表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第19章 塔で進化について考えよう
237/1358

(5)各種上位種族

説明回。

 ヒューマンが進化するとハイヒューマンになれるというのは、伝説というより神話の域に達している。

 当然ながらそんな話をまともに信じている者は、ほとんどいない。

 ただ、確かにハイヒューマンという種が、この世界にいたということは、いろいろな痕跡で残されている。

 一番確定的な情報として大きいのは、神殿で引き継がれてきた資料に残っている事だろう。

 その辺では、興隆と滅亡を繰り返している国家よりも信頼度が高いのだ。

 新しい国家が起こった時に、過去の神話を持ち出して正当性を主張することなど、どこの国でも行われている。

 その際に、勝手に神話を作り出すことなどごく普通に行われているのだ。

 そう言う意味では、神殿およびそれを統制している教会というのは、信頼度が高い。

 何しろ神話そのものが、教会の存続している意義そのものなのだから。

 また、教会に都合のいい神話を新たに作成などした場合は、当然のように神からの神罰が下っている。

 国家はともかく、教会においてそう言った不正をすることは神々が許していないので、自然と淘汰されているのだ。

 とはいえ、組織になると腐敗が起こるのも人の世の常なので、たびたび教会が天罰を受けるのもまた人の歴史だったりする。

 そんなわけで、ハイヒューマンに関しては、そこそこ正しいと思われる話が残っているのだが、それでも神話以降ハイヒューマンが確実に存在したという話は残っていない。

 ハイヒューマンの存在が残っているのは、あくまでも神話の中での話である。

 神話以降で語られている英雄たちの中には、あるいはハイヒューマンではないか、と言われている者達もいるのだが、あくまでも憶測で語られているだけだ。

 それに関しては、神々もなぜか口をつぐんでいるので、確認する方法が無いのだ。

 ぶっちゃけると、実際にハイヒューマンだった者はいる。

 だが、神々はあえてヒューマンたちには教えていない。

 ハイヒューマンの子が、必ずハイヒューマンになるわけでもないので、そもそも教える必要がないのだ。

 ハイヒューマンに関しては、このような推測が立てられていて、それに関してはほぼ正解だった。

 これが、他の種族になってくると、一気に信憑性が低くなる。

 かろうじて正しい言い伝えが残っていると言われているのは、比較的早期にヒューマンと交わったドワーフくらいだ。

 あとは、実在が確認できていたハイエルフに関しては、その存在は認められている。

 有史以降もその存在が確認できていたので、これを否定する材料がないためだ。

 というのが、ヒューマンたちの間で語られている上位種族の事情だった。

 

 ナナとワンリをモフリながら、考助はシルヴィアとフローリアからそれらの話を聞いていた。

 別に不真面目な態度で聞いていたわけではなく、逆に雑談程度で語りたかった二人が希望したのだ。

 その二人は、第四十七層の狼達に囲まれている。

 ついでに、その二人だけではなく、他のメンバーもそろっている。

 シュレイン、ピーチ、コレットも同じようにしていたが、中身がドラゴンのはずであるハクまで同じように狼をモフッていた。

 むしろハクはシルヴィア達の話は全く興味がないのか、狼達をモフることに集中していた。

 珍しく全員そろってきているわけだが、現在の管理層にはコウヒが一人で残っている。

「そう言えば、エルフはハイエルフが堕ちた存在という話は、エルフ達の間ではどういわれているの?」

 考助がこう聞いたのは、当然エルフであるコレットだった。

 ちなみに、そんなことを堂々と聞けるのは、そもそもその話を聞いたのが、コレットから聞いたためである。

「うーん。堕ちたというと語弊があるけど、似たような言われ方はしているんじゃないかな?」

「そうなの?」

「うん。そもそもハイエルフと比べて、精霊との結びつきがより離れたのがエルフって言われているから」

 自分達のルーツを負の側面から肯定するのは、珍しいパターンだと思ったのか、シュレインが疑問を口にした。

「自分たちを卑下するとは珍しいの」

「卑下、とは違うと思うわ。精霊たちから距離が離れた代わりに、より物質的な結びつきが強くなって、世界樹をより深く世話を出来るようになったとも言われているから」

 世界樹と言えど、あくまでもこの世界に存在している以上、物質的なつながりは持つしかない。

 そう言った意味では、ハイエルフよりもエルフの方が世界樹との関わりは、強くなっているとも言える。

 エルフの中では、精霊的な繋がりはハイエルフ、物質的な繋がりを持つのはエルフだという自負がある。

「なるほどの」

「そういうヴァンパイアはどうなの?」

 考助の疑問に、シュレインは首を傾げた。

「どうだろうの? 吾等の場合は、全ての吸血一族の祖となった者がいると言われているくらいかの」

「へー。どんなの?」

「真祖とか始祖とか言われておるの」

 ちなみに、真祖ヴァンパイアも始祖ヴァンパイアも、その存在は教会からは否定されている。

 勿論過去の歴史からそうされているのだ。

 実際にいたかどうかは、ヴァンパイアの口伝でも確認はされていない。

 あくまでもそれに近い力を持っていたと語られているくらいだった。

 

 次いで考助の視線はピーチの方へと向いた。

 ピーチもその視線に対して、首を振った。

「言いたいことは分かるけど、サキュバスの上位存在は私にもわかりません~」

「そうなの?」

「そうなんです~。そもそもサキュバス自体が、別の存在から進化した形といわれていますので」

 淫魔だったり淫夢といった存在から進化したのが、サキュバスだと言われている。

 さらにその上の存在というのは、サキュバス一族にも伝わっていない。

 実はピーチのような強者がいるにもかかわらず、サキュバス一族は戦闘ではさほど強くないと言われている。

 これには理由があって、そもそもサキュバス一族は闇に属する仕事をしているため、自分たちの戦闘能力を詳しく喧伝することを抑えていたためだ。

 とはいえ、もしサキュバスの上位存在がいれば、一族の中にそう言った話は伝わっていそうだが、そういった話はピーチも聞いたことが無い。

「なるほどね」

 ピーチの話に、考助も頷いて聞いていた。

 

 そもそもなぜこんな話になっているかというと、シルヴィアにも<進化の萌芽>が出ていることが分かった後で、メンバー全員を調べてみたためだ。

 見事全員が<進化の萌芽>を持っていたのだ。

 そこから進化するとどうなるのだろうという話になり、今のような流れになっていた。

 ついでにナナとワンリも見てみたが、<進化の萌芽>は持っていなかった。

 これが最強クラスの存在になっているためか、もしくは単に条件を満たしていないからなのかは分からない。

 むしろメンバーたち全員が、<進化の萌芽>を持っていたことに対して驚くべきだろう。

 まあそもそも<進化の萌芽>が、本当に進化に関わる物なのかもわかっていないのだが。

 もし進化するとしたらどうなるのか、という疑問から今のような話になっているのだが、結局具体的な方法は分かるはずもなかった。

 そんな簡単に分かるのであれば、今までにも進化している者は出ているだろう。

 残念ながらどの種族も、そう言った具体的な話は残っていないのだ。

 具体的なことが分かれば、この<進化の萌芽>についても分かることがあると思ったのだが、残念ながらそう言うわけにもいかないらしい。

 それぞれの種族の状況が分かっただけでも、皆と話した甲斐があったと思うしかない考助であった。

各種族について、でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