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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)いよいよ準備完了

 お楽しみの買い物を終えた考助たちは、少し浮ついた気分で宿泊している屋敷へと戻った。

 するとそこには、上機嫌になっているクラーラが待っていた。

「随分とご機嫌だね。クラーラ」

「それはね。思ったよりも早く役目が果たせそうだから」

「あー。ということは、準備ができた?」

「そういうこと」

 考助の問いに、クラーラは大きく頷きを返した。

 

 クラーラが召喚されてからこれまでの間、なにやら忙しそうに動いていたことは知っていた。

 それでも考助が敢えてそれに触れていなかったのは、クラーラが聞くなという雰囲気を醸し出していたためである。

 一応、確認もしていたが、結果は里の見学に出る前の返事だ。

 口止めされているというよりは、考助を驚かせるために敢えて秘密にしているという雰囲気もあったため、深く聞くことはしていなかった。

 

 クラーラが頷いているのを見た考助は、さらに続けて聞いた。

「それで? これからなにかをするの?」

「そう。とりあえずは、また移動かな」

「ということは、昼は食べたほうがいい?」

「そうね」

 考助の確認に、クラーラはもう一度頷いた。

 これから行く場所は、そうそう気軽に行って帰って来るところではない。

 そのため、昼食はしっかりと取ったほうがいいというのが、クラーラの言葉だった。

 

 

 クラーラの助言(?)に従い、考助たちは準備された昼食をしっかりと取った。

 そのあと考助たちは、クラーラに導かれるように里の端まで移動した。

 その場所は、考助たちが最初に移動してきた入り口とは反対側に位置している。

 ただし、そこには洞窟の通路となるようなものはなにも見当たらず、ただ土の壁らしきものが見えているだけだった。

 

 そんな場所へと案内された考助は、首を傾げながらクラーラを見た。

「ここになにかあるの?」

「まあまあ、少しだけ待っていなさい」

 何故か胸を張りながらそんなことを言ったクラーラは、壁に右手を当てながらなにやら呟いた。

 

 その様子を見ながら、シルヴィアが大きく目を見張っている。

 女神が呪文のようなものを唱えるところを見るのは、ほとんど神話の世界でしか見ることができないのだ。

 そんなレアな様子を見ることができているので、驚くのは当然のことである。

 ちなみに、考助は神域に訪問しているときに何度か見たことがある。

 そのため、シルヴィアほどの驚きはなく、クラーラがすることを見守っていた。

 

 クラーラの呪文はすぐに終わり、それと同時に目の前の土壁に変化が起こり始めた。

 具体的には、まるでそこに隠されていたかのように、土の壁が両側にスライドし始めたのだ。

 考助は、最初からその壁があったわけではなく、クラーラが唱えた呪文で現れた壁であることにすぐに気が付いた。

「・・・・・・イグリッドのあの移動の魔法と同質のもの?」

「あら。やっぱりすぐに気付いちゃうのね」

 考助の呟きに、クラーラが頷きながらそう答えてきた。

 

 考助は、自分たちがここに来るまでに通ってきた「道」と同じようなものを、目の前の開いた扉にも感じることができた。

 扉の先には、少し暗めの道が続いているのだが、その道とイグリッドが作っていた道が同質のように見える。

 その道は、物理的に開いているわけではなく、なにか次元のはざま――というと少し大げさだが、そんなところを開いているように感じる。

 だからこそ考助は、既存の魔法にはない力だと考えているのだ。

 敢えて挙げるとすれば、アイテムボックスで使われる空間拡張のような魔法と同列のようにも思えるが、それとはまた違った力で成り立っているのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 クラーラが作った道を通っている間、考助たちはきょろきょろと周りを見回していた。

 ただし、それが続いたのは歩き始めてから十分ほどのことで、ほとんど光景が変わらないために、すぐに前を見ながら歩くようになった。

 それを見ていたクラーラが面白そうに笑った。

「あら。もう飽きた?」

「飽きたというよりも、同じものしか視界に入ってこないので、見るべきものがなくなったというのが正しいんじゃないかな?」

 考助がそう答えると、クラーラはますます楽しそうにくすくすと笑い始めた。

 大地の女神であるクラーラにとっては、大地は力の源そのもので飽きるという感覚が起きないため、考助たちの反応が楽しかったのだ。

 ちなみに、一緒について来ているラングたちは、この先なにが待っているのか知っているためか、緊張した様子で黙って着いて来ている。

 

 

 緊張しているイグリッドにあてられてか、後半は考助たちもほとんど話をすることなくクラーラが用意した道を進んで行った。

 そして、いよいよその道が終わりという時になって、クラーラが明るい声で言ってきた。

「さあ、そろそろ着くわよ! なにが待っているか、楽しみにしていてね!」

 クラーラはそう言いながら前方に見えている壁に向かって、入ってきた時と同じように呪文を唱え始めた。

 そして、先ほどと同じようにまた壁が開く様子が見ることができて、その先に考助たちが歩みを進めると、ようやく今回の目的である正体が目の前に現れたのであった。

また短いですが、この先に進めるときりが悪そうなので、今回はこの辺で。

次回はきちんと目的のものを見ることができます。

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