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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12章 塔を増やそう
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7話 神の巫女

 考助は南東の塔でも設置物を確認したが、やはり北東の塔と同じように神力を発生する物は無かった。

 まだ塔LVが上がっていないせいだと思うことにして、とりあえず南東の塔はシルヴィアに任せることにした。

 南東の塔の管理メニューのチェックを終えた考助は、アマミヤの塔の管理層へと戻ることにした。


「お帰りなさいませ」

 アマミヤの塔の管理層へと戻った考助を出迎えたのは、なぜか三つ指をついて頭を下げているシルヴィアだった。

 ちなみに蛇足だが、管理層は基本的に土足厳禁になっている。

 元々あった三つのクリスタルがある部屋と転移門のある部屋だけが、靴を履いて移動することに決めている。

 そもそもセントラル大陸の建築物では、いわゆる日本式(?)と同じく玄関があってそこに靴を置くタイプになっている。

 唯一と言ってもいい例外が、神殿で一般開放している部屋である。

 さすがに人の出入りが多いので、わざわざ靴を脱いだりすると、紛失したり盗難にあったりといったことになるため、予防策としてそうなっているのだ。

 とまあ考助は、そんな余計なことを考えていたのだが、勿論それは目の前の出来事からの現実逃避の為だ。

 視線をシルヴィアから、なぜかニマニマして立っていたコレットへと移した。

「・・・いつぞやのコレットの時みたいな悪戯?」

 そう聞かれたコレットは、一瞬で顔を赤くして、パタパタと手を振った。

「ち、違う違う。これは、シルヴィが自発的にやっているのよ。というか、あの時の事を蒸し返すのは、もう勘弁して~」

 考助との仲が色々と進展しているコレットは、そう言った知識もようやく人並みになってきていた。

 そのために、最初に結ばれたときの状況が、いろんな意味で普通じゃなかったことに気付いている。

 だからこそこの反応なのだが、今みたいなコレットの表情が好きで、わざとからかっているのは、考助だけの秘密だ。

 といっても、コレットとそっち方面の知識が元のコレット並みに少ないフローリア以外には、バレバレだったりするのだが。

 とりあえず、赤くなったコレットを放置することにして、考助はシルヴィアへと直接聞くことにした。

「まず、シルヴィア。頭上げていいから。・・・説明してくれる?」

 シルヴィアは、下げていた頭を上げて真っ直ぐに考助を見つめた。

「はい。コウスケ様にお願いがあります」

「お願い? というか、様って何!?」

「それも、お願いに関係することになります」

 シルヴィアは、一拍置いてから、考助にとっては、とんでもないことを言いだした。

「私を、考助様の巫女にしてください」


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 何とか気持ちを落ち着かせたところで、考助はシルヴィアへと話を聞くことにした。

