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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第19章 塔で進化について考えよう
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(2)<進化の萌芽>

 アマミヤの塔にいる全ての眷属を確認したところ、<進化の萌芽>が確認できる者達はほとんどいなかった。

 とはいえ、全くいなかったわけではないので、それらの眷属を一体一体確認してみると、次のようなことが分かった。


 1、種族問わず表示される。

 2、一度でも進化している個体しか表示されない。

 3、魂の器の拡大しか今のところ確認できない。

 

 1に関してはそのままで、黒狼だけしか表示されないわけではなく、他の種族でも表示する個体がいた。

 ただし、次の2に関わってくるのだが、どういうわけだが一度でも進化がされている個体しか表示されていなかった。

 下位種から中位種に進化するときには表示されないようなので、この<進化の萌芽>に関しては、中位種にしか表示されない物なのかもしれない。

 最後の魂の器の拡大しか表示されないのは、考助の右目の能力が足りていない為に他の物が見えないのか、そもそも他にないのかは分からない。

 結局のところよくわからないという結論になってしまった。

 さんざん悩んだ考助は、どうせ魂に関わる内容は普通に調べても答えなどでないだろうと、諦めることにした。

 一応、塔のメンバーにも確認を取ったのだが、分かる者は誰もいなかった。

 諦めることにした考助は、伝家の宝刀を抜くことにした。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

『というわけで、教えてください』

『いきなりですね』

 聞くことにした相手は、エリスだった。

『ですが、答えたいのはやまやまですが、私にもわかりません』

『えっ!? そうなの?』

 てっきりすぐ答えが返ってくると思っていた考助は、本気で驚いた。

『そうです。以前にも話したと思いますが、私とて万能ではありませんよ?』

『ああ、いや、それは分かってたけど、この世界の進化に関わる話だから分かるかと思っていたよ』

『ああ、なるほど。ですが、そもそも進化に関しては、私達神々も完全に制御しているわけではありませんので、答えられることは少ないのです』

 進化に関わる話は、魂にも深く触れることになる。

 魂に関しては、管理はしているが、新たに創ったり自由に変質させたりなどは、例え神々と言えど出来ないのである。

『あれ? でもハクを生み出したときは?』

『あれは、あの方のお力のおかげです』

『あ、そういうことか。要するに彼女に聞かないと分からない?』

『そういうことになります』

『なるほどね。じゃあ、アスラに聞いてみるよ』

『あっ・・・』

『ん? どうかした?』

 交神を切ろうとした考助に、エリスが一瞬呼び止めたので、考助は聞き返した。

『い、いえ。なんでもありません。ただ、今アスラ様は忙しいようですよ?』

『そうか。ありがとう。時間を空けて聞いてみるよ』

 エリスの忠告に考助は礼を言い、今度こそ交神を切った。

 交神を切られたエリスは、考助から聞いた話を反芻した。

「そもそも進化に関わる内容が目視できるようになったという事が、どれほどの事か理解できて・・・いるわけないですよね」

 エリスのその呟きは、非常に小さかったので、たまたま傍にいたスピカにも届かなかった。

 ただ単に考助との交神を終えたエリスが、大きくため息を吐いたのを見て、首を傾げるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アスラに確認する前に、他の細々とした用事を済ませていると、いきなりアスラから交神してきた。

