挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第17章 塔と代弁者と愚か者たち

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

219/1301

閑話 助けて天女様!

「ひ~ん」
 [常春の庭]のほぼ中央に位置するアスラの屋敷に、情けのない声が響いた。
 その声の主は現在、書類の山に埋もれている。
 処理をしても全く減らないどころか、増えていく一方のその書類に、その声の主はついに泣き言を漏らした。
「ね、姉様!! 無理! これ絶対、無理! 一人じゃ絶対処理できない!」
 そう悲鳴を漏らしたのは、ジャルだった。
 考助と繋がりを持ちたい女神達からの申請書類は、減るどころか増える一方でついにジャルの処理能力を超えてしまっていた。
 決してジャルがサボっているせいではないことは、積まれた書類の山を見れば、一目瞭然だ。
 その山に囲まれているジャルを見て、助けを求められたエリスはため息を吐いた。
「それは見ればわかりますが・・・。なぜ一人で処理しているのです?」
「・・・・・・・・・・・・へ?」
 エリスの素朴な疑問に、ジャルは思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
「部下なり何なりを使って、ある程度までは処理させればいいのではありませんか?」
 それを聞いたジャルは、茫然自失と言った感じになっていた。
「・・・お、思いつかなかった。そ、それじゃあ、今までの苦労は・・・?」
「まあ、自業自得という事でしょうか?」
 エリスの容赦のない言葉を聞いたジャルは、燃え尽きたように机に突っ伏してしまった。
「・・・姉様の意地悪」
 エリスの事だから、最初から処理が間に合わなくなることはわかっていただろう。
 という事は、当然部下を使えばいいという解決方法も知っていたという事になる。
 ちなみに、彼女たちのルールでは、部下なり手下を使うことは一般的ではない。
 あくまでも自分の仕事の範囲は、自分で処理するのが普通だったりする。
 とはいえ、今回のようなことの為にも何事も例外はあるのだ。
「最初から聞いてくれれば、きちんと教えましたよ? とは言え、普通は貴方も知っておくべきことだと思うのですが?」
「あはははははは・・・・・・・」
 笑って誤魔化したジャルに、エリスはため息を吐いた。
 エリスやジャルは、アースガルドの世界において三大神に数えられる神々である。
 当然それに伴う仕事も多くある。
 エリスなどは、普通に一人でそれらの仕事をこなせば、当然手が回らなくなる状態なので、何人かの部下的な立場の者達を使っていた。
 ただしエリスの場合は、アースガルドで起こった問題に対して、各女神達に処理を任せるのも仕事のうちの一つだったりするのだが。
 同じ三大神の立場にあるジャルも、当然そういった立場の者達を使うことは出来るはずなのだが、今までそんな者達を使った覚えがないジャルは、すっかり失念していたのだった。
 エリスに言わせれば、部下を使わずに仕事の処理をきっちりとしていたジャルは、それはそれですごいと考えている。
 残念ながら調子に乗るのが目に見えているので、言葉にはするつもりはない。
 ちなみにジャルが考助と交神しているときに毎回のようにエリスに怒られているのは、やるべき仕事・・・・・・を一時的に放り出して交神したりしているからである。
 いっそのこと交神を禁止しようとしても、やるべき仕事はきっちり終わらせているので、それも出来ないでいた。
 交神に関しては、自分も他人ひとのことはあまり強く言えないというのも理由の一つとしてあるのだ。

