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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第21章 塔と加護と進化と
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(2)種族特性

 シルヴィアの称号に、加護が付いていることを話した考助は、今度は右目で確認をしてみた。

 加護を与える前は、<進化の萌芽>という状態だったが、加護を与えたことで何か変化が起こったか期待しているのだ。

 そして、その目論見通り<進化の萌芽>が変化して、<進化の伸長>になっていた。

 何とも分かりにくいが、成長の途中にあるという事だろうか。

 まだ先は長そうだが、それでも進歩したことは間違いがない。

「・・・コウスケ様?」

 シルヴィアの呼びかけに、ハッとした。

 少しの間だが、シルヴィアの目の前で考え込んでしまったのだ。

「ああ、右目で見たら、変化してたよ」

「本当ですの!? それで、どういう風に変わっていましたか?!」

 さり気なく言ったつもりだったが、シルヴィアの食いつきがすごくて、思わず引いてしまった。

「あ、ごめんなさい。つい興奮してしまいましたわ」

「ああ、いやいいんだけど。・・・それで変化だけど<進化の萌芽>が、<進化の伸長>になっているよ」

「<進化の伸長>ですか?」

「意味合い的には、ここから成長していくと言った感じかな? 不足条件を見てもそんな感じ」

 何とも曖昧な表現に、シルヴィアも戸惑っている。

 話をしている考助も若干苦笑いになっている。

「加護を得て、何か変わった?」

「ええ。確かに何か変わった感じがするけれど・・・あまりよくは分からないですわ」

 首を傾げるシルヴィアを、考助はじっと見た。

「うーん。確かに僕の力が宿っているように感じるけど・・・どうすれば発現するかは、分からないな」

 何分考助も初めての事なので、的確な助言など出来るはずもない。

「ただ、多分だけどその加護を使いこなせれば、進化の方も何か変わりそうな気がする」

 完全に考助の勘による発言だが、なぜか外れている気はしない。

「そうですか。まずはこの力を使いこなせるようにすることですね」

「僕自身も使いこなせているわけじゃないのに、おかしい気もするけどね」

 右目にしても左目にしても権能の力を完全に使えているわけではない。

「既に十分と言う気もしますが・・・それ以上何があるのでしょうね?」

「さてね。実際は無いのかもしれないし、今のままでは変わらないのかもしれない。色々試してみているけど、変わる兆しもないしね」

 左目に関しては、ステータスが見えること以外の力はない。

 思えば、この世界に来て初めて使ったときが一番色々な物が見えていた気がする。

 暴走していたので、何が見えていたのか全く覚えていないのだが。

 無意識の内に、暴走しないように、これ以上変化しないように制御している可能性がある。

 だが、その制御を外すのはどうすればいいのかが全く分からないのだ。

 

「とにかく、私がコウスケ様の加護を得たことを皆に伝えてきます」

「うん?」

 わざわざ伝える必要があるのか、と疑問に思った考助を見て、シルヴィアが笑顔を浮かべた。

「私だけ持っていると知られたら、皆に睨まれますわ」

「あー、そうか。そうだね」

 加護を与えようとして与えられなかったのならともかく、与えられることを黙っているのは良くないということだ。

「はい。そう言うわけですから、コウスケ様は皆に加護を与える準備をしておいてください」

 シルヴィアはそう言って、席から立ち上がった。

 早速皆に伝えに行くのだろう。

 準備と言っても物理的に何かを用意する必要があるわけでもないので、考助はただその場で皆が来るのを待つことになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 シルヴィアに呼ばれて、その場に全員が集まるのは、さほど時間はかからなかった。

