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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第24章 塔と加護の力
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(3)それぞれの挑戦

 フローリアがスピカ神と交神していた丁度その時。

 シルヴィアもまたエリサミール神と交神を行っていた。

 ただし、こちらはシルヴィアから交神を行ったのではなく、エリスから神託があったのだ。

 巫女としての力が強くなっているシルヴィアなので、こういう事も出来るようになっている。

『何かございましたか?!』

 エリサミール神から神託があることなど滅多にないので、シルヴィアは何かあったのかと若干慌てて交神をした。

『いえ。ごめんなさい。そう言うわけではないのです』

『そうなんですか。では、何故?』

 いくらなんでも雑談をするために、神託を飛ばして来たとは思っていない。

 そうしたことを話したいのであれば、いつも行っている定期交神の時にでも話せばいいのだ。

『いえ。貴方の事が心配になったものですからね。このことは考助様ではなく私から言った方がいいと思いましたので』

『心配・・・・・・?』

 エリサミール神の意外な言葉に、思わずシルヴィアは目を丸くした。

『やっぱりそうでしたか。子供のころより修行に身を置いてきた貴方の事ですから、気付いてないと思っていました』

 ここ最近のシルヴィアは、巫女としての修業を再開していた。

 それは、どちらかと言えば、修行と言うより荒行に近いものだったのだ。

 管理層にいる中での修行なので、出来ることに限りはあるが、それでも慣れていないものが行えば悲鳴を上げるような物もある。

 シルヴィアにしてみれば、あくまでも修行の一部という感じだったのだが、エリサミール神に言わせればそれが良くない傾向だったのだ。

 勿論シルヴィアがそこまで自分を追い込んでいるのは、加護の件が大いに関係している。

 

『貴方が、それこそ幼少の頃よりやって来たことを止めなさいと言うつもりは、勿論ありません。ですが、何のためのものなのか、目的をはき違えてはいけませんよ?』

 エリサミール神が言いたいことは、すぐにシルヴィアも察した。

 そもそも聖職者が行う修行や荒行と言うのは、神あるいは神の意思に触れるために行うものだ。

 もう少し具体的に言うと、神域にいる者に触れるためのものとも言える。

 だが、ここ最近のシルヴィアは、別の目的のために修行を行っていたのではないか、と指摘しているのだ。

『貴方が目指そうとしている所は間違っているとは、私も思いません。ですが、そのためにやり方を間違っては元も子もありませんよ』

 優しく諭して来るエリサミール神に、シルヴィアは内心で深く頭を下げた。

 確かに言われる通り間違っていることに気づいたのだ。

『ありがとうございます。・・・・・・ですが、そうなると・・・・・・』

『もう一度自分の立ち位置を見直してみなさい。そうすれば、自ずとどうすればいいのか、貴方にも見えてくると思いますよ』

 迷いを見せたシルヴィアに、エリサミール神がそう言って来た。

 ここで具体的な答えを言うことは無い。

 言ってしまえば、全てが無駄になってしまう可能性もあるのだ。

 シルヴィアも端から答えを直接教えてもらうつもりなどない。

 神から直接教えを貰っても、それが全てではないことを分かっているのだ。

 直接こうして交神するようになって、実感を伴ってそれが理解できている。

『はい。わかりました。ありがとうございます』

 シルヴィアのその返答を聞いて、エリサミール神も安心した様子を見せた。

『こういう事は焦ってもいい結果は出ません。気持ちはわかりますが、一度落ち着いて考えてみることです』

 それだけ言い置いて、エリサミール神は交神を終えた。

 間違いなくシルヴィアにとっての神託を授けて行ったわけだが、そのことに深く感謝したシルヴィアはもう一度自分を見つめなおすことにしたのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 シュレインは、ヴァミリニア城にある図書室を訪れていた。

 図書室は元々あったわけではなく、城を失う際に避難していた蔵書を再び回収して来た物を並べて作ったのだ。

 ヴァミリニア城が失われるのは、初めての事ではなく何度か起こっているので、そうした対処方法もとられているのである。

 シュレインがその図書室を訪れているのは、古い文献を見るためだ。

 そうした文献には、ヴァンパイアの上位種と言われている始祖だったり真祖と言われるヴァンパイアの話が書かれている物がある。

 それらを見て、今の自分に何か参考にできるものは無いかと考えたのだ。

 