 そんな余談はともかくとして、考助の発言が発端となって増えた今回の事務処理のために、ジャルは初めての部下を募集することになった。
 募集を掛けたところ予想をはるかに超える応募人数が集まった。
 理由は簡単なことで、ジャルに近づけば次に考助が来た時に、お近づきになれるチャンスが増えるという下心満載の理由だった。
 別に募集に際してそれを条件に付けたわけではないのだが、勝手にそう言った推測が広まった結果集まってしまったのだ。
 その推測をあえて訂正しなかったというのも広がるのに拍車をかけた。
 ジャルとしても別に間違ってはいないので、あえて訂正しなかった。
 実際次に考助が来た時には、きちんと部下として紹介するつもりなので、嘘というわけでもない。
 面接その他でいろいろあったが、それでも何とか二人の部下に絞ることが出来た。
 二人にやってもらうことは既に決まっている。
 多すぎる書類の振り分けをやってもらうのだ。
 そもそも書類の不備が多すぎて、許可される書類がほとんどない状態なのだ。
 単純な記入漏れだったり誤記があるような書類をはじいてもらう。
 結果は大成功。
 溜まりに溜まっていた書類は、数日で処理された。
 あとは、普通に届けられる書類を処理するだけになったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「むっふっふー」
 ここ数日の書類仕事から解放されてご機嫌なジャル。
 別にジャルが処理すべき書類がなくなったわけではない。
 書類不備の分を除くだけで格段にジャルが担当する分が減ったため空き時間が出来るようになったのだ。
「ジャル様」
「ワキャッ・・・!? な、何? 今日の分は終わったはず・・・」
 突然現れたミールに、ついエリスと同じような対応をしてしまう。
 ミールは先日の募集で見事合格を果たした二人のうちの一人だ。
 ちなみにもう一人はヘレンという。
 二人ともエリスのお眼鏡に叶って合格したわけだが、事務手続きに素晴らしい程の手腕を発揮している。
 初めてやる仕事のはずなのに、この数日で見事に書類の山を片づけてしまった。
 ・・・のだが。
「終わっていたのですが、追加で書類が来たので、その分の処理もお願いします」
 ミールの言葉に、顔を引きつらせるジャル。
「つ・・・追加って?」
「私達が加わったことで、今まで遠慮していた者達からも書類が送られてくるようになったようです」
 さらりと言われた言葉に、ジャルが撃沈した。
「え、遠慮って・・・」
「私のような所にも以前の状況は伝わっていましたから、様々な方面で遠慮されていたようです」
「あ、あれで、遠慮されてたの・・・!?」
「そのようです」
 さらりと告げてくるミールに、ジャルは恨めし気な視線を送った。
「そのように睨まれても書類は減りません。作業をお願いします」
 ミールから最終通告を受けて、ドナドナのように連行されていくジャルであった。

 ミールの言う通り、確かに処理すべき書類が大量に増えていた。
 だが、書類が増えたからと言って、合格基準に達する物が増えたわけではない。
 それどころか合格する書類は減っていた。
「あーもー。ぎりぎり基準に満たなくて不合格になるならともかく、明らかに足りてないのに出してくるのは止めてほしいわ」
「ここに日々大量の書類が届いていることは、皆に知られていますから、まかり間違って通ることを期待されているようですね」
 ジャルの愚痴にそう答えたのは、ヘレンである。
 そのヘレンの言う通り、ミスを期待して書類を出している者もかなりの数がいたりするのだ。
「へっ!? そうなの?」
「みたいですよ」
「えー? なにそれ? たとえここで書類が通ったとしても、実際に称号に付かないと意味ないのにねー」
 そのジャルの言葉に、二人の顔色が変わった。
「「付かないんですか!?」」
「あれ? 知らなかったの? 書類審査はやたらと神の力を使わせないようにするためなんだよね」
 そもそも昔は書類審査など無かった。
 初めから失敗すると分かっている神の力を使わせないようにするために、間に書類審査を挟むことにしたのだ。
「それを早く知っていれば・・・」
「通達してきます」
 のほほんとそれらの事を話して来たジャルに対して、部下二人が慌ただしく動き出した。
 実は書類審査のことは、古くから存在している神はともかくとして、新しい神は知らなかったりする。
 だからこそこのような事態になっているのだが、そもそも三大神であるジャルには、それが分かっていなかったのだ。
 書類審査が通ったとしても、実際に神の力が発揮されなければ意味がない。
 それが分かっていれば、そもそもこんな無駄な書類が増えることはなかったのだ。

 その日付で出された通達により、書類が大幅に減ったのは、どちらにとってもいい結果になるのであった。
 結果として空き時間が出来ることになり、ホクホク顔のジャルが目撃されるようになったのだが、
「ちょうどよかったです、ジャル。時間が空いているようですね」
「ワキャッ・・・!? ね、姉様!?」
 以前と同じような光景が繰り広げられるのは、変わらないのであった。
ジ「さ、最後のくだり必要だった?」
作「す、すみません。つい。何となく書かないと落ち着かなくて」
ジ「・・・・・・ぐすん><」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