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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第13章 塔をさらに増やそう
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8話 対策

 突然の事だが、管理層の各部屋の設置場所を変えることにした。

 シルヴィアとピーチの活躍によって、教会経由で考助が現人神として認識され始めたためだ。

 考助が迂闊に第五層に顔を出せなくなったため、管理層で外部からの者達を招き入れて話が出来るように対応することにしたのだ。

 言いだしっぺは、ミツキだった。

 先日のジゼルの話し合いの後、ミツキが変える必要があると言い出したのだ。

 それにコウヒが同意したため、考助も納得した上で、改造を施すことにした。

 改造と言ってもそう大きく変えるわけではない。

 管理層に来るための転移門がある部屋は一つの扉しかないのだが、その先に応接室のような場所を作った。

 応接室の先には、今までと同じ部屋が設置されている。

 ついでに、三つのクリスタルと制御盤がある部屋は、一番奥に来るように配置しておいた。

 管理層が襲撃されることはまずないが、念のためということで一番奥にした。

 もっともクリスタルと制御盤がある部屋は、扉自体が魔力・聖力・神力パターンを読みこんで開くために、まず入れないようになっているのだが。

 ついでに言えば、考助達が攻略した時と違って、たとえ第百層の転移門を稼働しても管理層に来ることはできない。

 そもそも<未稼働>状態にしているので、稼働できないようになっている。

 そのために、たとえこの塔を本格的に攻略しようとしたものが現れても、攻略することが出来ない。

 冒険者達の様子を見ている限りでは、高ランク層を突破すること自体難しいと思っているため、今のところ杞憂だと考えている。

 

 管理層を慌てて作り変えたのには、理由があった。

 考助と話がしたいとワーヒドを通して、クラウン組と行政機関組から連絡があったのだ。

 滅多に管理層に来ることがないワーヒドが、直接来たことからそれなりの事態が発生していると思ったために、急遽管理層を作り変えたのだ。

 そのために、転移門のすぐ隣にある部屋は、応接室兼会議室になっていて、結構な広さにしてある。

 ちなみに、中央にあるテーブルは円形にしてある。

 長方形のテーブルにすると、考助の向かい側にくる者達の数が愉快なことになりかねないためだ。

 流石に大人数で押し掛けてくることは無いだろうが、念には念を入れることにした。

 そんなわけで作られた会議室には、現在クラウンの主要メンバーと行政機関の主要メンバーが揃っていた。

 管理層へと来たメンバーを見た考助が顔をひきつらせたのは、言うまでもないだろう。

 どう考えても会議に来たというよりも、管理層見たさに来ていることがバレバレだった。

 ちなみに、管理メンバーはフルメンバーが揃っている。

「そろそろ始めましょうか」

 考助がそう言うと、物珍しげに周囲を見渡していた参加者が、表情を引き締めた。

 今回このメンバーが集まった目的というか議題は一つだけしかなかった。

 それはすなわち、

 

