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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第25章 塔と神の審判
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(2)ナナの変化

 ピーチの進化についてどうするかの方針を決めた後は、本来の目的を達成することにした。

 本来の目的とは、セシルとアリサのパーティで冒険者活動をしているときに試していた、モンスターの弱点を「見る」ことが出来ないかという事だ。

 以前試したときは、ナナの力が強すぎてきちんと確認を取ることが出来なかった。

 だが、第八十一層であれば、モンスターが弱すぎるという事もないだろう。

 流石のナナも第八十一層のモンスターを一撃で倒すという事は出来ない。

 シルヴィアとピーチを連れてきているのは、勿論二人の加護の力を期待してのことだ。

 ピーチであれば、占い的な感覚で確認できないか、ということで、シルヴィアであればステータスとして見ることが出来ないかという確認もある。

 勿論、考助は自分自身で確認することがある。

 そもそも冒険者活動していた時にこのことを思いついたのは、何となくそうじゃないかという感覚を覚えたからだ。

 ステータス表示や目で見て分かり易くなっているわけではない。

 あくまでも感覚でモンスターのどのあたりを突けば、というのが分かった・・・・・・ように感じたのだ。

 あるいは直感と言ってもいいかもしれない。

 自分でもよくわからないその感覚を確かめに来ているのだった。

 

 まずはナナに、何も指示せずにモンスターの討伐を行ってもらう。

 流石に、冒険者活動していた時のように一瞬で討伐することは出来ないが、目の前のモンスターを危なげなく倒してしまった。

「・・・・・・なんか、以前に見た時より強くなっている気がするんだけど?」

「・・・・・・気のせいではありませんわ」

「凄いです~」

 以前この第八十一層でナナがモンスターを狩っていた時は、もう少し手間取っていた。

 明らかにその時よりも効率が良くなっている。

 冒険者活動していた時は、ここのモンスターよりも格下のモンスターばかりだったので気づかなかったのだ。

「この分だと、ナナだけでもさらに上の階に行っても大丈夫でしょうね」

 多少呆れている三人に、考助の護衛としてついてきたミツキが太鼓判を押した。

「ちなみに聞くけど、どのくらい上まで?」

 八十一層から上が上級モンスターが出てくる階層として一括りにしているが、その中でも強さの段階と言うのがある。

 当然上に行けばいくほど、厄介になっていくのだ。

「そうねえ。相性もあると思うけれど、二・三層上に行っても大丈夫じゃないかしら?」

 考えてみれば、この階層の狼達は、ナナ抜きで群れを維持できるほどの狩りを行っているのだ。

 彼らのさらに上を行くナナが、上の階層で対処できないはずがないのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「はあ。まあいいか。ナナだけを上の階層に上げてもしょうがないしな。それについては後で考えよう。今は元々の目的を達成しようか」

 既にシルヴィアとピーチの二人には、今回の目的を話してある。

 まずは考助がナナに指示を出すことにした。

 狙うのは、先ほどナナが倒したモンスターと同じモンスターだ。

 あくまで実験なので、連戦にならないように一体だけになっているモンスターを狙う。

 適当な個体を見繕って、以前と同じようにナナに指示を出した。

 ナナもやるべきことがきちんと分かっているのか、しっかりと考助の指示を聞いているようだった。

 といってもさほど長い指示と言うわけではない。

 どこどこの辺りを狙って攻撃するようにと言っているだけだ。

 ただ、その狙うべきポイントはそれぞれの個体で細かく違っているので、指示が多少長くなってしまっていた。

 考助が指示を終えると、ナナが再びそのモンスターに襲い掛かって行った。

 

「少しは良くなったかな?」

「そうですか~? あまり変わってない気もします」

「私も変わってないと感じましたわ」

 ナナがモンスターを討伐するのを終えるのを見た感想だ。

「う~ん。やっぱりただの気のせいだったかな?」

 首を傾げる考助に、ミツキが待ったをかけた。

「・・・・・・いえ。できればもう一度、同じことをやってみてもらえませんか?」

 先程の戦闘と比較して何か違いを感じたのか、そんなことを言って来た。

「ん。わかった。ナナは、大丈夫?」

「ワフ!」

 既に考助の傍に戻ってきていたナナが、尻尾をフリフリしつつ答えた。

 ちなみに、モンスターの身体は、血抜きしたうえでミツキのアイテムボックスに回収済みである。

 流石にこの階層のモンスターとなると、素材もそれなりに高価な物が多いのだ。

 普段狼達が狩っているモンスターまでは回収していないが、こうして実際に目の前で狩られた物は回収するようにしているのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「良くなってるね」

「そうですね~」

「明らかに時間が短くなっていますわ」

 次の検証では、シルヴィアが言った通り、討伐の時間が短くなっていた。

「先程のは考助様の指示通りに動くのに少し手間取っていたようですね。今回は多少は慣れたという感じでしょうか」

 ミツキが言うには、ナナにはナナなりの討伐の仕方というのがあったのだが、考助の指示でそれが多少崩されてしまったそうだった。

 ただ、それでもスペックの高いナナなので、しっかりとその指示をこなしていたのだ。

 今回はその指示に慣れたので、見た目でわかるように改善されたという事だった。

「考助様の言っていた弱点は正しかったのですが、最初はそこを突くのに手間取ったという感じね」

「なるほどね。だんだん慣れてきている感じか」

「そうね」

 出来れば、すぐにでも次を確認して見たいが、連戦させるわけには行かない。

 いざとなれば戦えるだろうが、わざわざ危険を冒す必要はないのだ。

 

「二人はどう? 何かわかりそうなこととかあった?」

 休憩も兼ねて拠点へと戻って来た考助は、シルヴィアとピーチに確認をした。

「私は、よくわかりませんでした~」

 ピーチが首を傾げながらそう言って来た。

 そもそも今のピーチの力は夢に関連しているので、起きているときは発現しないのかもしれない。

 出来れば、起きている時でも占いのように発現できればと期待していたのだが、残念ながらそう都合よくは行かないらしい。

「そうか。シルヴィアは?」

「私は・・・・・・何とも言えません」

 考助に聞かれたシルヴィアは、不思議な返事をしてきた。

 実際、何かわかりそうな気もするが、具体的に何かと問われれば答えが霧散してしまうような感じなのだ。

「なるほどね。まだ何度か僕とナナが試してみるから、その間に何かわかりそうなことがあれば教えてね。答えられることもあるかも知れないし」

「はい」

「私も、もう少し色々試してみます~」

 頷いているシルヴィアを見て、ピーチもそんなことを言って来た。

 加護の力に関係していると言われて夢の事を考えていたのだが、そもそも最初は占いに近い感じだったことを思い出したのだ。

 だとすれば、他にも出来ることがあるかも知れないと考えたのだ。

「そうだね。そうするといいよ」

 考助としてもそれを狙っていたので、同意した。

 考助は、ピーチの場合、夢の力だけにこだわるのも良くないと考えている。

 当然それは、他のメンバーにも言えることだ。

 あくまでも考助の感覚でしかないのだが、他にも色々と可能性がある気がするのだ。

 それは別に、一つの力にこだわり続けるのを否定しているわけではない。

 そこは本人たちの判断に任せることにしている。

 今のように、考助が言葉で誘導してしまえば、意味がないのかもしれないが。

 本人達がそれぞれ試していく中で、色々と使えるようになってくれれば、考助としても嬉しいことなのであった。

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