 結論から言えば、図書室にある文献は大変参考になった。

 改めて言うまでもないが、ヴァンパイアにとって血とは大変重要な物であることがわかった。

 現在では嗜好品扱いになっている吸血行為だが、昔においては血を求めることは、契約に基づいていた。

 血の代償によって行われる契約は、勿論今でもそうなのだが、過去においては非常に神聖な物として扱われていた。

 それは、ヴァンパイアの一族に限らずだ。

 更に上位の血の契約を行うことが出来る者が、始祖ヴァンパイアだったり真祖ヴァンパイアと呼ばれていた。

 その契約行為が、過去には神の儀式に近いものがあるとされていたのだが、それに神殿が目を付けて敵対していったとされている。

 勿論ヴァンパイア側から見た歴史なので、ある程度の誇張などもあるだろう。

 シュレインは、歴史そのものを今更どうこう言うつもりはない。

 問題は、今加護を貰っている自分がどういう力を発現できるかどうかなのだ。

 文献のおかげで何を目標にすればいいのか分かった。

 後はその方法と手段を求めるだけである。

 それを知るために、さらに文献を探っていくシュレインであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 他のメンバーたちが加護の力の事で苦労している中、当然ながらコレットもそれを探ろうとしていた。

 ただ、他の者達と違って手探りの状態と言うわけではなかった。

 何しろ塔のエルフ達がいる階層には、上位種の生きた事例がいるのだ。

 当然コレットは、ハイエルフ達の所へと話を聞きに来ていた。

 

「そもそもエルフからハイエルフに一つの代で進化をしたという話は、聞いたことがないわね」

「そうだな。我々ハイエルフは、元からハイエルフとして存在しているからな」

 コレットの話を聞いたリストンとセーラの答えが、これだった。

 ある程度の期待を持って、コレットは話を聞きに来たのだが、最初から期待が裏切られてしまった。

 だからと言って落ち込む気はない。

 この答えは、ある程度予想していたのだ。

 そもそもエルフからハイエルフに簡単に進化できるようなら、皆がその方法でハイエルフになることを目指すだろう。

「では、エルフが神の加護を得たという話は?」

 これには、ハイエルフの三人は顔を見合わせたが顔を振った。

「エルフの話であれば、それこそ長老あたりに話を聞いた方がいいと思うが、少なくとも我々は聞いたことが無いな」

「そうですか・・・・・・わかりました。ありがとうございます」

「何。今代の世界樹の巫女だ。我々も協力できることは協力するさ」

 ゼパルのその言葉に、コレットは頭を下げて、今度は里の長老の元へと向かうのであった。

 

「神の加護を得たエルフのう・・・・・・」

 現在塔の階層をまとめているのはガインだが、長老であるドルジェも里に来ていた。

 長老と言っても今の役割は、ご意見番と言った感じになっている。

 コレットの質問を受けたドルジェは、しばらく考え込むような仕草をしていたが、やがて首を振った。

「悪いが聞いたことが無いのう。そもそも知っての通り我々エルフは、神々より精霊を重んずるところがあるからの」

「だとしたらスピカ神については?」

 スピカ神は、精霊の神とも言われている存在だ。

「確かにスピカ様であれば、あるいはあるのかもしれんが、少なくとも儂は聞いたことがないのう」

「そう。わかったわ。ありがとう」

「そうか。すまんのう」

「いえ。いいのよ。もともと参考にできればと思っただけだから」

 これは言葉通りで、そもそも考助は新しい神なので、その加護が他の神と全く同じになるとは考えていなかった。

 それならそれで、エルフらしい力の事を考えればいいだけだ。

 そう考えたコレットは、最後に世界樹の元へと向かうのであった。

と言うわけで、残りの三人の動向でした。

この後、メンバーたちがそれぞれの方法で加護の力について探っていく事になります。

その様子は・・・・・・書くと長くなるので書く予定はありません。

次話からはそれぞれの加護の力について語っていくと思います。

タブンw

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