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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第20章 塔の機能を使ってみよう
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3話 結界の効果

 ヴァーリング海は、セントラル大陸と西大陸の間にある海である。

 セントラル大陸と西大陸の間で一番距離が近いために、昔から海洋交通の要所として多くの船が行き来している。

 セントラル大陸の西の街と、西大陸のコラム王国の都市に行くまでに、全く陸地が存在していない話ではなく、小島が飛び石のように存在している。

 といっても国家を作れるほどの数はなく、また大きさも小島と言った程度の大きさの陸地しかない。

 そのために、小島を中心とした国家も作られることは無く、あくまでも中継地点としてのみ存在しているだけであった。

 西の街とコラム王国の間は、現在の最新の帆船で約二十日程度で航行することが出来る。

 歴史的には、西大陸からセントラル大陸に行く航路を見つけたのだが、その当初は三か月程度はかかっていたので、大きな進歩を遂げていた。

 勿論それには、最短の航路の発見、船舶の技術の進歩、航行魔法の進歩と言った様々な要因が絡んでいる。

 日数にして二十日程度であれば、軍事的にも大きな問題がある距離ではない。

 それでも今までコラム王国が、セントラル大陸を攻めようとしていなかったのは、その戦力を大陸内に向けていたからだ。

 ついでに、大軍を持って攻める国家が無かったというのも理由の一つだ。

 わざわざ軍事的に攻略しなくても、十分なうまみがあったので放置していたのである。

 その他にも、下手にセントラル大陸に手を出せば、同じ大陸内の国家や、他大陸の国家が出てくる可能性があった。

 更には、セントラル大陸はモンスターの宝庫だ。

 国家として維持するには、どうしても見返りが合わない。

 そう言った理由から一都市として存在している西の街と取引をすることで、利益を得ていたのである。

 

 ヴァーリング海のある島の傍に、その船団は停泊していた。

 その船団の中で旗艦に当たる船で、船団長であるマルコは難しい顔をして腕を組んでいた。

 マルコは船団長であると同時に、コラム王国の海軍の一軍を任されている提督でもあった。

 わざわざ提督の一人を遠征に出していることから、コラム王国が今回の件を重要視していることがわかる。

 当然マルコもそれは分かっているのだが、現状それに関しては、思わしくない状況であった。

 マルコの周辺にいる高官たちも同じような表情になっていることからもそれはよくわかる。

 本来であれば、このような場所で停泊する予定は無かったのだ。

 だが、つい先日ここから先に進もうとしたときに、進めていないことに気が付いたのだ。

 正確に言えば、この島から一日ほど先までは航行することが出来る。

 だが、その先にどうやっても進むことが出来ないのだ。

 物理的な壁のような物が、あるわけではない。

 だが、ある程度進むと同じ場所に戻ってきているのだ。

 まるで陸地にある迷いの森のような感じだった。

 急いで乗船している魔法使いたちに確認すると、まさしく迷いの森のような魔法が掛かっているとのことだった。

 その魔法を破ろうにも、とてもではないが無理だという結論が出たのだ。

 

「・・・全く。王から十分注意せよと言われてはいたが、こんなことになるとはな」

 マルコが思わずポツリとそう言ったが、周りの者達も似たり寄ったりの表情になっている。

 長年海の上で過ごして来たマルコにしても初めての経験だった。

 そもそも連れてきている魔法使いたちも多いわけではないので、対処のしようがなかった。

 もっとも人数を連れて来ても破るのは無理だと断言されているので、戻ったところでどうしようもないのだが。

 このまますごすご戻るわけにもいかないので、何としても先に進む方法を見つけなければならなかった。

 このどうしようもない状況で、先に進めず、手ぶらの状態で国に戻るわけにもいかず、何とか対処方法を見つけようとしている状況であった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんな状況に変化があったのは、次の日の事だった。

 見張りが、セントラル大陸側から航行して来た商業船を確認したのだ。

 当然その話は、マルコの元へ伝えられた。

 その話を聞いたマルコは、すぐに決断をした。

 その商業船は、この島を目指していることは分かっている。

 セントラル大陸の西の街からコラム王国に行くには、今船団が停泊している傍にある島は重要な拠点なのだ。

 島に寄ったところで、その船長にでも話を聞いてみようと思ったのだ。

 事が事だけに、自分が船を下りてその島に向かうことにした。

 当然ながら数人の護衛付きではあったが。

 