 皆が集まってから加護を与えることにする。

 順番は、考助が与えやすいと思った順だ。

 もっと言えば、考助と同質の力をより強く持っている順だった。

 勿論一番多いのは、シルヴィアだが既に加護は与えているので、今回は除外。

 次に強いのは、意外と言うか当然と言うべきか、ピーチだった。

 事あるごとに、シルヴィアがピーチは巫女になる素質があると言っているので、その影響もあるのだろう。

 その次はシュレインで、これは考助の血を摂取していることが影響している。

 後のコレットとフローリアに関しては、どっこいどっこいだった。

 かといって、持っている力が少ないというわけではなく、加護自体は問題なく与えることができた。

 これでメンバー全員が、考助の加護を得ることができた。

 加護を得ると同時に、<進化の萌芽>も全員が<進化の伸長>に変わっている。

 やはり進化に関しては、加護を得るのがいいと言うのが証明できたことになる。

 これまでの召喚獣たちを見ていてもその通りなのだから、ある意味で当然の結果と言えるだろう。

 

「あっ!?」

 考助が全員の状態を確認していると、突然ピーチが声を上げた。

「なんですの?」

「びっくりした」

「どうかしたかの?」

「何があったのだ?」

 傍にいた皆も、口々にピーチの様子に驚いていた。

「ええと・・・。なんか私にもステータスらしきものが見えて来たんですが~」

「「「「えっ!?」」」」

 考助とピーチ本人を除くメンバーが、驚きの声を上げた。

「誰のどんなものが見えてる?」

「これは・・・名前と種族が見えているんでしょうか~? なんか曖昧でよくわかりません」

「・・・曖昧?」

 はっきりとしたものしか見たことが無い考助は、首を傾げた。

「なんか、占いをしているときに、きちんと先が見えなくてモヤモヤしている感じです~」

「それは・・・なんだろうね?」

 そんな状態になったことが無い考助は、そう答えることしかできなかった。

「ひょっとしたら、きちんと見えるようになるのに訓練が必要とかじゃないかな?」

「多分そうですね~」

 

「ちょっと待ってください」

 そんな二人の会話に口を挟んだのは、シルヴィアだった。

「シルヴィア?」

「ピーチさん、見えているのは、本当にステータスですの?」

「え~? いえ、ですからハッキリ見えているのは、名前と種族だけで・・・? あれあれ~?」

 ピーチが話しながら首を傾げた。

「確かに言われてみれば、占いをしているときの感覚と似ていますね~。こちらの方が力が強く感じますが」

 ピーチの言葉に、シルヴィアが納得したように頷いている。

「どういう事?」

 一人分かっている様子のシルヴィアに、代表して考助が質問した。

「もしかしたら、その人が特化している分野に限って見えてくるのかもしれません」

「え~? 私は別に占いに特化しているわけではありませんよ?」

「そうですわね。言い方が悪かったですね。その種族の特性で一番強い物が見えるのかもしれません」

「そうか。確かサキュバスは、元々勘が鋭い種族だったな?」

 そこから派生して、歴史的に占いと言う特技を身に付けて行ったのだ。

「勘と言うのを分かり易くする為に、占いという形で見えるようになっているという事ね」

 コレットも何となく、シルヴィアが言いたい事がわかったのか、納得して頷いている。

「なるほどの。種族特性か」

 シュレイン、というかヴァンパイアも分かり易い種族特性を持っているので、何となくとっつきやすいと言った感じだった。

 コレットの種族であるエルフもそう言った意味では、種族特性は分かり易い。

 問題があるとすれば・・・。

「ヒューマンの種族特性は、何だ?」

 フローリアが、シルヴィアに疑問を投げかけた。

「・・・これと言って種族特性がないのが、ヒューマンの種族特性と言われていますわね」

 シルヴィアの答えに、二人同時にガックリと肩を下げた。

「いやいや。それだったら、僕が発現しているのがあるじゃないか」

 右目の力はともかく、そもそも左目の力は考助が現人神になる前に発現していた。

「まあ、加護と言っても色々ありそうだから、しっかりと確認しながら使えるようになった方がいいかもね」

 考助がそう締めると、全員が同意するように頷いた。

 流石に、ヒューマンでは考助の加護の力は発現しないという事がないように、と思わず祈りたくなる考助なのであった。

流石に、ヒューマンだけ発現しないという事は無いですw

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