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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第20章 塔の機能を使ってみよう
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4話 爆発

 船長が言って来た二日後まで待つ間、マルコとて何もしてなかったわけではない。

 複数で駄目なら一隻だけでどうかなど試したのだが、結果は惨敗。

 何をしようと境界線を越えることが出来なかった。

 その状況は、遠距離通信が出来る魔法使いが逐一本国へ報告している。

 遠距離通信が出来る魔法使いは、数が多くはないが、全くいないわけではない。

 国が大きければ大きいほど抱えている数は多くなる。

 それだけ重要度が高いためだが、その虎の子の魔法使いを派遣していることからも今回の件を重要視していることが分かる。

 その魔法使いを通してきた本国からの指示は、今まで通り続けよ、だった。

 結局マルコと同じ判断になったわけで、それに関しては胸をなでおろしたマルコであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 伝言のあった二日後。

 セントラル大陸側からさらに二隻の商船が来た。

 その内の一隻は、廃船間近の古い船だった。

 かろうじて目視できる位置で、しばらくその二隻が停泊していたが、やがて廃船間近の船を置き去りにしてもう一隻だけがマルコの艦隊に近づいてきた。

 前の商船とは違い、今度は明らかにマルコの艦隊を目当てに来ていることが分かる。

 相手が武装船ではない上に、一隻しかいないので流石にそれだけで何かしてくるとは思えなかったが、それでも警戒するのは当然だ。

 何より、置き去りにしているもう一隻の方も意味が分からない。

 そうこうしているうちに、ある程度の距離まで近づいてきたが、その位置から交信をしてきた。

 向こうの方も不用意に近づけば、危険だという事は分かっているのだろう。

 船同士の交信は、事故が起こらないように、世界共通の物がある。

 その方法を使って交信して来たのだ。

 内容は、船長以下数名を送るので、会談を望む、という物だった。

 マルコはすぐに決断して、了承の意を送った。

 

 相手の商船は、小舟を出してきてマルコのいる旗艦に近づいてきた。

 それがこちらを警戒して戦力を知られないようにするためなのか、こちらを警戒させないためにあえて少人数にしたのかは、判断できなかった。

 とにかく、近づいてきた小舟に乗っていた乗員を、すぐさま旗艦に収容した。

 その小舟に乗っていたのは、全員で五人だった。

 その内の一人は、明らかに船乗りと言うよりは、今回の交渉のための文官という感じだった。

 案の定その文官が、マルコの相手をしてきた。

「初めまして。アマミヤの塔の行政府から参りました。コロラドと申します」

「私は、コラム王国第三艦隊の提督マルコと言う」

 お互いに挨拶を済ませて、さっさと今回の要件を聞くことにした。

「それで、此度の要件は何か?」

 マルコがコロラドをあっさり受け入れたのは、セントラル大陸側が戦端を開くとは考えていないからだ。

 そもそもセントラル大陸には、商船はあっても武装船はない。

 国家と言う物が存在していないセントラル大陸で、そのような物を所持する意味がほとんどないのだ。

 もし戦闘のようなことが起こるとしても陸上に上がってからだとマルコは考えている。

 勿論、この考えはマルコだけではなく、コラム王国の分析でもそうなっていた。

「私の要件は三つです。一つは、これより私が連絡を取ることを許してほしいということ。二つ目は、私が連絡を取った後しばらくは、この艦隊を動かさないこと。三つめは、あの廃船を注目していてほしいという事です」

