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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第22章 塔と祭り
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(5)リリカの変化

 考助がリリカを気にしたのは、別に神気を感じ取っていたからだけではない。

 もう一つ別の大きな理由がある。

「リリカさん、この神殿に来るようになってから、何か変わったことは起きてない?」

 考助が慎重にリリカに問いかけた。

 ここで間違えると全てがふいになってしまうと、理解できたのだ。

 一方、考助は何者なんだろうと疑問に思っていたリリカも、突然の問いかけに首を傾げた。

「変わったこと、ですか? 特には・・・・・・」

 咄嗟には思いつかなくてそう返事をしたが、リリカはそう言えばと思い出した。

「そう言えば、仲間と冒険しているときに、珍しい素材を見つけやすく(・・・・・・)なっているような気がしますね。気のせいと言えばそれまでなんですが」

 極端に増えているわけではないが、以前よりも珍しい素材に遭遇しやすくなっていたりする。

 仲間たちと笑い話で、リリカが神殿に通うようになったからか、と話したのを思い出した。

 

「それは・・・・・・」

 リリカの話を聞いて、何かを言おうとしたシルヴィアを考助が視線で止めた。

 シルヴィアもそれを察して、言葉を止めた。

「? 何かありましたか?」

 リリカも鈍い人間ではないので、当然その様子に気付いた。

「ああ、いや。何でもない・・・・・・ことは無いんだけど、他にも確認したいことがあるんだけど、いい?」

「? はあ・・・・・・」

 リリカは、突然のことに戸惑った。

 周りを見ると、アレクをはじめとして全員が、興味深そうに見ている。

 誰も考助の事を止めようとはしていない。

 リリカにしてみれば、初めて会う人物のはずなのだが、戸惑いはあっても不信感などは起こっていない。

 何とも不思議だったが、周りにいるのがすごいメンバーなので、そのせいだろうと思うことにした。

 

「神気を感じられるようになったのは、いつ頃から?」

「前々から感じてたかもしれませんが、はっきり意識したのは、ひと月ほど前からでしょうか。いえまあ、神気だとは思っていませんでしたが」

「ああ、それはいいんだよ。この雰囲気さえ感じ取れていれば。・・・で、素材の発見率が上がったのは、その辺りから?」

「うーん。具体的に言われると、ちょっと違う気がしますね」

「へえ。じゃあそれはどれくらい前から?」

「2、3週間ほど前からでしょうか」

 考助の質問に、端的に答えていくリリカ。

 この質問が何の意味があるのかは分からないが、特に疑問に思わずに次々に答えて行く。

 後から考えれば、最初から誘導されていたのが分かったのだが、この時は分かっていない。

 だからこそ、簡単に近づくことを許してしまった。

「なるほどね。・・・・・・それで? 今は何か感じない?」

 リリカに近づいた考助は、右手の人差し指で、額をチョンと触った。

「・・・・・・あ」

 リリカは、一瞬立ち眩みをしたようによろけたが、それを最初から分かっていたように考助が支えた。

 今までのやり取りを見ていたソニアが、抗議の声を上げようとしたが、それを実子であるフローリアが遮った。

 具体的には、既に仮面を外していたソニアの口を手でふさぎ、首を左右に振ったのだ。

 それを見たソニアも、何か意味があるのだと考え直して、黙っておくことにした。

 ちなみにアレクは、最初から黙ったままになっている。

 勿論、考助が何か意図してやっているためだと分かっている。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助に支えられたリリカだったが、まだ目は閉じられたままだ。

