挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

329/1298

(3)成長

 自我というのが生まれたのがいつだったのか、ほとんど覚えていない。
 ただ、何となくだが、この世界に誕生した時のことは覚えている。
 これは、周りにいる仲間たちも同じだろう。
 足元に何か文様のような物が光っている状態で、自分は誕生した。
 その時にあったのは、簡単に言えば食欲と性欲の二つだけだった。
 だが、目の前に<あの方>がいることがわかると、無意識のうちに跪いていた。
 今から思えば、あの単純な思考の中で、よくぞ<あの方>に気づけたと思う。
 もっとも他の仲間たちも真っ先に気づいていたので、自分たちの中に何か<あの方>を惹きつけられるものがあったのだろう。
 その時に<あの方>からガボという名前を与えられた。
 そのときからその名は、ガボにとっての一生の宝になるのであった。

 本当の意味で自我が生まれたと思えるのは、一度目の変化が起きてからだろう。
 後で<あの方>に聞いてみると、シンカと言うらしい。
 要するに、身体や思考能力に大幅な変化が起こることだ。
 実際に一度目のシンカが起こってからは、集落の周りに出てくるモンスターを倒すのが非常に楽になった。
 頭でものごとをきちんと考えるようになったのもこの頃からだった。
 ただし、今から思えば、非常に簡単な思考だったが。
 それでも仲間たちにとっては、自分の変化は大きなものだったらしく、リーダーとして認められるようになった。
 以前からも狩りでは何人かにまとまって行っていたのだが、明確なリーダーというのはなくその時々で決めていた。
 それが、狩りは勿論、普段の生活においてもリーダーとして認識されるようになったのだ。
 仲間たちのリーダーとして過ごしているうちに、段々と集団をまとめるコツのようなものが分かって来た。
 そんなことをして過ごしていると、時々<あの方>も集落に来ることがあった。
 ある時、自分たちのように<あの方>も言葉を話していることがわかった。
 何とか<あの方>の言ってることが理解できないか、来るたびに何とか聞き取ろうとしたが中々理解するこは出来なかった。
 その頃には、自分と同じように進化している個体が出てきていた。
 その個体も同じようなことをしていたらしいが、結局<あの方>の言葉を理解することは出来ない。

 そんなある日。
 <あの方>がやってきて、いつものように仲間たちに何かをやり始めた。
 自分たちには<あの方>がやっていることは、なかなか理解が出来ない。
 ただ、<あの方>がやって来た後に、仲間たちがシンカすることが多かった。
 遂に自分の番がやって来た。
 <あの方>が近づいてきて、他の仲間と同じようなことを始めた。
 何をやっているかは分からないが、自分はその全てを受け入れるつもりだった。
 何か非道なことをされるとか、そう言った負の感情は無かった。
 そして、それは唐突に起こった。
 <あの方>が自分に何かの力のような物を授けてくれたのが分かった。
 それを理解したのと同時に、本当に唐突に<あの方>が話す言葉が理解できたのだ。
 その時話していた内容は、自分も含めた仲間たちに今授けてくれた力の事を話していた。
 <あの方>はその力の事をカゴと言っていた。
 その後も色々と<あの方>は、仲間たちと話をしていたが、言葉は聞き取れても意味までは理解できなかった。
 ただしカゴの力が、自分たちにとってまた大きな力になることは理解できた。
 折角与えてもらった力なのだから、しっかりと活用するように心に決めた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 それからは色々と頑張った。
 何とかもらったカゴを使いこなせるよう試した結果、ついに二度目のシンカを果たすことが出来た。
 これにより完全に、自我を得たと言って良いだろう。
 何よりうれしかったのは、以前の身体ではなかなか難しかった言葉の発音が出来るようになったことだ。
 それからは、必死に言葉が発音できるように練習をした。
 自分が<あの方>と同じ言葉を話せるようになったことに仲間たちは驚いていた。
 言葉を話せるようになったのは、シンカをしたおかげだと教えると、仲間たちも張り切るのが分かった。