「それだけか?」

「そうです。それだけです」

「そうすることによる我々のメリットは?」

 わざわざ敵側の要求に応える気はない、という意味を込めて多少の威圧を込めて言った。

 その威圧を受けたコロラドは、表情を変えずにあっさりと言い放った。

「このご自慢の艦隊が沈まなくて済みますね」

 その言葉に、周囲の部下たちがざわりとした。

「我々がたった二隻の商船に、沈められると?」

「ハハハ。いやまさか。あの廃船は正真正銘、ただの廃船ですよ。今は一人も乗っていません。もう一隻もただの商船で戦闘員はモンスター対策の冒険者だけです」

 海にも当然モンスターは出てくる。

 そうしたモンスター対策の要員を乗せるのは、商隊に護衛を雇うのと同じことだ。

 マルコには、コロラドが嘘を言っているようには見えなかった。

 コロラドが乗っていた船もただの商船だという事は理解できる。

 どう見ても戦闘員が乗っているようには見えないのだ。

 勿論船倉などに隠すことなどよくあるので、油断などしないのだが。

 

「・・・連絡と言うのはどこに取るのだ?」

「勿論アマミヤの塔とですが?」

 他にどこがあるという口調でコロラドが言って来た。

「その内容は?」

「準備が出来たことを伝えるためですね」

「準備?」

「あの廃船ですよ。目的の位置に着いたら人を下ろすことになっていますので」

 それが意味が分からない。

 何のためにあの船をここまで持ってきたのか。

 わざわざ自分たちがいるときに持ってきたのだから意味があるのだろう。

「あの廃船を使って何をするつもりだ?」

「さて。私もあまり詳しくは聞いていないんですよ。ただ、塔の力を使って、一発で沈めて見せるそうです。それを見た上で、我々にちょっかいを掛けてくるのなら相応の覚悟をしてほしいとのことです」

「・・・塔の力だと?」

「らしいですね。先ほども言った通り、私も詳しくは知らないんですよ」

 コロラドは、囲まれている状況が分かっているのかいないのか、淡々と話を進めている。

 今のところは完全にコロラドのペースになっている。

「あ、ちなみに、今ここで私に何かをしても意味がありませんよ? ある程度の時間が経てば、私に何かあったと判断して、有無を言わさず実行することになっています」

 マルコは内心で舌打ちをした。

 流石にその辺の対策はしっかりとしているらしい。

 戦闘など素人の文官と思っていたが、流石にそこまで甘くはなかった。

「・・・よかろう。先ほど言った連絡とやらをしてみるといい」


 マルコの返事を聞いたコロラドは、すぐにその場で連絡を取り始めた。

 当然マルコにも会話が聞こえていたのだが、特に不自然な所はなかった。

 単純に準備が出来たので、いつでもいいと連絡しただけだったのだ。

 相手の方もそれを了承して、すぐに通信は打ち切られた。

 マルコは、そのやり取りを見て、どうやって通信を行っているのか興味を覚えた。

 既存の魔道具だと使い捨ての上に、船のように移動する場所では、使えない物しかないはずだった。

 あるいは、魔法使いが直接やり取りをするかしかない。

 だが、マルコが魔法を使っているようには見えず、その道具も使い捨ての様には見えない。

 マルコがその道具について質問しようとしたが、その前にコロラドが廃船の方を指し示した。

「そろそろですので、ちゃんと見ていてください。貴方の部下の命が大切なら」


 コロラドがそう言ってからすぐに、それは起こった。

 最初に気付いたのは、戦闘要員の魔法使いたちだった。

 今まで感じたことのないような強大な力を、廃船の方から感じた。

 それを伝えるよりも先に廃船で、巨大な爆発が起こった。

 かなり離れた位置に廃船はあったのだが、その影響は艦隊まで届いていた。

 爆発の時に生じたと思われる熱風が、わずかではあるが届いたのだ。

 その爆発を見た艦隊の乗員は、しばらく声も出せなかった。

 同じように見ていたマルコも似たり寄ったりの気分だったのだが、艦隊を率いる者としてその驚愕は表に出さないように必死になった。

 この時艦隊にいた者達の誰もが同じように思っただろう。

 もしあの爆発が、この船に向けられたら、と。

 誰もが同じような想像をして、同じような結論になった。

 何の抵抗することも出来ずに、ただ沈められるだけで終わるのだろうと。

ちなみに、結界は最大範囲よりも手前側に設置しています。

今回の爆発をきちんと発動できる場所まで艦隊を引きつけるためです。

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