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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第21章 塔と加護と進化と
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(1)考助の加護

今日から第二十一章の始まりです。

珍しくタイトルは、最初から分かるようになっています。

 コラム王国との騒動もひと段落したので、後はアレクに任せることにした。

 アマミヤの塔の兵器が表に出たことによって、政治的な動きが複雑になりすぎて、素人が下手に口を出せば問題になることが目に見えているためだ。

 考助自身は政治は素人だと十分理解しているので、それこそ生まれた時からその中に身を置いていたアレクに任せた方がいい。

 セントラル大陸以外の大陸の国家に関しては、アマミヤの塔の意外な戦力に、しばらくの間は二の足を踏むので、当分は大丈夫とのことだった。

 問題があるとすれば、セントラル大陸にある各町の動きだった。

 それぞれの町がそれぞれの思惑で動いているので、下手に動いてしまうと判断を誤ってしまう。

 今は大別して三つの勢力に分かれているそうだ。

 一つ目は、ケネルセンのようにアマミヤの塔の傘下に入ってしまおうと考えている町。

 二つ目は、日和見を決め込んでいる町。

 三つめが、サジバルと同じように敵対しようとしている町。

 ただし三つめの勢力は、コラム王国の騒動でアマミヤの塔の攻撃兵器が表に出てきたことで、動きが止まっているとのことだった。

 一つ目の町が、逆に行動が表に出てくるようになったことで、行政府が大忙しになっている。

 傘下入りを認めたとしても地理的に手助けが難しい場所の街などは、保留にしてある。

 転移門がある四つの町と、東西南北の町が全て傘下に入ればそんなことを悩む必要もなくなるのだが、とアレクは笑って言っていた。

 流石に黒いところがないと政治はやってられないな、というのがその時のアレクの顔を見た考助の感想だった。

 ただし、保留にしているとはいえ、放置しているわけではない。

 商隊の物資に関しては、傘下に入った町の次に優先的に流すようにしている。

 当然儲けは出るようにしてあります、と言った時のシュミットの顔を見た考助の感想は、流石は商人だな、というものだった。

 大商隊の物流網も上手くいっているようで、行商の常識が変わったということも言っていた。

 ただし考助としても、個人の行商を無くすことは全く考えていない。

 むしろ無くなるはずがないと考えていた。

 どうしたところで大商隊では手が回らない商品は出てくる。

 そういった物が、個人の行商の扱う商品に代わるはずだ。

 こんなことは、考助が考えなくても個人個人の行商人が考えていくだろう。

 それが出来ない行商人は淘汰されるか、ギルドやクラウンに吸収されていく事になる。

 先を見越して、シュミットやリックのようにクラウンに入ってくる行商人も増えているという事だった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんな状況を報告として聞きつつ、考助自身は相も変わらず神威の抑え込みの訓練に精を出していた。

 何しろこれが出来ないことには、安心して第五層の町すら歩くことが出来ない。

 第五層の町は、既に町と言うより街と言った規模になっているそうだった。

 ちなみに街と呼ばれるようになる基準は、人口が十万人を超えているかいないかだ。

 十万を行ったり来たりするような規模だと、どっちつかずで呼ばれるのだが、第五層の街に関してはさらに増えるのが見込まれているので、既に街の規模と言われている。

 そこまで大きくなった街をじっくり見てみたいのだが、どこで聖職者に会うかわからない状況だとおちおちと出歩くことも出来ない。

 そんなわけで、それなりに必死になって訓練しているのだが、その訓練がようやく実を結びそうだった。

 考助の傍には、当然のようにシルヴィアが訓練を見守っていた。

 訓練と言う名のイチャイチャ、という一部の者(コレット)の意見もあったが、勿論イチャイチャだけしているわけではない。

 以前コツをつかんでからは、しっかりと成果も出ているのだ。

 その成果を確認するために、シルヴィアがいるのだ。


「・・・コウスケさんからの神威は感じられなくなりましたわ。これなら街を歩いても大丈夫でしょう」

 ついにこの日、シルヴィアから合格点が出された。

 これで大手を振って、街を歩けるようになる。

 それも嬉しいことだったが、それよりも今は、他に気になることがあった。

 自分の神威を抑えることによって、新しく感じ取ることが出来る物があったのだ。

 それが今、シルヴィアから感じ取れている。

「・・・うーん。これって何だろうな?」

「コウスケさん?」

 考助の様子に、シルヴィアが首を傾げた。

 何となく思い当たるものもあるのだが、今この場で試してみてもいいのか分からない。

 悩む考助に、声を掛けないほうがいいと判断したシルヴィアが、黙って見ていた。

 

