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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 塔の運営を開始しよう
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(9)ハイエルフ

本日2話目になります。読み飛ばしにご注意ください。

 第五層から戻ってきてお昼のご飯を食べた後は、まずはコウヒの召喚ということになった。

 ミツキの召喚は、夜の時間のほうがいいということで、夕食後に実行することになっている。

 これから召喚を行うコウヒだが、現在第七十三層へ出払っている。

 召喚を行う準備をするということだ。

 ワーヒド達を召喚した方法とは別の方法を用いて呼び出しを行うということで、それには準備が必要とのことだった。

 ワーヒド達もコウヒやミツキには敵わないが、この世界のレベルからしたらかなりの強者である。


(その六人よりも手間をかけて呼び出す存在って、どんな存在?)


 そう思った考助は、ミツキに聞いてみると、至ってシンプルな答えが返ってきた。

「あら、それは誤解よ」

「誤解? ・・・どういうこと?」

「あの六人を呼び出すのに、手間がかかっていないというのが、そもそも召喚のレベルが高いせいだからで、普通はもっと手間暇をかけて呼び出すものよ。

 まあ、あの六人を呼び出すレベルの召喚士が、いるかどうかも分からないけれど」

「・・・それで?」

「あの六人を呼び出したときは大雑把な条件設定で済んだけれど、今回は細かい指定が必要になるから、多少手間暇がかかるということね」

「・・・というと?」

「今回必要なのは、城と樹の管理に必要な人材よね? 城の方はともかく世界樹はね・・・どう考えてもその道のエキスパートが必要になるから、それを特定して呼び出さないと樹自体が駄目になってしまうわ。

 だから、たとえ手間がかかってもその人材を呼び出したい、ということよ」

「・・・なるほどね。ミツキは、その人材に心当たりはあるの?」

「大体は見当がついてるわ。それに、考助様も思い当たりはあるのでしょう?」

 そう言われた考助は、ファンタジー定番のある存在を思い浮かべた。

「あるけど・・・この世界に亜人がいるのは知ってたけど、あれがいるとまでは知らなかった」

「そういえば、リュウセンでは会わなかったわね。まあ、あれというのが合ってるかは、コウヒの召喚が終わるまで楽しみにしていた方がいいわ。ここで私が言っちゃうと、コウヒが拗ねるし」

 コウヒが拗ねる姿を想像して、考助は思わず笑ってしまった。

「そうするよ。・・・それで? ミツキの方は?」

「それも秘密ということで。私の場合は、城だからそこまでこだわらなくてもいいんだけど、せっかくだから、ね」

 ミツキはそう言って、ニコッと笑った。

 何となくその笑顔に見惚れて誤魔化された気がしなくもないが、無理に聞くつもりもない。


 そんなことをミツキと話している間に、コウヒが戻ってきた。

「お待たせしました。準備ができました」

「わかった。じゃあ行こうか。・・・っと、その前に、樹は先に設置したほうがいい?」

「・・・そうですね。先にお願いします」

「了解。ちょっと待ってね・・・。・・・・・・よし。これで、大丈夫」

「では、行きましょう」

 コウヒがそう言ってから、三人は第七十三層へ向かった。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 第七十三層の中央に世界樹の苗木を設置して、その場所へと向かった三人だが・・・。

