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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第25章 塔と神の審判
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(4)たまには、いちゃいちゃ

 フローリアの指揮能力の高さに驚かされた考助だったが、シルヴィアはさほど驚いていなかった。

 普段から管理層にいるメンバーで、フローリアが一番よく話をしているのがシルヴィアなので、元々その手の話を聞いていたのだ。

 勿論王女としての教育も受けていたが、戦術方面の才能があったためにしっかりとした教育を受けていた。

 フロレス王国は、周辺国家との戦争も起こっていない平和な国家だったため、その才能が生かされることは無かったのだが。

 世が世なら間違いなく戦の旗頭になっていただろうという評価を、教師だけではなく周囲からも受けていた。

 フローリア自身は、塔に来た以上ますますその才能は埋もれてしまうと考えていたのだが、意外な所で役に立ったと言えるだろう。

 

「そう言えば、南西の塔ってメインで召喚しているのは、ゴブリンだったよね?」

 ふと思い出した考助が、フローリアに聞いた。

「そうだが?」

「だったら、その力も活かせると思うけど?」

「・・・・・・あ」

 フローリアは、考助にそう言われて、初めて気づいたかのように口を開けてしまった。

 ゴブリンは、進化するほど知能が高くなっていく。

 アマミヤの塔の第十五層にいる鬼人頭は、完全に集団の頭としての役割を果たしているのだ。

 残念ながら南西の塔には鬼人頭はいないが、進化を果たしている者達はいるのだ。

 場合によっては、アマミヤの塔にいる大鬼人辺りを南西の塔に連れて行って、戦闘時の連携を教え込むと面白いかもしれない。

「何故思いつかなかったんだ」

 そこまで考えて、がっくりと肩を落としたフローリアだった。

 

 そんなフローリアを傍目に、シルヴィアとピーチは何とかならないかと首を捻っていた。

「まあ言われて急に思いつくもんじゃないと思うけどね」

 考助も少し焦りすぎたかと反省しつつそう言った。

 あくまでも感覚の問題なのだが、加護の力を使うにはイメージが重要だと考助は考えている。

 自分がやったことやフローリアがやったことを見て、何か感じたことがあれば、それが新しい力に繋がるはずなのだ。

「別に僕がやったことにこだわる必要はないよ。フローリアみたいに、こんなことが出来れば、といった感じでもいいんだから」

 その考助の言葉を聞きながら、シルヴィアは自分が授かった加護の力の事を考えていた。

 今シルヴィアが発現している力は、ステータスを見る力だ。

 我ながら単純だが、考助の巫女であるなら考助と同じ能力が使えるだろうと考えた途端に発現することが出来た。

 神職としての巫女や神官というのは、神の力を自らに宿すことが目標なので、しっかりとその役目(?)を果たした結果と言えるだろう。

 だとするならば、考助が使える能力の一部でも同じような物が使えると考えるのは不思議なことではない。

 その考助は、既に結果を目の前に見せてくれていた。

 だからといって、自分がすぐに使えるようになると考えるのは甘すぎる。

 そんなことを考えていたのが表情に出ていたのか、考助が心配そうにシルヴィアを見た。

「いや、ゴメン。焦っちゃだめだと言っていて、焦らせてしまったね。今日はもういいから戻ろう」

 考助は反省しつつそう言った。

 今すぐ何かを思いついてほしいと考えていたわけではないが、結果としてそうなってしまった。

 それぞれ独自に思いつけばいいことを、自分と同じことが出来るものだと思い込んだのだ。

 これは完全に考助の失敗だった。

 結果として焦らせるようなことになってしまったのだから、考助としても管理層に戻って考え直さないといけないだろう。

 そんなことを思いつつ、全員を引き連れて管理層に戻る考助なのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 管理層に戻って来た考助だったが、特に何かをするわけでもなく、くつろぎスペースで呆けていた。

 先程の事を引きずっているわけではないが、何となく何も考えずに過ごしたかったのだ。

 そんな考助の隣にコレットが座って腕を組んだ。

「? どうかした?」

「ううん? 特に何かあったわけじゃないよ?」

「そう? でもここではイチャイチャ禁止だったんじゃなかったっけ?」

 腕を組むことがイチャイチャに当たるかどうか、考助には判断がつかない。

 だが、女性同士では明確な区別があるようだった。

「そうなんだけどね。今日は特別」

「特別?」

「そうですわ」

 首を傾げた考助に、今度はシルヴィアが寄ってきて腕を取った。

 勿論、コレットが取った腕とは反対側の腕だ。

 

 突然そんなことを始めた二人に、考助は戸惑いを見せた。

 そんな考助に対して、他のメンバーも近寄って来た。

「たまにはこうして皆で寛ぐのもいいと思っての」

「こうして皆が揃うのは、久しぶりですし~」

「折角の機会だしな」

 フローリアがそう言って、なんと酒を出していた。

 女性たちからお酒を提案されることなど、ほとんどない。

 益々困惑したような表情を見せた考助に、シュレインが頬をつついた。

「そんな顔をするな。ホントに裏は何もない。あえて言うなら、全員が加護の力を発現できたからその祝いも兼ねておる」

 それを聞いた考助が、ようやく破顔した。

 考えてみれば、祝福だけして特別な何かをしてなかった。

 折角の女性陣の好意だ。

 しばらくぶりのお酒を楽しむことにした。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助の場合、酒を飲むと言っても深酒するほどは飲まない。

 周りのメンバーがそうなら勢いで深酒することもあるのだが、女性陣でそういう呑み方をする者はいないので、なおさら深酒はしないのだ。

 純粋に酒の香りと味を楽しむだけだ。

 ある意味で、それが本当の酒の楽しみ方なのかもしれないが、残念ながら考助は酒に造詣が深いというわけではない。

 このメンバーで酒のうんちくを聞かされるわけではないので、それで十分だった。

 あとは、ミツキが用意してくれた料理が花を添えている。

 ピーチ以外の女性陣は、その料理を楽しんでいる。

 お酒も多少は口にしているのだが。

 

「ところで~。コウスケさんは、加護を覚えた私達に何かしてほしいことでもあるんでしょうか?」

 お酒が入っていつも以上に色っぽくなっているピーチが、そんなことを聞いてきた。

「何か? いや、特には考えてなかったな」

 そう答えた考助は、フムと考えた。

 そもそも女性陣の進化の事を考えていたら加護の力の事が出て来たのだ。

 考助自身は、彼女たちに加護の力を使って何かをしてほしいと考えたことはない。

 勿論、子供の事は別にして。

 既に進化をしているメンバーもいるのだから、加護の力だけにこだわる必要もないのだ。

 以前に神域で散々反省したというのに、また自分自身に焦りが出ていたようだと考助は思った。

 女性陣もそのことを微妙に感じていたので、今回のような席を設けたのだろう。

 そのことは口にせずに、有難く便乗させてもらうことにした考助であった。

 

 その後は、特に大した話をするわけでもなく、普段通りの会話がされるだけだった。

 変わったことと言えば、今回みたいなちょっとしたパーティは初めてだったハクが、珍しくはしゃいでいたくらいだろうか。

 あとは穏やかに時間が過ぎて行った。

 女性陣としても、勿論考助の事もあったのだが、自分達自身をリフレッシュするいいきっかけになったのだろう。

 終わった後も色々な意味で、いい感じになっていた。

 結局この日は、何をするでもなく穏やかな日常を過ごすことになるのであった。

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