『アマミヤの塔の支配者であるコウスケが、現人神になったというのは本当の事なのか』


 ということだった。

 それを聞いた考助は、思わずシルヴィアの方を見た。

 そのシルヴィアは、一瞬「あ」という表情をした後、ばつの悪そうな顔になった。

「あ~。皆さま済みません。ミクセンの教会に伝えるだけで、皆様に直接伝えるのを忘れておりましたわ」

 シルヴィアの言葉で、一瞬で事情を察した参加者たちであった。

「一応第五層の神殿は、コウスケ様の本殿ということになります。私はコウスケ様の巫女になりますわ」

 シルヴィアは、巫女としての立場に立っているときは、考助の事をコウスケ様と呼んでいる。

 勿論、対外的な理由のためだ。

「といっても、第五層の神殿に関しては、今まで通り維持だけしていただくだけで構いませんわ」

 シルヴィアの言葉に、参加者たちは顔を見合わせた。

 代表して、アレクが答えた。

「神官や巫女は置かないのか?」

「何のためにおくのですか?」

 そう言われると、アレクも答えられなかった。

 そもそも神殿を神官や巫女が管理しているのは、神の声を聴くという目標に向けて修行をしているためだ。

 だが、常にこの世界に存在している考助の場合、特にそう言った存在は必要がない。

 直接姿を見せて、言葉で話せばいいだけだからだ。

 もっともそんなめんどくさいことをする気は、考助には無いのだが。

 神殿に関しても、三大神を降臨までやらかした第五層の神殿は残すが、他の神殿を建てる許可をするつもりはない。

 勝手に建ててしまった物をわざわざ壊す気はないので、勝手にどうぞといった態度をとるだろう。

 そうした事情を話したところ、参加者の一人が聞いてきた。

「では、教会とは徹底して対立する、と?」

 これには考助もシルヴィアも苦笑した。

「なぜ、そう極端に走るのですか。教会は潰そうと思ってもつぶれませんわ」

 教会のトップを牛耳っている者達を排除することは出来ても、信仰そのものを潰すことなどできない。

 というか、そんなことをするつもりは全くない。

 現実として存在している神に対する信仰を無理やり奪ったところで、碌なことにならないだろう。

 何より、考助は実際神々に会っているわけで、そうした神々を裏切るようなことをするつもりはないのだ。

 そうした話を参加者たちにしていくと、納得したように頷いていた。

「つまりは、他の教会に対して、口出しするつもりはないと?」

「ああ、そうだね。それぞれの神殿には、他の神がついているだろうし、わざわざ僕が口出しすることはないよ。第五層の神殿の事ならともかく」

 逆に言えば、第五層の神殿に関しては、遠慮なく口出しするというお墨付きである。

 当然、ここに集まったメンバーもそうした裏の言葉を読めない者はいない。

「寄進とかはどうされるのですか?」

 この質問には、シルヴィアが答えた。

「巫女や神官を間に挟むと、どうしても腐敗の温床になりますわ。ですので、いっそのこと人を配置するのを止めることにしました」

 要は日本の神社のお賽銭箱のような物を置くだけにするつもりなのだが、実はこうした物はこの世界では初だったりする。

 寄進する物やお金は、神官や巫女に直接渡すのが当たり前だという習慣になっているのだ。

 そのため参加者たちには戸惑いがあったりするのだが、日本の神社をみて育った考助には、当たり前のシステムだ。

 これを聞いたシルヴィアは、思わず感心した様子を見せたのは余談である。

 参加者たちも詳しく話を聞いて、思わず唸っていた。

 今まで見たことがない方法なだけに、どう言った影響を与えるのかが分からなかったためだ。

「まあ、新しい事だらけで、色々起こるかも知れないけど、まあその時はその時ってことで」

 最後は考助がそう結論付けて、強引に納得させた。

 会議の最後に、アレクが問いかけて来た。

「今日のここでの話は、現人神コウスケとしてのことばとして伝えていいのですかな?」

「まあ、出来れば、多少かっこつけて伝えてもらえると、うれしいかな?」

 おどけてそう答えた考助に、参加者たちの間の空気が弛緩した。

 どう考えても考助の態度は、いわゆる「神」からはかけ離れているのだが、そもそも神自体が身近な世界においては、こういう神がいても受け入れられるのかもしれない。

 かと言って、それに甘えてばかりもいられないかな、と思う考助であった。

 

「コウスケさん、済みません!」

 参加者たちが去って、いきなりシルヴィアが頭を下げて来た。

 人前ではないので、様ではなくさんと呼んでいる。

「ああ、いや、いいよ。塔の方にも伝えるように言ってなかったのは、こっちのミスでもあるし」

「ですが・・・」

「ああ、もう。今回に関しては、特に大事にならなかったんだから、もういいんだって」

 落ち込んでいるシルヴィアに、考助はポンと頭に手を乗せた。

「? コウスケさん?」

「普段から色々助けられてるんだから、あまり気にしなくていいって」

 そう言ってニコリと笑った考助から、なぜかシルヴィアは視線を外した。

「あ・・・は、はい。わかりましたわ」

 なぜか俯いてしまったシルヴィアだったが、それを見ていたコレットが少し不満顔でシルヴィアに告げた。

「あー。はいはい。皆がいる所で、いちゃいちゃは控えないと駄目なんじゃなかったっけ?」

「い、いちゃいちゃしていませんわ・・・!」

 シルヴィアはそう抗弁したが、考助とシルヴィアを除くメンバーがそうは思っていないことは明らかだった。

「・・・・・・あー」

 考助もようやく先ほどのやり取りを思い出して、周囲からどういう風にみられていたかをようやく悟ったのであった。

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