(9)久しぶりの・・・・・・。
イチャイチャ回
後のことはアレク(行政府)に任せることにして、考助達はいつもの管理業務へと戻った。
一応、今回のコラム王国のように、他大陸から攻め込まれるようなことがあれば頼っていいとは言ってある。
攻撃兵器はともかくとして、結界は大陸の周辺をすべて囲っても毎日維持できるくらいの神力は稼げているので問題ない。
現在は、四属性の塔も安定して稼げるようになっているので、神力に関しては、余り気味になっている。
使おうと思えばいくらでも使い道はあるのだが、大陸を守るためなら結界を張り続けるくらいのことは実行するつもりだ。
現人神である考助が、どこまで手を出していいのかという問題もあるのだが、そもそもアスラに自由にしていいと言われているので、変に気を遣うのは止めている。
だからと言って無制限に手を出すつもりもないのだが。
ただいくら神と言っても、考助の権能は今のところ(?)見るだけの物なので、戦闘に役立つものではない。
今回もあくまでも塔の機能を使っての物なので、神の権能とは関係がない。
いざ戦闘となれば、確実にコウヒやミツキの方が上なので、そう言う意味では、役に立たない権能だったりする。
いっそのこと敵の弱点とか見えないかと、試してみたこともあるのだが、残念ながらそんな便利項目は増えなかった。
自分の力の事なのに、全く分かっていないんだなあ、と改めて自覚する考助であった。
「また何を考え込んでおる?」
そんなことを考えていると、シュレインが話しかけて来た。
誰もいないことを良い事に、隣にぺったりとくっついてくる。
「いやー。何となく思いついていたことを考えてただけ。別に何かに悩んでたりしてたわけじゃないよ」
「そうか」
考助の言葉に、一つ頷くシュレイン。
「それで? 何か用があった?」
「む。何か用がないと来てはダメだったかの?」
「ああ、いや。そんなことは無いよ」
少しだけむっとしたシュレインに、考助は慌てて否定した。
「そうか」
それだけで納得したのか、シュレインもいつもの表情に戻った。
それからしばらくは無言のまま過ごした。
シュレインといるときは、何かを話しているわけではなく、こうしてお互いに無言でいることも多い。
だからと言って苦痛になるわけでもなく、むしろ安心したような雰囲気になる。
そんなことを考えていた考助は、ふと最初の時のことを思いだして、クスリと笑ってしまった。
「む? どうかしたかの?」
「ああ。いや。シュレインが初めてここに来た時のことを思い出していた」
一瞬虚を突かれたような表情になったシュレインは、すぐに相好を崩した。
「あの時のコウスケは、ひどかったからの」
「しょうがないじゃないか。元の世界のイメージでは、吸血鬼ってあまりいいイメージじゃなかったんだから」
「まあ、それは理解しておるがの」
そもそもこの世界でも、未だに吸血鬼にいいイメージを持っていない者もいるのだ。
考えてみれば、シュレインと会っていなければ、吸血鬼をはじめとして元の世界のイメージとは違うんだという事を実感として理解できなかったもしれない。
そう言う意味では、シュレインとの出会いは、考助にしてみればいい意味での教材だったと言える。
「有難う」
突然感謝の意を示した考助に、シュレインは何も言わずに黙って考助の手を取った。
そこまでであれば、何となくいい雰囲気で終わったのだろうが、シュレインはそのまま考助の人差し指をパクリと口にくわえた。
「・・・おい。こら」
思わず手を抜こうとしたが、ガッチリと捕まえられていて外すことが出来なかった。
「ひょいでふぁないかー」
指を咥えながらもごもごとさせるシュレイン。
一瞬だけ指先に痛みが走ったが、それもすぐに収まった。
痛みが走ったのは、シュレインが指先から血を吸っているためだ。
すぐに収まったのは、吸血鬼の能力の一つらしい。
確かに血を吸うときにいつまでも痛みがあれば、すぐに逃げられてしまう。