 狭い島なので、新しい船が来て補給する場合は、前に来た船は補給のための場所を譲るというルールが存在していた。

 そのため、新しくセントラル大陸側から来た商船は、前からいてセントラル側に行けずに立ち往生している船と入れ替わりになった。

 ただ、その辺は商人の顔を持っている船長同士。

 お互いに状況が分かっているので、荷物の交換をして互いに元の大陸に戻るような契約をしたようだった。

 お互いの船の大きさが同規模だったのも幸いだったのだろう。

 元々積んでいた商品を互いに入れ替えて、商談を済ませた手際は見事の一言であった。

 お互いの船長が顔を綻ばせてみると、どちらにとってもいい話だったのだろう。

 二人の船長の顔を見たマルコは、そう結論付けた。

 そのマルコの顔を見た二人の船長の反応は、見事に分かれた。

 一人は顔を引き攣らせて、一人は笑顔を見せたのだ。

 わざわざ確認しなくてもどちらがどちらの側の商人かはわかる。

「商人同士の取引を邪魔するつもりはない。少しそちらの船長と話がしたかっただけだ」

「は、はい。それでは商談も終わっているので、私は退散します」

 顔を引き攣らせた方の船長が、そう言ってすぐにそそくさと立ち去って行った。

 

「私に質問があるのは、これの事でしょう?」

 マルコが質問するまでもなく、その船長は一枚のカードを出して来た。

「話が早くて助かるな。それで、それは?」

「クラウンカードですよ」

 端的に答えた船長に、マルコは顔をしかめた。

 軍人であるマルコは、当然表情を隠すことも出来る。

 その表情はわざと見せたのだ。

「・・・意味が分かっていて言っているのか?」

 現在大陸で勢力を誇っているクラウンが、アマミヤの塔に所属していることは知らない者はいない。

 そして、そのコラム王国が現在、アマミヤの塔といい関係に無いことは、既に噂として広まっていた。

「勿論です。というか、関係者から貴方に見せるように言われてきました」

「・・・何?」

「例え私からこれを奪ったとしても、あの境目を越えることは不可能だそうですよ? なんでも、私の魔力で起動出来るようになっているようでして」

「だとしても、お前ごと連れて行けばいい話ではないのか?」

「それもダメだそうです。あくまでもあの船だけに適用されているようでして・・・何とも不思議な話ですが」

 マルコは、内心で舌打ちをした。

 現状では、目の前の船長の話が本当かどうかの見分けがつかない。

 ただ、心情的には船長の話は本当だと考えていた。

 そうでなければ、わざわざ自分たちが出てきている場所に、商船を送るような真似はしないだろう。

 ついでに言えば、マルコはクラウンカードが個々人の魔力だけで反応することを知っていた。

 当然コラム王国でもその話は伝わっていて、しっかりと研究もされているが、全く原理が分かっていないという事も、だ。

 

 船長をどうすべきか考えあぐねているマルコに対して、自身の状況が分かっているのかいないのか、更にその船長が言葉をつづけた。

「それから、今日から二日後の昼間に、面白い見世物を見せてくれるそうですよ? それまで私の処遇は決めないほうがいいそうです」

 そう言ってくることは、自身がどういう運命にあるのかは十分理解しているようだった。

「・・・そこまで待たなければならない理由は?」

「このまま私だけを連れて国に帰れるんですか?」

「・・・それもアマミヤの塔の入れ知恵か?」

「さて、どうでしょう?」

 笑いながら肩をすくめるという器用な真似を見せた船長に、マルコは取りあえず船長の言葉を受け入れることを決めた。

 セントラル大陸に行くにせよ、王国に戻るにせよ、日程にはまだ余裕がある。

 二日程度は、余裕で待つことが出来る。

 メッセンジャーが持ってきた情報が正しいかどうか、あえて確認するのもいいだろうと思ったのだ。

 だが、この時の決断をマルコは、軍人を引退した後も悩み続けることになるのであった。

ついに結界が実戦で登場しましたw

効果が大きすぎるので、今回活躍して終了しそうです><

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