「・・・これが苗木?」

 苗木というから、小さい枝のようなものを植えたつもりだった考助は、呆然としてその苗木を見つめていた。

 苗木のはずなのに、周りの木々とほとんど背丈が変わらないのだ。

 確かに太さはほかの木々に比べて細いのだが、これを苗木と言われても、考助の感覚では、なかなか納得しがたい。

「そうです。世界樹は、元は木とはいえ他の木々とは格が違います。これが成長すれば、周りの木とは比べ物にならないくらいの大きさになりますよ?」

「比べ物にならないって・・・どれくらい?」

「ざっと百メートルほどでしょうか」

「・・・ひゃく!?」

 とんでもない大きさである。

「ちゃんとした成木になると世界を支える、とさえ言われる神木ですから」

「・・・・・・へぇー」

 とりあえず、普通の木と違った存在だということは、よく理解できた考助だった。


 準備に時間がかかったが、召喚自体はすぐ終わってしまうようで、数秒ほど召喚陣が光った後に一人の男性が召喚されていた。

 予想通りというか何というか、その耳は細長く先が尖っていた。

「・・・やっぱりエルフ?」

「そうね。正確にはハイエルフだけれどね」

 召喚から少し離れた場所に立っていた考助は、隣にいたミツキに確認した。

 「ハイ」がついていたが、ファンタジー定番エルフの登場だ。

 ご多分に洩れず、非常に美形だった。

 その美形なハイエルフは、召喚者であるコウヒと会話を行っていた。

「あなたが私を深い眠りから呼んだ者か?」

「そうです。私はコウヒと申します。あなたにやってほしいことがありまして、お呼びしました」

「・・・残念だが、私はもう・・・・・・!!!?」

 断りの言葉を口にしかけたそのハイエルフは、コウヒが指示した方を見て驚き、言葉を止めた。

「・・・まさか、あれは・・・!?」

「そうです。世界樹の苗木です。あなたに、あれを管理してほしくて呼び出しました」

「・・・そういう事でしたら、是非ともこちらからお願いしたい。・・・しかし・・・どこからあれを?」

「そういう話は後にしましょう。今はまず、私の主様を紹介します」

「・・・主?」

 コウヒは、戸惑うハイエルフをよそにスタスタと考助の方へ近づいて行った。

 慌ててその後を追いかけるハイエルフ。

 考助の前まできたコウヒは、考助の紹介を行った。

「この方が、私の主様である考助様です」

「・・・初めまして、ハイエルフのリストンです。よろしくお願いします」

「どうも、初めまして考助です。こっちがミツキ。一応管理長なんてやってますが、そんなに固くならなくてもいいですよ。

 基本的にここのことはコウヒに任せるんで、これからはコウヒの指示に従ってください」

「・・・かしこまりました」

 コウヒから主であると紹介された考助に、戸惑いつつも無難に挨拶を交わしたリストン。

 そんな様子に気づいているのかいないのか、考助は軽くコウヒに話しかける。

「じゃあ、とりあえず僕らはもう戻っていいかな?」

「はい。大丈夫です。あとは私の方から話しておきます」

「了解。じゃあね」

 考助は、そう一言言い置いて、ミツキと共に管理層へ戻って行った。


 残されたリストンが、コウヒへと問いかけてきた。

「あのヒューマンが、あなたの主・・・ですか?」

「・・・そうですが、何か?」

「・・・正直に申し上げれば、あなたほどの方が、仕えるような存在には見えませんでしたが?」

 リストンのその言葉に、コウヒはクスクスと笑って言った。

「それは、あなたが自分の目は節穴だと宣言するということですか?」

「・・・どういうことでしょう?」

「そのままの意味です」

「・・・理解できません。どう見ても、あのヒューマンに、あなたがっ・・・!?」

「黙りなさい」

 コウヒの発したたった一言に、リストンは言葉を噤まされた。

 そしてコウヒから感じるプレッシャーに、身体が震え思わず跪づいた。

 エルフは総じてプライドが高い、と言われている。まして、その頂点に存在するといわれるハイエルフなら、なおのこと。自ら膝を屈するなど、本来ならばありえないことだ。

 そのハイエルフであるリストンが、ただのプレッシャーだけで、膝を屈し頭を下げさせられたのだ。

 否が応でも、自分では敵わない、明らかに格が上の存在であると本能から教え込まれ、自分の言葉が彼女の逆鱗に触れたのだと理解させられた。

「・・・一度目は許しますが、二度目は許しません」

「・・・・・・申し訳ございませんでした」

 俯きながら、やっとの思いで言葉を絞り出した。

「あなたが今、主様のことが理解できないのというのであれば、時間をかけて理解していきなさい。それでもなお理解できないというのなら、あなたがそれだけの存在だということ」

「・・・・・・畏まりました」

 その返事を聞いて、やっとコウヒからプレッシャーが消え去った。

 リストンはそのプレッシャーから解放されて、ようやく全身に入っていた力を抜いた。

「一つ忠告・・・いえこれはどちらかというと助言でしょうか・・・してあげます」

「・・・・・・なんでしょう?」

「もしミツキの前で同じことをしていたら、あなた、今頃魂すら存在できなくなっていましたよ?」

「・・・・・・」

「理解できてないようだから教えますが、ミツキは私が唯一認める私と同等の存在ですよ?」

「・・・ご忠告、感謝いたします」

 リストンは跪いたまま再度頭を下げた。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 管理層に戻ってきたミツキが、考助へ腕を絡めながら聞いてきた。

「あれで、よかったの?」

「何が?」

「クスクス・・・わかってるのに聞く?」

 楽しそうに笑うミツキに、考助は肩をすくめた。

 ミツキの目が笑ってないのもきちんと気づいている。

「まあ・・・あれだけあからさまだったら、さすがにね」

 考助から見てもあからさまに、リストンは考助を見下していた。

「そうよねぇ」

「それで、あれでよかったかどうかだけど、よかったと思うよ?」

「ふむ・・・その心は?」

「だって、あれ以上あそこにいたらミツキが我慢できなかったでしょう?」

 言われたミツキは、ぺろりと舌を出した。

「それは、そう、かな?」

「だから、後はもうコウヒに任せて逃げることにした」

「ふーん・・・。まあ、考助様がそれでいいんだったら、私もそれでいいわ」

「ありが・・・んぐっ」

 いきなり唇を塞がれた。

「お礼を言うのは、こっちの方よ。ありがとう」

「・・・どういたしまして」


 その後のミツキは、非常に機嫌よく次に自分が行う召喚の準備に取り掛かっていたと、後に考助がコウヒに語ったのであった。

ちなみにこの話は、難産でした。

コウヒとリストンのやり取りを入れるかどうか、最後の最後まで迷いました。


次話翌日20時投稿予定


2014/5/11 誤字修正

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