 その状態のまま考助が話しかけ始めた。

「目を閉じたままでいいから。何か感じないかな?」

 完全に考助の誘導状態に入っているリリカは、何の疑問も感じずに言いなりになっている。

「・・・・・・暖かい・・・」

「ん?」

「暖かい何かが・・・・・・」

 それを聞いた考助が、思わず苦笑してしまったが、目を閉じているリリカには、その表情は見えていない。

「それは、どこに感じる?」

「胸の辺りに・・・・・・」

「じゃあ、それに触れてみてごらん」

 物理的に触れろという事ではない。

 既に完全に考助の言いなりになっているリリカは、言われるままに何とかその温かいものに触れようとした。

 具体的に何で、と言われると答えられないのだが、この時は確かに触れたと感じた。

「触れられた?」

「・・・・・・ハイ」

「じゃあ、もうゆっくり目を開けていいよ」

 考助に言われるままに、リリカは目を開けた。

 

 目を開けるとすぐ目の前には、当然だが考助がいた。

 そしてその考助を目にした途端、考助が何者かを理解した。

 いや、理解させられてしまった。

 思わず傅こうとしたが、すぐに考助に止められた。

「いや、そんな事しなくて良いから」

「しかし・・・・・・!!」

「いいんだよ」

 さらに首を振る考助に、リリカは助けを求めるように、シルヴィアを見た。

 視線を向けられたシルヴィアは、苦笑した。

「いいんですよ。コウスケ様は、こういう方ですから」

「は、ハア・・・」

 何となく釈然はしなかったが、リリカは無理やり納得するしかなかった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一連のやり取りを呆気にとられて見ていたソニアだったが、最後のやり取りで何とか状況を理解できた。

「これって、あれ? あの人(?)をコウスケ様と理解できたってこと?」

 すぐ傍にいたフローリアに、小声で聞いてきた。

「そうらしいな」

「・・・・・・どうやって?」

「さあ? その辺になると私もわからないな」

 神に関することは、完全にシルヴィアの範疇なので、フローリアにも今何が行われたのかは、全く分からない。

 その二人の会話を聞いていたピーチが、二人にフォローをした。

「簡単に言うと、元々リリカさんの中で感じていたコウスケさんの神威を拡大したという事でしょうか~?」

「神威を? だが、完全に抑えていたのでは?」

 神威を完全に抑え込むことが出来るようになったからこそ、今回こうして祭りを楽しむことが出来るようになったはずだ。

「はい~。ですので、リリカさんの中の・・と言いました」

「中の・・・という事は」

 フローリアにもようやくピーチが言いたいことが分かった。

 だが、それを言うのはまだ早いことも理解できた。

 何しろ考助は、まだリリカに告げていない。

 自分から言うわけにはいかないという事は、理解できる。

 完全に蚊帳の外に置かれたソニアは、いぶかしげに二人を見ていた。

 

 未だに混乱しているリリカを尻目に、考助は視線をシルヴィアに向けた。

 その視線の意味を理解したシルヴィアが、リリカに対してフォローを始めた。

 こういう時は、神職の事が一番分かっているシルヴィアに任せた方がいいのだ。

「リリカさん、大丈夫ですか?」

 自分の中にある力について整理が追い付いていないリリカに、シルヴィアが問いかけた。

「あ、はい。なんかまだ自分の中で整理が追いついていないと言うか・・・・・・」

「頭で考えてもいけませんわ。感じるままに受け入れた方がいいです」

 今リリカが感じているのは、考助の力その物の一端だ。

 巫女としての修業を積んでいるリリカだから今の状態で済んでいるが、そうでない者が同じ状態になれば、ここまではっきり意識を保っている事すら難しいだろう。

 もっとも、修行を積んでいない者が、神の力を受け入れることはまずないのだが。

 シルヴィアに助言を受けたリリカは、もう一度目を閉じた。

 目を閉じて力を受け入れることは、修行の一環でもよくやることなのだ。

 徐々にリリカの中にある考助の神力が、きっちりと受け入れられていることを考助は感じた。

 こういったことに関しては、やはりシルヴィアに任せた方がいいと、改めて思う考助であった。

いい加減あらすじを変えようとして早数週間。

どこまで書いていいのか悩んだ末に、いつも変えずに終わっています。

このまま変えずに行きそうな予感・・・・・・orz

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