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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔へ色々な種族を受け入れよう
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(10) シュミットとの話し合い(その2)

本日2話目です。読み飛ばしにご注意ください。

 胸の内で悩むシュミットに、ワーヒドがさらに追い打ちをかけるようなものを差し出してきた。

「・・・・・・これは?」

 一見した大きさは、手のひら大のカード状の物だった。

 ワーヒドに促されて、それを手に取ってみる。

 裏と表に見事な装飾が施されており、二つ折りになっているようだった。

 開いて中を見ると、いくつかの項目が書かれていた。

 その項目にシュミットも見覚えもあった。

「これは、ギルドカードですか? それにしては大きいようですが・・・それに、このステータスというのは?」

 そのシュミットの問いに答えたのは、これまでの話を黙って聞いていた考助だった。

「おっしゃる通り、それはクラウンカードとして使う予定です。大きさに関しては、そのステータスというのにも関係しているのですが・・・要はそのステータスの欄にその人が持っているスキルが表示されます」

「スキルとは・・・?」

「簡単に言うと、その人が持つ技能を記した物ですね。といってもそれだけでは分かりにくいでしょうから、実際にシュミット殿のカードを作ってみましょうか」

 考助はそう言って、テーブルの上にあったケースの外箱を外した。

 すると中から水晶玉の載った箱が出てくる。

 考助はシュミットの持っていたカードを受け取り、そのカードを箱にある穴に差し込んだ。

「水晶の上に手を置いてもらえますか?」

「こうですか?」

 シュミットが言われたとおりに水晶の上に右手を置くと、その水晶が淡く光り出した。

 慌てて手を放そうとするシュミット。

「大丈夫ですから、もう少し触れていてください」

 考助の言う通り十五秒ほどでその光は消えた。

 光が消えるのを確認して、考助がシュミットに向かってさらに続けた。

「終わりました。もう手を戻しても大丈夫です」

 シュミットが手を放すのを確認した後、考助は箱に差し込んだカードを引っ張り出して、もう一度シュミットに渡した。

 カードを渡されたシュミットは、その中身を確認する。

 そのステータスの欄に、以前考助が確認したスキルが書き加えられていた。

「・・・・・・これは!?」

 そこに並んで書かれているスキルの羅列に、シュミットは息をのんだ。

 考助が先ほど言った、その人が持つ技能という意味が何となく理解できたのである。

「わかってもらえたでしょうか。この道具を使って、そのカードにスキルを表示させることができます。スキルは当然見られたくないものもあるでしょうから表示/非表示が可能です」

 一見してシュミットにも、このカードの有用性は理解できた。

 自身に身についているスキル、あるいは足りないスキルが一目でわかる。

 身についている技能が命に直結する冒険者は勿論、それ以外の職の者にも十分利用価値があるだろう。

 そしてこのカードを、クラウンカードとわざわざ言っているということは、今後作る組織で使う予定であることは、すぐわかることである。


 さらに考助に代わってワーヒドが続けた。

「そのカードは当然ギルドでも使う予定なのですが、他の者が使用できては身分証として意味がありませんので、他の者には使えないようになっています」

「・・・というと?」

「最初の段階でその人が持つ波紋、聖力や魔力・神力を使う上で出てくる指紋のようなものを登録しています。無理やり書き換えようとしても、その時点で内容が消去されることになっています」

 防犯に関しては、万全ということだ。

「あるとすれば、こちらの本体を使って書き換えるくらいでしょうが、それも難しいでしょうね」

「それは、なぜでしょう?」

「これは神力を使って動いています。一言でいえば、神具です」

 その情報にシュミットは、本日何度目かの絶句をした。

 そんなものを扱える者がいるなど、少なくともシュミットは聞いたことがない。

 ごくまれに、神具と思われるものが塔などから出てきたりするが、そもそもの原理自体が、現在もよくわかっていない物ばかりなのである。

 まして聖力や魔力は聞いたことがあっても、神力などという言葉自体ごく一部の聖職者で使われているくらいなのだ。

 ここまで来るとシュミットも笑うしかなかった。

「・・・出所は聞かないほうがいいのでしょうね」

 予想くらいはいくらでもできるが、身のためにもそう言っておいた。

 つつかなくてもいい藪はわざわざつつく必要はないのである。


 さらにこのカードの使い方について、ワーヒドが説明を続けた。

「このカードは、クラウンのメンバー全員に持たせる予定ですが、その際の特典なんかも考えています」

「特典、ですか?」

「いくつか考えていますが、一番の目玉は転移門の無償利用でしょうかね」

「それは・・・!」

 驚くと同時に納得のできるものであった。

 塔の中にできる組織として、そしてそれを使う者の一番のメリットである。

 一生を塔の中で過ごす者にとってはほぼ関係がないが、そのような者こそごくまれであろう。

「もちろん、人に対してだけではなく、荷物に対しても適用する予定です」

 さらりと告げられたその言葉に、シュミットは先ほどまでの悩みを放り投げた。

 ここの塔を利用して儲けようとする商人にとって、そのカードは是が非でも欲しい物になるだろう。

 たとえクラウンという組織に縛られたとしてもである。

 利用料はそれだけ商人にとって負担になるのだ。

 いずれクラウンに属することになるのであれば、むしろ最初からそのトップとなった方がいい。

 どう考えてもうまく嵌められた気がしなくもないが、こういうことならむしろ大歓迎だ。

 何しろ確実に儲けられることが分かっているのだから。

 確実に儲けられると分かっている話に乗らない商人など、まずいないだろう。

「・・・・・・わかりました。先ほどの話、受けさせてもらいます」

「おおっ。そうですか。よかったです。これからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします」

 そう言ってシュミットとワーヒドが握手をする。

 さらに考助とも握手をしたが、その際に考助が更なる爆弾を落としてきた。


「引き受けていただきありがとうございます。細かい話はワーヒドとしていただきたいのですが、一つだけ私からお願いがあります」

「何でしょう?」

「この村がもう少し安定してきたら門をさらに増やします。その候補地を考えておいて下さい」

 門をさらにもう一つ増やす。その意味を理解したシュミットは、その先にある光景に商人としての理想に胸を膨らませた。

 何しろこの村を中継地点として、街と街を行き来できるようになるのである。

 この村の周辺の魔物次第であるが、少なくとも、現在の状態でもこれ程安全な商路はほかにない。

 たとえつなぐことができるのが二つの街であっても、その利用価値はかなりのものになるだろう。

 早くもその候補地の選定を脳内で検索を始めたシュミットは、結局最後まで気づくことはなかった。

 考助が門を増やすといったのは、さらに、であって、一つ、ではないことに。


 そのおかげで、シュミットがいろんな意味で頭を抱えることになるのは、しばらく経ってからのことである。

シュミット話2話目でした。

なにやら理屈っぽくなって分かりづらい文章になってしまいましたが、今後のためにどうしても必要な説明だったので、シュミットを通して語らせてもらいました。


2014/5/24 誤字修正

2014/6/6 誤字訂正


明日も2話投稿です。1話目13時、2話目20時投稿です。

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