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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第16章 塔とゴーレム
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閑話 切実な問題2(前編)

前章の閑話「切実な問題」の続きの話になります。

 ピーチがシュミットの元を訪れていた。

 普通ピーチほどの美貌の主が一人で歩いていれば、相応の視線を受けるはずなのだが、全くと言っていいほど視線を受けない。

 塔のメンバーの中で、隠れて行動するには、ピーチが一番なのだ。

 今回の事に関しては、あまり表だって動きたくないためにピーチが来ることになったのだ。

「おや。ピーチさんでしたか。珍しいですね」

 その辺の事情には気づいていないシュミットが、ピーチを見てそう言った。

 今回の品の注文を受けて、実際に物が届いたために連絡をしたのだが、その時には誰が来るのかまでは聞いていなかったのだ。

「そうですね~。まあこちらにも色々な事情がありまして」

「そうですか。それで、こちらが注文の品です」

 シュミットがそう言って示した先には、二十冊を超える本が積み上げられていた。

「これはまた多いですね~」

 一つのテーマで一人の人間が出版した本としては、間違いなくトップクラスに入るだろう。

「私も届いてから驚きました。それで、これを発注した理由は聞いてもいいのですかな?」

「私が言わなくても察していると思いますが~?」

「・・・そうですか。色々大変ですね」

「今はいいですが、後々の事を考えると、ですね~」

「まあ、そうでしょうね。・・・っと、大丈夫ですか? かなりの重さになりますが」

 ピーチが、目の前の本を一気に抱えて持って行こうとしたために、シュミットが慌てた。

 持てなくはないだろうが、完全に前の前が見えなくなってしまうので、非常に危ない。

 そんなことを思って声を掛けたが、目の前の本の山がピーチが持ち上げたと思った瞬間に消えたのを見て、すぐに事情を察した。

「アイテムボックスの呪文を使えたのですか」

「私は使えないですね~。使えるのはこれです」

 ピーチがそう言って腕輪を指し示した。

「ま、まさか、アイテムボックスの魔道具ですか?」

「そうですね~。イスナーニが作ってくれました」

 それを聞いたシュミットが、ごくりと喉を鳴らした。

「量産出来たりは・・・」

「無理、だそうですよ~。何でも材料にドラゴンの表皮を使っているとか」

 シュミットの表情が、期待から一転、絶望へと変わった。

 ドラゴンの素材などそうそう手に入らない。

 以前クラウンの立ち上げ時に、数体分出しているのだが、あんなものは例外中の例外と分かっている。

 勿論シュミットは、考助がその気になればドラゴンの素材でもすぐに集める事が出来るのは分かっているが、頼ることはしない。

 ある程度の量を用意できるのならともかく、世界で数えるほどしかないアイテムなど持っていても、争いのネタにしかならないことを分かっているのだ。

「そうですか。それは残念です」

 商人であるシュミットとしては是非とも量産化してほしいアイテムだったが、無理な物はしょうがない。

「あ、でも別の物で代用できないかは、検討しているって言ってましたね~」

「それは是非とも頑張ってもらいたいですね」

「何だかんだで、イスナーニも忙しいから、まだ先のことになるでしょうけどね~」

「気長に待つことにしますよ。・・・っと、引き留めてすみませんでした」

「いえいえ~。こちらこそ時間を作ってもらってありがとうございます」

 お互いに挨拶をしながら頭を下げた。

 ピーチにしても本を回収できた時点で、ここに来た目的は達成している。

 わざわざ腕輪の話をしたのは、今回の礼の意味も含んでいる。

 残念ながら渡せるものではないのだが、話をするだけでも十分に価値があると思って持ってきた。

 勿論本がかさばる上に重くなることを予想していたために、持ってきたという意味もあるのだが。

 その目的の本を手に入れたピーチは、その本が来ることを待ち構えている仲間の元へと急ぐのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ピーチがシュミットから本を受け取って数日たっていた。