 シンカをしたことによって変わったことは、言葉を操れるようになったことだけではない。
 以前のシンカと同じように、身体能力も向上して思考能力も上がった。
 格段に上がった能力により、モンスターを狩ることも簡単になっていた。
 油断するつもりはないが、集落周辺に出てくるモンスターにやられることは無くなった。
 その分、仲間たちの能力向上に努めることが出来た。
 自分と同時期に<あの方>から力を与えられた仲間で、自分と同じ強さになっている者はまだいないが、着実に力は上がっているようだった。
 不満があるとすれば、モンスターを狩るために使う武器が鈍器くらいしかないことだが、これは仕方ないだろう。
 出来れば、<あの方>やその仲間たちが持っている武器を使えればいいのだが、こればかりはどうしようもない。
 いつか<あの方>に頼んでみるのもいいだろうか。
 そんなことは恐れ多くて、いつになっても出来る気がしないが。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 モンスターを狩ったり、仲間たちに色々と教えたりして過ごしていると、ついにその日がやって来た。
 仲間の一人が駈け込んできて、<あの方>が集落に来たのを知らせて来たのだ。
 慌てて仲間たち数人と連れ立って、報告の合った所に向かう。
 そこには確かに<あの方>がいた。
 すぐさま跪いて、練習した通りに言葉を発した。

「ヨウコソイラッシャイマシタ」

 練習した通りに発音できてほっとすると同時に、<あの方>の驚いたような表情が印象に残った。
 そんなに驚くようなことだったのだろうか。
 その後は、色々と聞かれた。
 上手く答えられなかったこともあったが、<あの方>は「ちゃんと話せるようになっているだけでもすごい」と言ってくれた。
 それだけでも今まで言葉を練習した甲斐があったというものだ。
 仲間たちの様子を確認する中で、色々と聞かれたのだが、どさくさに紛れて武器の事を話してしまった。
 生活用品に関しては、自分たちで自作も出来るが、どうしても武器は質の良い物を手に入れることが出来ない。
 そんなことを話すと、<あの方>は少し考えた後で、後で武器を持ってくることを約束してくれた。
 間が空いたのは、自分たちが武器を手に入れた時に、反抗されることを気にでもしたのだろうか。
 そう心配するのは当然だと思う。
 持ってきてくれると言ってもらえただけでも上出来だろう。

 驚いたのは、その数日後には十本の鉄製の剣を持ってきてくれたことだ。
 まさかこんなにすぐに用意してくれるとは思わなかったので、思わず感激してしばらく言葉を失ってしまった。
 十本では仲間の全てに行きわたるわけではないが、それでも十分すぎるほどだ。
 仲間たちの中でも特に戦闘能力の高い者から順に渡すことにした。
 しかも驚いたことに、<あの方>はさらに続けて他に欲しい物があれば言って欲しいとまで言ってくれた。
 流石にこれ以上は気が引けたので、すぐさま十分だと答えたが。
 ただ、その後で一つだけ知りたかったことがあったので、質問をした。

「質問? 何?」
「アナタサマノ、オナマエヲ、オシエテクダサイ」

 <あの方>は虚を突かれたような表情になった。、

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 そんなことを言って来た。
 <あの方>が仲間たちと話をしているときに、その名前が出ていたかもしれないが、それが間違いだと不遜になり兼ねない。
 きちんと正確に聞いておきたかったのだ。

「僕の名前は、考助。コウスケというんだよ」

 その名前が、自分の中に染み渡って行くと同時に、更なる力になるように感じた。
 この方の、いや、コウスケ様のために、身を賭して働こうという気持ちがさらに強くなった。
 今のところ何も指示はされていないが、自分が出来るのはこの集落を維持することが第一の使命だと思っているのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ある日、コウスケ様が集落にやって来た。
 その時には、自分は次の段階のシンカを果たしていた。
 更に流暢に話せるようになった言葉で話しかけようとしたが、なぜかコウスケ様が非常に驚いた表情をなさっていた。
 今までにないくらいに驚いている。
 シンカをしたことに驚くにしては、驚きすぎな気がする。
 既に三度目のシンカなのだから。
 思い切って挨拶をする前に聞いてみた。

「あの・・・・・・どうかなさいましたか?」
「あ、ああ。・・・・・・ガボって、女性だったんだ」
「? そうですが?」

 聞かれたので素直に答えたのだが、コウスケ様はなぜかショックを受けたような表情になっていた。
 その表情を見て、なぜか思わずむっとした気持ちになったが、表には出さないように気を付けた。
 コウスケ様に、失礼な態度を示すわけにはいかないのだ。
 この日、コウスケ様は自分に新しい名前を授けてくれた。
 新しい名前はソル。
 勿論ガボという名に不満は無かったのだが、以前の名前よりも更にしっくりと自分に馴染んだので、喜んで拝命することになったのだった。
というわけで、ガボ改めソルの話でした。
勿論、ゴブリンの進化の話で出て来た鬼人頭の個体です。
最後の方で出て来た新しい進化に関しては、別の話で書きます。

ちなみに、言葉に関しては、ファンタジーパワーだと考えてください><
近くに話が出来る人がいないのに、どうやって覚えたという突込みはなしで。
進化の際に、神々から教えられているという理由でもいいですがw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