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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第14章 塔で妖精を呼び出そう
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6話 シルフ

 <風の妖精石>から生まれた風の妖精は、コレットと考助が会話をしている間じっと考助の方を見ていた。

 火の時もそうだったのだが、たとえ妖精として生まれたからと言って、言葉が話せるようになるわけではないらしい。

 それを考えると、やはり世界樹であるエセナやユリの存在は特別だということが分かる。

 実はこの感想も一般的な感覚からはずれていることになる。

 そもそも妖精と言う存在自体が、伝説だったりお伽話のレベルの話になる。

 それがここまで気軽に出現していること自体が、おかしいのだ。

 ドリーも含めると、妖精と呼ばれる存在を直接見たのは、既に六人(?)目だ。

 その内二人は既に姿を消しているので、実際には考助の周囲にいる妖精は四体ということになる。

「うーん・・・妖精ってこんな気軽に姿を見せるものなの?」

 考助の感想に、コレットはジト目を向けた。

「・・・あのね。そんなわけないでしょう。そもそも妖精なんて、伝説とかお伽話の世界の話よ? ・・・って、前にも言ったと思うけど」

「あはははは」

 取りあえず、考助は笑って誤魔化した。

「はあ。・・・まあ、いいけど。それよりもその子、なんか欲しいみたいよ?」

 その子、と先ほどから二人を見ている風の妖精を指した。

「欲しいって、何が欲しいの?」

「それが、よくわからないのよね。コウスケが持っている物って言ってるけど?」

「なんだそら。この階層に来るときに余計な物は置いてきてるから、今は何も持ってないけど?」

 考助とコレットは、二人同時に首を傾げた。

「よくわからないわね。・・・もう一回、聞いてみるわ」

「お願い」

 考助が手を合わせると、コレットはもう一度風の妖精の方を見て会話を始めた。

 しばらく様子を見ていた考助だったが、どうにも上手くいっていないようだった。

 そもそも<妖精言語>を使えると言っても、精霊や妖精の言葉と言うのは人や亜人とは大きく違っている。

 当然、会話をする上でも齟齬が生じたりして、上手く伝わらない、伝えられないと言ったことがたびたび発生する。

 今回がそれに当てはまってしまっているらしい。

 風の妖精も何とか伝えようとしているのだが、どうしても上手くコレットに伝わらないと言った表情が見て取れた。

「うーん・・・・・・。あ、そうか」

 風の妖精とコレットの様子を見ていた考助だが、途中でふと思いついた。

 この状況を打開できそうな存在に思いついたのだ。

 

