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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第11章 塔から神域へ行こう
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6話 アースガルドの女神たち

 どうせなら面倒事は一度で済ませてしまおうということになり、面会希望者はアスラの館の周辺に集まってもらうことにした。

 面会といっても一人一人(一柱一柱?)と話をするといつまでたっても塔へ帰れなくなるので、まとめて相手をすることになった。

 他の神々に会うと決めてから十分後。

 どこにこんなにいたんだというくらいの神々が、館周辺に集まっていた。

 ざっと見た感じで、約百名程。

 まあ、神域だけあって全員が神なので、転移でも使って移動してきたのだろう。

 それはともかく、どういうわけか集まっている神は全員が女性だった。

 最初はやけに女性が多いなと思っただけだったのだが、どこを見ても男は見当たらなかったのだ。

「・・・・・・そう言えば、男の神がいるって聞いたことなかったな・・・」

 その考助の呟きを聞きとがめたジャルが、目を瞬いた。

「あれ? 知らなかったの? この世界の神って女性しかいないよ?」

 驚愕の事実の発覚であった。

「・・・えっ!? そうなの?」

「そうなのよ。だから初めての現人神にして、唯一の男性神だから注目されるのも当然よね」

 アスラが楽しそうな表情でそう言って来た。

「考助様が初めてこの神域に来た時に、アスラ様がすぐにここへ保護したのには、そういった理由もあります」

 勿論、魂だけで来ていた考助が、消滅する危機があったためにすぐに保護しないといけないという理由もあったのだが、それ以外の理由もあったのだ。

 女性だけの園に、男性が一人。

 それはアスラでなくとも匿うだろうと思った考助であった。

 

 館の周辺に集まった女性神たちは、今か今かと考助の登場を待ちわびていた。

 そもそも考助の噂は、最初からあったのだ。

 考助がこの神域に来た当初、アスラとエリスのみで対応をしていたのだが、その間の出入りが厳しくなっていた。

 今までそう言ったことがほとんどなかったために、当然注目されていたのだ。

 その理由が迷い込んだ|男(の魂)を隠していたという噂が広まった時には、既に考助はアースガルドへ行った後だった。

 その後も、主に考助自身の行いによって、噂が絶えることは無かった。

 止めとなったのが、三大神の神威召喚である。

 女神たちは、アースガルドの世界が好きなのだ。

 そうでなければ、真面目に神の役割などやっていない。

 とは言え、頻繁にアースガルドに降臨するわけにもいかない。

 そこで神威召喚が出来る考助に注目が集まるのも当然と言えた。

 神域から遠巻きに見るのと、降臨なり召喚なりされて直接その目で見るのとでは、受ける印象が全く違うのだ。

 だからこそ降臨に強い思いを持っていた神々なのだが、召喚できるものが出て来たとなるとまた話が変わってくる。

 神威召喚を行うためには、エリス達のように、召喚者と神の間で縁を結ばないといけない。

 だからこそ、女神たちはここに集まって来たのだ。

 たとえ直接会話を交わさなくとも、一目見るだけで縁は結ぶことが出来る。

 これだけの人数がいるので、考助が召喚を行ってくれるかは分からないが、それでも何もしないよりはましというものだ。

 ついでに言えば、三大神と縁を結び、更には現人神になってしまうような(元)人間の男ということ自体にも注目が集まっている。

 勿論野次馬根性的な者達もいないわけではないが、そう言った実情もあるために、ここにいる女神たちは集まっているのだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 女神様たちに押しつぶされそうになりながらもなんとか対面を果たした考助は、しばらく館の中でぐったりしていた。

 それを三大神+アスラが苦笑しながら見ていた。

「ごめんなさいね。出来るだけ手荒にならないようには、言ってたんだけど・・・」

 申し訳なさそうにアスラがそう言い、

「最後の方は、箍が外れそうになっていたからな」

 スピカが気の毒そうな表情をして考助を見て来た。

「・・・・・・・・・・・・あれでもまだ抑えていたんだ・・・」

 ぐったりしたままの考助が、何とかそう言葉を絞り出した。

 いろんな意味で、モテモテという状況だったのだが、できればもう二度と経験はしたくない。

 勿論、流石に女神だけあって皆美人で、最初は囲まれている状況に嬉しいという気持ちも持てていたのだが、最後はそんな余裕は消え去っていた。

「すみませんでした。本来であれば、ある程度私達で抑えるべきだったのでしょうが・・・」

「それをやると私達だけで、独占しているとか反発が来そうだったから出来なかったのよね・・・」

 いくら三大神とは言え、エリス達も強引に事を進めるわけにもいかなかったのだ。

 特に、今回のことに関しては。

 それだけこの神域において、考助の存在は重要な位置にいるのだが、考助にその認識があるかどうかは微妙な所だ。

 

「・・・そろそろ復活した?」

 いまだ備え付けのソファーで寝そべっていた考助の顔を、アスラが覗き込んできた。

「・・・ああ、うん。まあ、大丈夫だけど?」

「それだったら、そろそろ戻ったほうがいいわ。現人神だから考助自身には問題ないけれど、他の子達のことを考えると、ね?」

 アスラが、エリス達の方を見て笑った。

 その視線を受けた三人も苦笑している。

 実は、今でももう一度会わせてくれという嘆願が、三人にひっきりなしに来ているのだ。

 このままこの神域に居続けると、いろんな意味で何が起こるかわからない。

 流石にこの館に突撃してくる者は、いないだろうが。

 その空気を微妙に察した考助も、何とか起き上がった。

 もう一度同じようなことになるのは、考助としても勘弁してほしいところだ。

 有難くその提案を受けることにした。

「分かった。それじゃあ、そろそろ戻るよ」

「あ、ちょっと待って」

「?」

 帰還の為の送還陣を作ろうとした考助を、アスラが止めた。

 ちょいちょいと考助を手招きして、近寄ってきた考助の額を、右手の人差し指でちょんと突く。

「はい。これで、この神域から直接、あの神社に飛べるようになったわ」

 アスラが言うあの神社とは、百合之神社の事だ。

 本来であれば、神域からは転移することが出来ないのだが、アスラが許可することによって出来るようにしたのだ。

「・・・え? いいの?」

「いいのよ。別に、大盤振る舞いと言うわけではないわ。この神域への送還を成功させたプレゼントよ」

「そうか。それじゃあ、ありがたくもらっておく」

「そうして頂戴」

「ああ、ありがとう。じゃあ、三人もまたね」

 アスラに礼を言った後、考助を見ていた三大神にも手を振った。

「ええ、それではまた」

「じゃあな」

「いつでも来れるようになったからって、交神するの忘れないでよ?」

 ジャルだけ別れの挨拶ではなく、交神のおねだりだったが、それはそれでジャルらしいと考助は笑ってその場を後にした。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 百合之神社へと転移をしてきた考助だったが、なぜかユリの土下座で迎えられた。

 いやどちらかと言えば、土下座と言うよりも平伏と言った方が正しいだろう。

 なぜなら、一言目が「お帰りなさいませ」だったからだ。

 その時から何となく嫌な予感はしていた。

 取りあえず、皆が心配しているだろうと、その場はあまり気にせずに管理層に戻ったのだが、その原因はすぐに判明した。

 考助が戻ってきたのを察したメンバーたちが、盛大に出迎えてくれたのだ。

 人外へのクラスチェンジおめでとう、と。

 それを見た考助が、その場に崩れ落ちてしまったのは、言うまでもなかった。

2014/6/15 誤字修正

2014/6/29 誤字脱字訂正

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