そのためその痛みを消す成分を分泌しているらしい。
らしい、というのはきちんとその辺の事を調べられたことが無いためよくわかっていないそうだ。
吸血一族としても特に深く追求するつもりはない。
実際血を吸うときに無意識にやっているので、意識的にその成分を出すことが出来ないので、実験のしようがない。
考助としても特に深く知りたいわけでもないので、その話を聞いたときに、そんなもんなんだと納得してしまった。
「そろそろ終わり」
もう十分だと判断した考助が、シュレインの口に収まっていた指を抜いた。
シュレインの抵抗もなくあっさり抜く事が出来たのは、考助の力が優ったわけではなく、単にシュレインの力が入っていなかったためだ。
そのシュレインは、恍惚とした表情を浮かべていた。
「あ、うあ・・・いつものことながら、卑怯しゅぎるの」
微妙に呂律もまわっていなかった。
シュレインはある程度の間隔で、こうして考助の血を採取(?)していたが、そのたびにこんな感じになっていた。
時折、フフフと笑みを漏らしたりするので、普段とのギャップが半端ないことになっている。
「いちゃいちゃ禁・・・あれ?」
シュレインがトリップしていると、コレットが部屋に入ってきた。
すぐにシュレインの様子に気づく。
「また、いつもの?」
コレットも慣れたように聞いてきた。
「そういう事だね」
シュレインが血を吸うと、いつもこんな感じになるので、既にメンバーも慣れきっていた。
こうなる原因も既に何度も本人から語られている。
曰く、シュレインにとっては、考助の血は最高の嗜好品だと。
その後色々と語っているのだが、考助も他のメンバーも聞き流していて覚えていない。
そもそもシュレインを除けば、血の味など好んで味わう種族でもない。
熱心に語られても、ふーんすごいんだ、くらいにしか思わない。
シュレインもそれは分かっているので、普段は聞かれたときにしか答えないようにしているのだ。
だが、こうして血を飲んだ後は、いろんな意味で箍が外れるらしい。
下手につつくと語り始めるので、今ではこうなった状態のシュレインは放置するのが定番となっていた。
ほとんど酔っ払い扱いと同じである。
出来れば考助も逃げ出したいのだが、毎回ガッチリと逃がさないようにシュレインがまとわりつくので、逃げることができないでいた。
今回もガッチリと腕を掴んでいた。
基本的にくつろぎスペースでは、他の者がいるときにはいちゃいちゃ禁止なのだが、こうなった時のシュレインだけは例外扱いになっている。
とはいえ、羨ましそうに見るのだけは我慢が出来ないらしく、コレットもジッと腕の当たりを見ているのだが。
そんなことをやっていると、他のメンバーも集まってきた。
「あ~。今回は見れませんでした。残念です~」
最後に来たピーチが、そう言ってからかうようにシュレインの方を見た。
既にシュレインも正気に戻っている。
そして、赤い顔になっていた。
まさしく、酔っ払い状態から冷めて冷静になった途端に、先ほどの態度を思い出しているのと同じ状態だった。
からかわれるのが分かっているので、血を吸うのはなるべく自室とか考助の部屋とかのプライベートスペースにしているのだが、先程の様につい吸ってしまうときがある。
ほとんど衝動なので、気づいたときには今のようになってしまうというわけだ。
散々皆の前で考助といちゃいちゃした分、皆にからかわれることになるのだが、ある意味で自業自得なので、考助も放っておくことにしている。
というか、下手に口を出すと巻き込まれるのだ。
そんなわけで、今回もシュレインが散々に他のメンバーにいじられるのであった。
何となく書いてみたくなったので書いてみました。
決して話数が半端になってしまったからではないですよ?
・・・この話で第20章の本編は終わりです。
閑話を挟んで次は第21章になります。
何だかんだで20章超えてしまいました。
今後ともよろしくお願いいたします。