 しばらく後に、考助が決断するように、シルヴィアに話しかけて来た。

「神威を抑えれるようになってから感じるようになったんだけど・・・」

「はい」

「シルヴィアから神威を感じ取れるんだけど?」

「ああ、それはコウスケ様の神威でしょう。私はコウスケ様の巫女でもありますので」

 シルヴィアは、巫女として振る舞うときは、あくまでも考助を神として扱うので、様付けになっている。

 微妙な差だと思うのだが、本人の中では明確な区別があるらしい。

 それはともかく、今は神威の話だと頭を切り替える。

「いや、シルヴィアだけならそうだけど、他のメンバーも感じるときがあるんだよね」

 それはふとした時に気づくような、ごくわずかな時間に感じ取るときがあるのだ。

 勿論一番多く感じるのはシルヴィアなのだが、他のメンバーでも似たような傾向があった。

 ちなみに、順番はシルヴィアが一番で、その次がピーチ、後のメンバーは似たり寄ったりの強さだった。

「コウスケ様の巫女の資格を持っているかどうかでしょうか?」

 考助の話を聞いて、シルヴィアがそう言って来た。

「うーん。どうかな? それもあるけど、他の理由が一つ思い当たるんだよね?」

「・・・それは?」

「加護を与えられる資格を持っているかどうか」

 考助の推測に、シルヴィアが考え込むようなしぐさをしたが、しばらくして首を振った。

「駄目ですね。加護の事になると、私では分かりかねますわ。それこそ神々に聞いてみてはいかがでしょうか?」

「勿論それもやってみるけどね。でもその前に試してみたいことがあるんだけどいい?」

 考助がやってみたいという事は、以前ジャルから聞いていた加護についてだ。

 神域にいる神々はわざわざ他人(他神?)から聞かなくても加護の与え方は分かっていると言っていた。

 今の感覚を信じるのなら、加護を与えることが出来るかもしれないと考えたのだ。

 とは言え、ある意味で人体実験になるのは間違いがない。

 そんなことを話すと、シルヴィは納得したように頷いた。

「そういう事ならぜひ最初は、私でお試しください。そのための巫女でもありますわ」

 シルヴィアならこう答えることが分かっていながら聞いた自分に、多少のうしろめたさを感じながら考助も同意した。

 そんな考助の気持ちもシルヴィアなら察しているだろう。

 考助の多少の希望も含んだ推測だったが、その推測は当たっていた。

 勿論考助がそんなことを考える人柄だからこそ、惹かれている部分もあるのだ。

 神なのだから、そんなことを気にせず試せる立場にあるというのに、それをしない考助という人物に魅力を感じている。

 

 そんなシルヴィアの想いを余所に、考助は加護を与える準備を整えていた。

 準備と言っても神としての力を使って加護を与えるだけなので、特別な何かが必要と言うわけではない。

 あえて言えば、初めて行う作業に対する心の準備といったものだけだった。

 シルヴィアから感じ取れた自分の神威を使って、これまた自分の権能の一部を分け与える。

 分け与えると言っても考助自身からその力が無くなるわけではない。

 厳密に言えば、コピーした物を渡すと言った感じだ。

「これで・・・出来たと思うけど、どうかな?」

「・・・自分ではよくわかりませんわ。あ・・・いえ。確かに何かがあるようですね」

「みたいだね。ステータスをみたら、しっかりと加護が付いているよ」

 シルヴィアのステータスを見ると、称号に<考助の加護>と言うのが付いているのが確認できたのであった。

加護の検証と、どんな力なのかは次話になります。

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