 ちなみに、彼女達が本を手に入れたことは考助は把握していない。

 管理層には、当然彼女たちの個室があるので、その個室に本はそれぞれ配られている。

 考助もわざわざ彼女たちの個室を、突撃するようなことはしないので、その本の存在がばれることは無いだろう。

 ばれるとすれば、シュミット経由でばれることだろうが、彼も彼女たちの目的は察しているようなので、わざわざ考助に話すことはしないだろう。

 コウヒとミツキは何となく察しているようだが、その二人も考助に話すつもりはないようだった。

 というわけで、この件に関しては考助は蚊帳の外に置かれていた。

 はっきりとした答えが出るまで、しばらくはこのままの状態が続くだろう。

 取りあえず現在は、本から何かのヒントを得られないかという事を探している最中だった。

 神話にも繋がる内容なので、特にシルヴィアは熱心に本を読みこんでいた。

 そんなシルヴィアの私室にコレットが訪ねて来た。

「どんな感じ?」

「そうですわね。読んでてなかなか興味深いですね。神殿から得られる神話ではありえないような話もありますわ。いずれ全部に目を通してみたいです」

 完全に目を輝かせているシルヴィアに、コレットは苦笑した。

「神話としての研究もいいけど、本来の目的も忘れないでね」

「勿論です。・・・残念ながら、あまり芳しくはないですが」

「あ、やっぱりそっちもか」

「という事は、コレットも?」

「うん。他にも聞いてみたけど、あまりよろしくないみたい」

「一度全員で認識のすり合わせをした方がいいかもしれませんね」

「それには賛成。・・・だけど、どこで集まる?」

 考助には知られたくない以上、あまり目立った行動も出来ない。

「誰かの部屋でいいと思いますわ。前もって別のお題目を言っておけば、コウスケ様も不思議には思わないでしょう」

「まー、それが無難かな?」

 二人のこの話をきっかけにして、集まることになったのであった。

 

「で? 実際どうなのだ?」

 全員が揃ったのを見てから、シュレインがそう切り出した。

「種族もその他の事も見事にバラバラ。合っていることがあってもそれは偶々と言った方がいい物ばかりね」

「私も同様ですわ」

「私も~」

「共通の事項が無いと言ったのが、特徴と言えば特徴だな」

 全員の感想の通り、神との子供を授かることが出来た者は、共通する事項がほとんどない。

 勿論、二十冊以上に及ぶ話がまとめられているので、似通った話があったりはするのだが、それが共通項かと言われると首を傾げざるを得ない。

「そもそも、相手がすべて女神である以上、私達とは性別が逆になってしまうのだがな」

 シュレインがそう言った通り、性別が違うという点がどう影響してくるのか全く分からない。

「そうですが、もしそれが問題になるのでしたら、あのような神託はくださらないと思いますわ」

 エリスと交神をしたシルヴィアがそう断言した。

「あの~。私一つ気になったんですけど・・・」

「なんだ? 現状手がかりが何もない以上、気になったことは話した方がいい」

 フローリアの言葉に、ピーチ以外の全員が頷いた。

「神との子が色々活躍した話は多いけど、子を授かった本人の話が少ないと思いませんか~?」

 その言葉に、ピーチ以外の全員がハッとしたような表情になった。

「確かに。これだけの話を調べ上げている者にしては、肝心の部分が少ないな」

「元々話が伝わっていないか、意図的に遮断されているか、かの?」

「普通に考えれば、意図的と見た方がいいですわね」

 断言して答えたシルヴィアに、全員の視線が集まった。

「なぜかの?」

「もし神の子の誕生に神殿が関わっていれば、きっちりと神話として残っているはずですから」

 神殿の関係者ではないからこそ神話としては残らず、ついでに神殿からは隠れるように、その者を特定する情報は隠されているとシルヴィアは考えたのだ。

 そしてそのシルヴィアの言葉に、全員が顔を見合わせるのであった。

それなりに重要な話ですので、もう少し続きます。

というか、この話では肝心の部分が書けませんでした。

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