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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第18章 塔と新たな力
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(5)ピーチの占い

 考助の前で、ピーチが真剣な表情をしてテーブルの上を見ていた。

 そのテーブルの上には、カードが数枚置かれている。

 占いには疎い考助でも知っている方法であるカード占いだ。

 その占いをしている本人であるピーチの表情は硬い。

 占いには詳しくない考助でさえ、これは上手くいかないと分かるくらい緊張している感じが伝わっていた。

 つい我慢できなくて声を掛けてしまった。

「えーと、ピーチ? そんなに緊張してたら、当たる物も当たらなくなると思うけど?」

「む、無理です~」

 いっぱいいっぱいです、と言った感じのピーチの返事に、考助は傍で見ていたシルヴィアの方を見た。

 そのシルヴィアも困惑といった表情を浮かべている。

 たまにだが、考助を除くメンバーたちは、ピーチに占いをしてもらうことがあった。

 流石にサキュバス一族の出らしく、よく当たると評判だったりするのだ。

 その時のピーチと今のピーチは、まったく様子が違っている。

「ピーチ、そこまで緊張しなくてもいいのでは?」

「こ、コースケさんからの威圧が高くて、無理です~」

「い、威圧・・・!?」

 全く無自覚だった考助が、首を傾げた。

 ついでに、シルヴィアも同じように不思議な表情をしていた。

 すぐそばにいるシルヴィアもそんな物は感じていないからだ。

「いざ、占おうとすると、コースケさんからこう、圧力みたいなのを感じて・・・」

 そう説明しているピーチも、自身が感じている感覚を上手く表現できないようだった。

 それを聞いたシルヴィアは、以前自分も同じようなことを感じたのを思い出した。

 それがいつかだったかというと、初めて考助から神託を受けた時のことだ。

「ピーチ、それはコウスケ様の現人神としての神力ですわ。抗おうとしないで受け入れてください。巫女として修行されたなら出来るはずです」

 正確には、考助に認められている必要もあるのだが、それに関しては特に説明は必要がないと感じて省いた。

「受け入れる、ですか~。・・・・・・あ」

 シルヴィアの言葉を聞いたピーチが、じっと目を閉じてからすぐに、ため息のような声が漏れた。

 次いで目を開いた後のピーチは、先ほどまでの緊張は取れていた。

 そうしてジッとテーブルの上に置かれたカードを見つめた。

 

 ピーチがカードから読み取ることができたのは、具体的な内容ではなく先を示すような物だった。

「新しく力を得るのではなく、元の力が伸びるとか発展するように見えます~」

「元の力? ステータス表示の事?」

「う~ん。そこがいまいちはっきりしないんですよね~。外れてはいないけれど、もっと根本の力のような感じで」

 ピーチも答えを出しながら首を傾げていた。

「もっと根本の力ねえ」

 言われた考助も首を傾げていた。

 助け舟を出したのは、横で聞いていたコウヒだった。

「<神の左目>のことでは?」

「あ! ああ、そうか。そういう事か」

 そもそもステータス表示は<神の左目>の力を使って発現している力だ。

 だが、ステータス表示=<神の左目>というわけではない。

 <神の左目>で得た情報を、分かり易く表示しているのが、ステータス表示だと考助は考えていた。

 それは、初めて<神の左目>の力をこの世界で発現した時の経験に基づいている。

「という事は、ステータス表示以外にも何か見れるようになるのかな?」

 これにはピーチも首を傾げた。

「うーん、どうなんでしょう~? そこはよくわかりませんねえ」

「そっか。それは残念」

 ピーチの曖昧な回答に、考助も特に深く突っ込まずにやめておいた。

 変に情報を与えても駄目だと思ったからだ。

 

「他には何かわかりましたか?」

 首を傾げているピーチに、シルヴィアが先を促した。

「そうですね~。それが出来るようになるのは、もう少し先の事で、今すぐには無理みたいです。まだ条件があると出ていますね」

「条件、ね」

 それが何かは具体的には聞かない。

 ピーチの答えから、そんなことまで出ている様子には見えなかったからだ。

 案の定、ピーチもそう答えを返して来た。

「すみません~。その条件が何であるかまではわかりませんでした。ただ、その条件を得るのも、そう遠くない将来らしいです」

「へえ。遠くない将来ね」

 何とも占いらしい回答に、考助は頷きを返した。

「近いうちに、何か変わったことをする予定はありませんでしたか?」

 ピーチからの唐突な質問に、考助は面をくらったような表情になった。

「へ? いや特には何もないはずだけど?」

「そうですか~。その時に何かがあると出ているんですが」

 ピーチと二人で首を傾げるが、変わったことというのが何かまるで分らない。

 そんな考助に、再びコウヒが助け舟を出した。

「確か、そろそろ神域に行くはずでは?」

 神域へ定期的に顔を出すことを約束していたのだが、その時期がそろそろやってくる。

 考助にしてみれば、既に三度目の訪問になるので、変わったことという意識が無かった。

 だが、一般的に考えれば、どう考えても神域訪問は、十分に変わったことと言える。

「もう行くんですか~。では、それの事ですね」

 コウヒの言葉に、ピーチも頷いた。

 ピーチは、考助が定期的に神域に行くことになっていたことは知っていたが、いつ行くことになることまでは知らなかった。

 ピーチの感覚からすれば、前回訪問からまださほど間が空いていないので、まだ先の話だと思っていたのだ。

 

「それで? コウスケ様は、そこで新しい力を得られるのですか?」

 シルヴィアの質問に、ピーチは首を振った。

「いきなり得るわけではなく、一歩進むとかヒントを得るとか、そんな感じですね~」

「きっかけを得る感じですか?」

「そうそう、そんな感じです~。それまでは、特に大きな前進も無いようです」

 前進も何も、雲をつかむような事なので、占いというものに頼っているのだからそれはしょうがないだろう。

 むしろ、先程の様な具体的な話が出て来ただけでも上出来だった。

 もっとも、本当に神域に行くことが先に進むことになるかどうかは、わかっていないのだが。

「うーん。まあ、分かったような、分かっていないような。取りあえず、次神域に行ってみた時に、何かあるという事かな?」

「そうなりますね~」

 考助が神域に行くたびに、といっても送還ではまだ二回しか行っていないのだが、何かしらの事を起こして帰ってくるので、今回は出来れば何も起きなければと思っていたのだが、そうはいかないらしい。

 今回くらいは、女神様と触れ合うくらいだけで終わるかな、と考えていた考助は、思わずため息を吐くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「占ってみてどうでしたか?」

 考助と別れた後、シルヴィアがピーチにそう聞いてきた。

「出来ればもうやりたくないです~」

 ピーチはそう言って、ぐったりとした様子を見せた。

「大丈夫ですわ。何度もやっていくうちに、そのうち慣れていきます。そもそも占いを出来ただけでも十分資格があるという事ですわ」

 現人神である考助を、通常の占い師が占えるはずがない。

 本来は、神である考助を占うことが出来るなど、同じ神でしかできない。

 もし出来る者がいるとすれば、今回のピーチのように考助に認められた者だけだなのだ。

「また占う事あるんですかね~?」

「さあ、どうでしょう? それこそ神のみぞ知る、と言ったところではないですか?」

 シルヴィアの答えに、二人はそろって笑うのであった。

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