以前言っていたように旅にでも行ったらどうかの?」

 その言葉に、ごろごろを止めた考助はむくりと起き上がった。

「・・・・・・いや、でもフローリアがあんな状態だし・・・・・・」

「そうだが、お主がここにいても何もできないであろ?」

 現在フローリアは、第一子の出産のため管理層にはいない。

 実際の出産までは時間があるとはいえ、大事を取ってしっかりと産婆師のいる第五層の街にいる。

 ちなみに、シルヴィアとコウヒもその付き添いに行っているため、現在の管理層はいつもの半分の人数しかいない。

 コウヒが付き添いで行っているのは、考助から要請されたためだ。

「いや、そうなんだけどね・・・・・・」

 シュレインの言葉に、考助は渋い顔になった。

 最初は考助もフローリアについて行くつもりだった。

 だが、女性陣に反対されて仕方なく諦めたのだ。

 フローリア曰く、親が神だと知ってしまうと、子育てにとっては良くないからということだった。

 例えフローリアや考助が普通の子供のように育てたいと思っていても、周囲の反応は確実に考助の事を意識するだろう。

 そのことが、子供にとって良い環境であるとは思えないということなのだ。

 しかも、それにシルヴィアも同意してしまった。

 神を親に持つことで、傲慢な性格に育ってしまっては目も当てられないので、考助はなるべく人前では顔を出さないほうが良いと。

 勿論たまには、管理層に連れてくることを約束したが、考助にはそれが精一杯だった。

 もっとも、今や女王となっているフローリア自身も出産後は、普通の親ほど子供に構っている時間は無いということだった。

 そもそも王族というのはそう言うものだとフローリアから断言されてしまったのでは、普通の庶民出身の考助としては何も言うことが出来ない。

 結果として考助は、管理層で落ち着かない日々を過ごしているというわけである。

 

「旅。・・・・・・旅かあ。・・・・・・旅ねえ」

 首を捻りつつ考助はシュレインに言われたことを考える。

 確かに管理層にいても道具の開発は全く手が付かない状態だった。

 だったらいっその事、前も考えた通りに旅に出てしまうのも悪いことではないかもしれない。

 どうせ余り子育てには関われないことは、確定しているのだ。

 自分が関わりたいと思っているのに、周りが許してくれないのだと誰ともつかずに言い訳をしたうえで、何となく気分が旅へと向いてきた。

「旅・・・・・・行くとしたらどこに行くかな?」

 そもそも考助がこの世界に来てから、ほとんど真っ直ぐにアマミヤの塔を攻略してしまったので、まともに旅らしい旅はしていない。

 流石に一年以上も経っているので、大きな国くらいはどのあたりにあるくらいは分かってきている。

 まずはどこの国を目指すかが問題となってくる。

 それに、ただ物見遊山の旅も良いが、何か別の目的も持つと更に旅が楽しくなるだろう。

「まあ、分かりやすいので、各地の食べ物を楽しむという所かな?」

 一度考え始めると、子供の事を忘れて熱中することが出来た。

 流石に以前に百合之神社で考えてた日帰りプランは、旅という感じがしないので、速攻で却下になった。

 結局、具体的に最初はどこに行くかまで、決めてしまう考助なのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「旅か。いいのではないか?」

 念の為、フローリアの所へ確認しに来たところ、あっさりと肯定の返事が返って来た。

 もし少しでも嫌な顔をすれば、計画は止めようと思っていたのだが、全くそんなそぶりは見せていない。

「ホントにいいの?」

「何だ? 何か駄目なことでもあったのか?」

 逆に不思議そうな顔で聞かれてしまった。

 そんな考助の様子を見ていたアレクが、苦笑しつつ助言して来た。

「コウスケ。気持ちはわかるが、こういう時は相手のいう事に従った方がいい」

「・・・・・・そうみたいですね」

 同じ男として似たような経験をしてきたのだろう。

 アレクのいう事には、どこか重みがあった。


「それはともかく、行くところは決めているのか?」

「どうせだったらセントラル大陸からは離れてみたいと考えてましたが、具体的に何処とまでは・・・・・・」

 考助の言葉に、アレクは考え込むような仕草をした。

「ふむ・・・・・・だったらフロレスに行ってみないか?」

「「フロレス(王国)?」」

 考助とフローリアの言葉が被った。

 アレクの提案は、フローリアにしても意外だったのだろう。

 顔を見合わせた後で、考助がアレクに聞いた。

「それは構わないですが、何か理由でも」

「ああ。これはワーヒドとも話をしていたんだがな。そろそろ他大陸にもクラウンの支部を置くことを考えはじめないかと」

「ああ。なるほど、そういう事ですか」

 アレクが言いたいことを察して、考助が頷いた。

「そのことを王に話したら、えらく前向きな答えが返ってきてな」

 アレクは、実父であるフィリップ国王に遠距離通信用の魔道具を渡してある。

 それを使って話を持ちかけたのだろう。

「それはいいんだけど、他にも支部を置いてほしいって言ってきている所はないの?」

「勿論ある。だから、誰かを派遣してそれぞれ見て回ろうと思っていたんだが・・・・・・」

 考助が丁度旅の話を持ってきたというわけだ。

 どこに設置するのか決めるのは、結局のところ最終判断は上の者が決めることになる。

 それだったらいっそのこと、最初から考助が絡んでいた方が決めやすいだろうということだ。

 今の考助は、クラウンの実務に関する決定権は何も持っていないが、運営の方針等に関する発言権はまだ持っている。

 というよりも、統括や部門長の任命権は考助が持っていたりするので、その影響力はまだ健在だったりする。

 最初に決めて以来、変わっていないので、ほとんど使われていない権利なのだが。

 ちなみに生産部門の部門長に関しては、六侯で持ち回りにしますよ⇒いいですよ、ときちんと考助の許可を得ているのだ。

 

「だったら複数同時に置いたら?」

「勿論だ。というか、そちらで調整している。流石にどこか一つを最初に置くと、色々と問題が出るからな」

 ため息を吐きつつそう言うアレクに、考助も苦笑いした。

 考助にしてみれば、最初は塔の中にだけある組織だったのに、いつの間にか各国の顔色を見ながら支部を置くような組織になっていたという感じだった。

「となると、神能刻印機は?」

「流石にそこに関しては、私ではなくクラウンのメンバーに聞いてくれ。私がクラウンに関与しているのは、政治の部分だけだ」

「ああ、そうでしたね。わかりました」

 下手にアレクが口を出すと、クラウンが国営企業だと言われる隙を作ってしまうことになる。

 今でも十分突っ込みどころはあるのだが、表向きは権限が分離されていることになっているのだ。

 勿論、考助という柱で繋がっているのだが、そこは誰も突っ込んで来ないのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その後はワーヒドの所に顔を出して、旅の事について話をした。

 そういう事なら是非とも見てきてくれと言われたので、快く了承した。

 いつの間にか、クラウンの支部を置くことを前提にした旅行にすり替わっているが、これはこれで考助としても不満は無かった。

 そもそも考助の意見だけを聞いて決めるわけではないのだ。

 あくまでも判断基準の一つとなるだけの事である。

 なにしろ、四大陸で一か国だけ回るとしても、考助一人で全てに行っていたらかなりの時間がかかってしまう。

 そんなわけで、考助だけではなく統括達も飛び回ることになった。

 もともと統括達はその予定だったようで、それに考助が加わった形になる。

 

 こうして考助の新しい旅が始まることになるのであった。

というわけで、ここからは旅の話になります。

流石に、日帰りプランは却下になりましたw

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