 向こうから交神されるのは初めてだったので、かなり驚いた。

『え!? な、何?』

『クスクス。そこまで驚かなくてもいいじゃない?』

『いや、出来るなんて思ってなかったから驚くって』

 不思議なことだが、初めて交神を受けたというのに、交神してきた相手が誰だかはすぐに分かった。

 交神というのはそう言う物だと言われて、納得するしかない考助だった。

『それにしてもいつの間に交神を受けれるようになったんだ?』

『以前から出来ていたんだけど、特に用事が無かったじゃない?』

『ああ、そういう事』

 現状、考助へと交神が出来るのは、アスラとシルヴィアだけである。

 あとは、ピーチがあと一歩と言ったところだが、残念ながら道具の補助があっても厳しい。

 ちなみにシルヴィアが交神できるのは、勿論考助の巫女となってるためだ。

 そのシルヴィアは、管理層でほとんど一緒に生活をしているので、特に交神をする必然性が無いのだ。

 アスラにしてもわざわざ交神してまで話をすることもないので、今まで使うことが無かったのだ。

 勿論、そうそう簡単にアスラが出張ったりすると、世界に影響を与えかねないので、自粛していた所もある。

 今回は、考助から用事があるとエリスから聞いていたので、大手を振って交神することにしたのだ。


『それで、エリスから話を聞いたけどね』

『あ、そうなんだ。それで何かわかった?』

『うーん。それが、微妙なのよね』

 歯切れの悪いアスラの回答に、考助は内心で首を傾げた。

『どういう事?』

『進化に関しては、勿論わかることもあるけれど、考助のその能力に関しては、正確なことは分からないわ』

 左目のステータス表示しかり、今回の右目の能力も考助独自の権能になる。

 しかも今回に関しては、世界記録ワールドレコードが直接かかわっているので、アスラにも未知数の力だったりするのだ。

『そういうことか・・・でも、分かることもあるんだよね?』

『勿論。といってもそれが正解かは分からないけれどね』

『それでもいいよ。今のままだと手探りも出来ていない状態だから』

 少しでも分かることがあれば、聞いておきたい。

『そもそも進化って、ある条件が揃わないと起こらないというのは分かるわよね?』

『まあ散々この塔で見て来たからね』

 眷属たちで散々見てきている。

 といってもこれが完全な条件だという物は見つけていない。

 ほとんど偶然に頼っているのが現状だ。

『それが正解なのよ。そもそも絶対に進化するという条件なんてないのよ』

『? 矛盾してない? ・・・あ、いや、そういうことか』

 アスラが言いたいことは、例え進化の条件が揃っていても、進化する個体と進化しない個体があるという事だ。

 なぜその二つに分かれるのかというのは、アスラにも分からない。

 そういう時に使える便利な言葉がある。

 それは、偶然、という言葉だ。

『ここからは推測なんだけどね』

 と、珍しく前置きをしたうえで、アスラが言葉を続けた。

『考助の今回の力は、その差を埋める物だと思わない?』


 そのアスラの推測を聞いた考助は、たっぷり十秒は沈黙した。

『いやいや、ちょっと待って。それってホントに?』

 本当だとすると、とんでもない力とも言える。

 何しろ今まで進化できていなかった個体が、進化できるようになる可能性も秘めているという事になるのだ。

『・・・だったらいいなー、っていう希望も入っています』

 その返事に、考助はカクリと肩を落とした。

『で、結局のところ魂の器の拡大って何のことかわかる?』

 将来の話はともかくとして、今の見えている者から解決しないことには、今後のことも分からない。

 取りあえず目先の問題を解決することにした。

『それがねえ。普通だと魂の器って肉体の事を指しているんだけどね。どうも考助が見えてるそれは違うものを指していると思うのよね』

 要するにアスラもきっちりとした答えは持っていないという事だ。

『いや。待って魂の器が肉体だとしたら、身体を何か変化させればいいという事にならないかな?』

 考助が考えているのは、物理的な大きさや性質の変化ではなく、内面すなわちスキルと言ったものを指している。

 まさしくそのスキルが、進化の条件に関わっているのだから、その推測は間違っていないはずだ。

『そうなんだけど、それだと結局のところ今まで考助がそこでやってきたことと何が違っているの?』

『・・・・・・あ』

 アスラの突込みに、全く以てその通りだと気づいた考助が、呆然とした。

 折角アスラからいいヒントをもらったのに、結局のところ振出しに戻ってしまうのであった。

ちなみに、アースガルドには進化を司っている神はいません。

あくまで新しい種が出てきた場合の登録だったり、進化の過程を見守ったりして管理しているくらいです。

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