 当然、既に正座(土下座?)は止めさせている。

「・・・それで、どういうつもり?」

「どういうつもりも何も・・・お忘れですか? 貴方様は既に神の一柱なのですよ?」

「・・・・・・出来れば、忘れていたかった」

 考助の小さな呟きを、シルヴィアは聞き逃さなかった。

「諦めてください。こちらの世界はともかく、神域では既に広まっているのですよ? 神々が忘れるはずがありませんわ」

「神はそうかもしれないけど、こちらの世界の人はそうじゃないんだよね?」

 考助の甘い考えは、残念ながらシルヴィアに否定された。

「残念ながらそう言うわけにもいきません。この先ずっと塔の中で過ごすならともかく、そうではありませんよね?」

「・・・まあ、そうだろうけど」

 考助としても一生塔に閉じこもっているつもりはない。

「だとすれば、いずれ誰かに気付かれます。神力を使える者はほとんどいませんが、神の気配を感じ取れる者は、神職には意外と多いのですよ?」

「・・・・・・えっ!?」

 考助の反応に、シルヴィアはため息を吐いた。

「やはり、ご存じなかったのですか。むしろ教会に属している神職たちは、そちら方面が本職です。聖力を使っての治癒などは、資金を獲得するための手段にすぎません」

 神職にしては生臭い話だが、そもそも権力争いも当然にあるのだから、そう言ったことも当然考えられているのだろう。

 集団が大きくなればなるほど、その分お金もかかるのだ。

「と言うことは、例えば、ローレル神殿長なんかと会ったりしたら・・・」

 考助の懸念に、シルヴィアが頷いた。

「直接会えば、まず間違いなくその身に纏っている気配に気づかれるかと。流石にすぐに現人神であることには、気づかれないかもしれませんが」

 この世界の神職とて無駄に修行しているわけではない。

 特に、神の存在が当たり前であるの世界だからこそ、その存在を感じ取る修行はより厳しく行われていたりする。

 神の気配には敏感なのだ。だからこそ、考助が第五層で神威召喚を行ったときも、召喚された三大神が本物であるとすぐに気付けたのだ。

「神と直接会ったとかと疑われると?」

「まず間違いなく。数回も会えば、神であることも疑われる可能性もありますわ」

 それを聞いた考助は、ため息を吐いた。

「ああ~。・・・めんどくさいなぁ・・・」

 考助は、本気で塔に籠りたくなってきた。

「・・・あれ? それで、そのことと、さっきの巫女にしてくれって話はどうつながるの?」

「普通であれば、私達のような神職にある者が、巫女や神官であることをそれぞれの神に認めてもらうことはありません」

 わざわざ一人一人対応する暇など、いくら神と言えどもないのだ。

「ですが、ごくまれに直接巫女や神官であることを認められることがあります」

「加護とは違うの?」

「勿論ちがいます。いえ、神にとっては同じなのかもしれませんが、神職にある者にとっては大きな違いがあります」

 加護や神託と言うのは、あくまでも神の側からの一方的な恩恵である。

 だが、巫女や神官であることを神に直接認められると、人の側からも声を届けられるという大きな意味があるのだ。

 だからこそ、教会に属する神職たちは、日夜修行に励んでいる。

「私が、巫女にしてほしいと言っているのは、勿論自分自身の為でもありますが、この先必ず起こる嘆願を牽制する意味があります」

 一人でも巫女がいれば、それを理由に他の者達の嘆願を断ることができる。

 現人神と言っても考助は、実際にこの世界に実体をもって存在しているのだ。

 考助が現人神であると露見すれば、直接の巫女や神官にしてほしいという嘆願が、山ほど来ることは目に見えている。

 それが文書で来るのならまだしも、直接押し掛けてくる者も必ず出てくるとシルヴィアは、考えていた。

「要は、ばれなければいいわけで・・・」

 という考助の甘い考えは、シルヴィアの一言で断ち切られた。

「その気配を完全に隠せるのであれば、大丈夫でしょうね。ですが、エリサミール神でさえ不可能なことを、今すぐできるのですか?」

「・・・・・・・・・・・・ムリです」

「と、言うわけですから、私が巫女になることを受け入れてください」

「・・・エリスの加護持っているけど、良いの?」

「既にエリサミール神の許可はもらっています」

 最後の考助の抵抗も、空しく弾かれてしまった。

「・・・・・・・・・・・・わかった。シルヴィアを僕の巫女として、許可するよ」

 考助がそう言った瞬間、体の中を何かが通ったのを感じた。

 初めての感覚だったが、あえて似ている物を探せば、コーとの繋がりと似たような感覚だった。

 シルヴィアの方を見ると、同じように驚いていた。

「・・・いくらエリサミール神から現人神になったと言われても、どこかで疑っていましたが・・・これで間違いないことが確認できましたわ」

 自身に流れ込んでくる力を感じて、シルヴィアはそう言った。

 幼少の頃より巫女として修行を積んできたシルヴィアは、その流れ込んできた力が、まさしく修行で求めていた物であると理解できたのである。

 そしてその力は、間違いなく考助から来ている。

 そのために、考助が間違いなく神の一柱であるということが、体感できたのであった。

 そして、その感覚は考助も同じように感じている。

 今まで、どこかであり得ないだろうと思っていた考えを打ち砕くことになり、このことが考助の考えを改めさせるきっかけになった。


 元々シルヴィアに南東の塔を任せるつもりだったことを、すっかり忘れていたことに気付いたのは、夜寝るためにベットに入ってからのことだった。

「閑話 シルヴィアの悩み」のフラグをここで回収しました。

本当はこの直前に入れようかと思っていましたが、あまりに時系列が違うため閑話にしたという経緯があります

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