9話 大陸最後の塔
現人神としての詞が発表されることになったので、考助はしばらくの間アマミヤの塔から逃げることにした。
残りの塔二つをどうするか悩んでいたのだが、いい口実が出来たと思うことにしたのだ。
残りの塔をさっさと攻略してしまえば、そのことで悩む必要もなくなる。
先の見えない塔の管理より、残りの塔の攻略は、終わりが見えているので分かり易いのだ。
といっても攻略すれば、管理の手間が増えるのだが。
残り二つの北西と南西の塔は、考助の予想では北東と南東の塔と同じ規模だと考えている。
取りあえず、北西の塔から攻略することにしたのだが、果たしてその結果は予想通りだった。
各階層は平原が多い階層になっている。
ついでに、飛行系のモンスターが多かった。
「これは<風>を意図しているんだろうなあ・・・」
というのが考助の感想だったが、その言葉を聞いていたコウヒとミツキも頷いていた。
こうなると残りの南西の塔は何が来るのか予想がつきやすいのだが、とりあえず今は北西の塔の攻略中なので、他の塔の事を考えるのは止めることにした。
北西の塔の攻略は順調に進み、階層の広さは予想通り北東や南東の塔と同じ規模であることが分かった。
後は階層数なのだが、こればかりは攻略を終えてみないと分からない。
第二十五層を過ぎたあたりで上級モンスターがぽつぽつと出てきていたので、何となく予想はついていたのだが。
いくらコウヒとミツキがいるからと言って、上級モンスターが出てくるようになれば、油断はできない。
一応気を引き締めなおして、階層を進めて行った。
結局のところ北西の塔は、北東と南東の塔と同じ規模であるという予想は外れていなかった。
階層の広さも同じで、塔の階層も第三十層が最高層だった。
さっくりと攻略を終わらせた一同は、いつものように管理層で登録作業を行った。
流石に六回目ともなれば、慣れたものだ。
制御盤の引き継ぎ作業が終わるまでは、待ちぼうけになってしまうのが、時間的に無駄に思えるのだが、こればかりは仕方がない。
大人しく待つしかない。
そんなこんなで管理層での作業を終えて、軽く召喚物のメニューを確認してみた。
予想通りというか、やはり神力を発生するような設置物は無かった。
それを確認した後、アマミヤの塔へと戻った。
アマミヤの塔で設置した<神石>を他の塔へ持って行ったらどうなるのかを試そうと思ったのだ。
既にピーチやシルヴィアが試しているかもしれないのだが、思いついた以上自分で試したかった。
結果としては、残念な結果になった。
<神石>として塔に登録はされるのだが、能力は<未開放>表示になって、神力を発生する設置物としては使えない物になってしまった。
「・・・・・・そうそう都合よくはいかないか」
「<未開放>ということは、解放される条件があるってこと?」
考助の呟きに、ミツキが反応した。
「どうかな? その辺は検証しないと分からないね」
その結果をアマミヤの塔に戻った時に報告しておいた。
案の定、他のメンバーたちも同じようなことは試していたらしい。
ついでにシュレインが、<神石>を設置した階層と交換してみたらしいが、結果は同じとのことだった。
世界樹やヴァミリニア城は働いているのに、他の設置物がダメということは何かあるのだろうが、それが何かまでは分からなかった。
設置する塔のLVだったり、あるいは何か特殊な条件が必要なのかもしれない。
「要検証、という事か」
シュレインの言葉に、全員が頷いた。
今では、攻略済みの全ての塔に<神石>は置いてあるので、もしレベルアップなどで能力が解放されれば、条件が解明されることを期待している。
ただ、考助としては、そこまで簡単にいかないかもしれないと、考えていた。
そもそもアマミヤの塔が特殊な条件を満たしているので、神力を発生する設置物が出ていた可能性がある。
ユニークアイテムまではいかないが、その塔限定の設置物があってもおかしくはないだろう。
「ということは、他の塔の設置物を持っていったりして、色々試してみるのも面白いかもしれないわね」
「それはそうなんだけど、それを多くやっていいのか微妙な気がする」
「・・・どういう事?」
「塔がそれぞれの塔として個性を持っているのが、そう言った設置物のせいだとしたら・・・」
「他の塔の物を持っていくことによって、個性が失われると?」
考助の考察を引き継いで、シュレインがそう言って来た。
「うん。まあ、階層の交換している時点で、そんなこと考える意味がないといえなくはない、けどね」
「いえ~。逆にきちんと塔に認識されているということは、その塔の個性の範囲内と言えるのではないでしょうか?」
ピーチの意見に、何人かがウームと考え込んだ。
「・・・まあ、いいか。あまり考えても仕方ない気がする。それぞれの塔でどうするかは任せるよ」
コレットが言ったように、色々持ち込んで試してみるもよし、塔の個性にこだわって、メニューから召喚できるもので管理してみるのもいい。
わざわざその方針を考助が決めるつもりはなかった。
アマミヤの塔では、せっかく階層交換をしたので、その交換した階層で色々試すつもりだった。
だが、その前に残りの南西の塔の攻略をすることにした。
「あ、やっぱり行くんだ」
「もうあと一つだしね。さっさと片付けた方がいいからね」
考助の言葉に、全員が頷いた。
南西の塔を攻略してしまえば、セントラル大陸にある塔は全て攻略できたことになる。
考助としてもわざわざ他の大陸に出向いてまで、塔の攻略をするつもりはないので、これで塔の攻略は打ち止めになる。
わざとらしく一つだけ攻略可能な塔を残しておくつもりもなかったので、さっさと攻略に向かうことにしたのであった。
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南西の塔に関しては、火の性質を持っているようで、火山だったり、むき出しの溶岩が存在する地形があった。
何気にアマミヤの塔にもそう言った場所は無かったので、新鮮な感じを受けた。
当然ながら出てくるモンスターは、火に耐性を持っているか、火の扱いに長けているモンスターが多かった。
考助がじっくりと観察する余裕があるのは、コウヒとミツキがいるおかげである。
その恩恵に感謝しつつ色々と観察していたが、結果としては予想を外すことは無かった。
塔の規模としては、北東・南東・北西の塔と同じで、第三十層だった。
広さもその三つの塔と同じ広さだった。
コウヒとミツキの力でこれまたあっさりと南西の塔を攻略を終えて、毎度同じように管理層で手続きを行う。
いつもと同じ手続きで、いつもと同じように待ちぼうけ。
とは言え、これが最後の手続きになると思うと、感慨深いものを感じる。
「・・・アマミヤの塔を攻略した時は、こんなことになるとは思ってなかったなぁ・・・」
待っている間に何気なくつぶやいたが、それを聞きとがめたミツキがクスクスと笑った。
「あの時は三人しかいなかったしね。そもそも単純に拠点を手に入れるだけのつもりだったんじゃなかったっけ?」
「そう言えばそうだったな。・・・どうしてこうなったんだ? ・・・・・・どう考えても僕自身のせいか」
自分で突っ込みを入れて、若干落ち込んだ。
あの時は、まさか自分が神の一員になるなんて、欠片も考えていなかった。
何だかんだで、色々暴走した自覚のある考助だったので、それに関しては反論のしようがない。
そんなことを話しながら時間を潰していた所、南西の塔への登録作業が終わった。
いつものように、締めのメッセージを聞いて終わり、と思っていたらさらに続くメッセージが制御盤から聞こえて来たのであった。
「大陸にある全ての塔の攻略を確認しました。大陸の覇者としての登録を行います」
何か最後の方で締めっぽくなっていますが、まだ終わりませんw