「・・・エセナ、こっちに出てこれる?」

 世界樹の妖精であるエセナを呼び出すことにした。

 考えてみれば、世界樹のある階層を南の塔に移してからは、一度も呼び出したことが無かった。

 違う塔にいても呼び出すことが出来るのか、多少不安だったがそれは杞憂だったらしい。

 考助が呼びかけると、すぐにその姿を現した。

「兄様、どうしました?」

 既にその姿形は、高校生くらいと同じような容姿になっている。

 言葉遣いも普通に人間として違和感がない、どころかどこか上品な感じさえするようになっていた。

「ああ、うん。突然呼んでごめん」

「呼ばれればいつでも来ますので、気にしないでください。最近は世界樹も安定しているので、私が力で介入することもほとんどありませんから」

「そうなんだ。・・・それで、呼んだ理由だけど、彼女?彼?の言葉を聞いてほしいんだけど・・・」

 考助がそう言って、風の妖精の方を指さした。

「エセナ様済みません。私ではよく意味が分かりませんです」

 エセナが来ているのを見て、コレットもついに白旗を上げた。

「ああ。風の妖精ですか・・・彼らは独特な言い回しをしますからね」

 そう言いながら、エセナはすぐに風の妖精と会話を始めた。

 といっても会話自体はすぐに終わってしまった。

「・・・どうやら兄様の神力が欲しいらしいです」

 そして、あっという間に欲しかった回答を導き出した。

 それを聞いたコレットは、がっくりと肩を落とした。

「・・・し、神力の事だったの・・・」

 先ほどから何とか特定しようとしてた物が、神力の事だとあっさりと分かり落ち込むコレット。

「あ、コレット姉様は悪くないと思います。そもそも妖精や精霊だけに伝わっている言葉で話していましたから、分からなくて当然です」

 エセナがそう言ってコレットを慰めた。

 以前のエセナの姿をいまだ最近の事として記憶している考助にしてみれば、何となくおかしくなる光景だった。

「あー。それで、神力渡すのはいいけど、何に使うの?」

 考助の質問に、なぜかエセナはニコリと笑った。

「それは渡してみればわかると思います。変なことには使わないので大丈夫です」

「わかったよ。・・・で、どうやって渡せばいいの?」

「手を出してあげてください」

 エセナに言われたとおり、考助は風の妖精に向かって右手を差し伸べた。

 風の妖精もそれを察したのか、同じように右手を伸ばしてきて握手をするような形になった。

 その手を通じて、考助はそっと神力を送る。

 最初は神具を作る時のように、そっと送っていたのだが、何となくもっとと催促されたように感じたので、どんどん強くしてみた。

 調子に乗って、最後の方はかなり強い力で送ったのだが、風の妖精は特に気にした様子を見せなかった。

 結局、今まで使ったことがない程の量の神力を送ったのだが、考助にしてみれば感覚的にはまだまだ余裕があるように感じた。

 最終的には、脇に控えて様子を見ていたエセナが、それを止めることとなった。

 

「兄様、そろそろいいです。それ以上与えてもあまり意味がありません」

 そう言われた考助が、神力を送るのを止めて手を放すと、風の妖精に変化が起こった。

 今までは何となくそこに存在しているだけと言った感じだったのが、何か芯が入ったような強烈な存在感を出していた。

「・・・・・・うわっ」

 様子を見ていたコレットが、思わずそう声を漏らしてしまうほどの存在感になっていた。

 考助も余りの違いに、目を奪われていた。

「兄様、この子の名前は付けました?」

「名前? いや、付けてないけど?」

「では、付けてあげてください。もうこの子は兄様のものですから」

「え? そうなの?」

 いきなり自分の物になったと言われて驚いた考助だったが、神力を与えたことによりそうなったとエセナから説明を受けて納得することにした。

 そして、エセナの言われたとおりに、名前をシルフと付けてあげた。


「シルフ、もういいでしょう。それ以上余計なことをしたら、コウヒ姉様に抑えられますよ」

 エセナの言葉に、風の妖精であるシルフから感じる存在感が弱まった。

 ついでに、その頬が若干膨らんでいた。

「ぶー。エセナ姉様、ずるい」

 しかも普通に言葉を話して来た。

 考助とコレットが、それに驚いていたが、言われたエセナはどこ吹く風だ。

「何を言っているんですか。私は貴方の為を思って言ったのですよ?」

 そう言ったエセナは、考助の護衛としてついてきていたコウヒを見た。

 同じようにコウヒをみたシルフは、ブルリと体を震わせてなぜか考助を盾にして隠れた。

「ご、ごめんなさい~」

 なぜかプルプルと震えだしたシルフに、考助は首を傾げた。

「ど、どうかしたの?」

「兄様、気にしないでください。すぐに収まります。それよりも、もう契約は終わったので、シルフはいつでも兄様の力になりますよ?」

「へ? 契約?」

「先ほど、神力をお渡しになったでしょう?」

 考助にしてみれば、言われるままに神力を渡しただけだったのだが、先ほどの行為がシルフとの契約になったらしい。

 これでいつでも呼び出して力を借りることが出来るとのことだった。

「しかもシルフは、兄様の神力のおかげで、妖精の中でもかなり高位の存在になれました!」

 胸を張ってそう宣言したシルフ。

「兄様の力のおかげなのに、貴方が胸を張ることではないでしょう。・・・というわけなので、私と同じようにいつでも呼び出せるようになったので、好きに呼んでやってください」

 エセナとシルフの二人を見ていると、考助は何故だかエリスとジャルの姉妹神を思い出してしまった。

「ええと、それは分かったんだけど、シルフは普段はどこにいるの?」

 エセナは世界樹と言う宿る物がある。

 だが、シルフにはそういった物がないのだ。

「え? 当然、兄様の傍にいますが?」

 当たり前でしょうという顔をして言うシルフ。

 それだったら、別に呼ぶ必要はないんじゃないのかなー、と思う考助なのであった。

久しぶりのエセナ登場です。色々成長しています。

ちなみに妖精組は、考助の事を「兄様」と呼ぶように統一します。

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