表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
1350/1358

(6)里での買い物

 案内された屋敷で一泊した考助たちは、午前中は里の中を案内されていた。

 ちなみに、クラーラは着いて来ていない。

「私は準備することがあるから~」

 と言っていたが、それが本来の目的に関係するということは、皆がわかっている。

 ついでに、敢えて考助たちがいないところで準備をするということは、それを見せたくないからという意味があることも理解していた。

 考助は、知る必要がないことは知らなくていいと考えるタイプなので、分かっていながら深く聞くことなく里の観光(もどき)に繰り出していた。

 

 イグリッドの里は、最初の時に気付いたように、全体を不思議な光源によって照らされている。

 その光源によって、周囲にある畑で作物を作ったりして、里の人口を支えているのだ。

 ただし、イグリッドが移住を望む原因になっていることからもわかる通り、見た目広く感じるこの地下都市は、それ以上に拡大することができない。

「――一度広げたんだから、また同じように広げることもできると思うんだけれど」

 と、説明を受けた考助がそう言ってみたものの、そもそもどういった魔法が使われているのか分からないので、無理なんだろうとはわかっていた。

 

 案の定、考助の呟きを拾ったラングが首を振りながら答えた。

「残念だば、人力で掘ろうにも、それも無理だべ」

「あ、そうなんだ」

 考助は、見た目はただの土の壁に見える里の外側を見ながらそう言った。

 

 イグリッドの里の不思議は、光源だけではなく全体に及んでいるようで、上下左右どちらに向かっても掘り進めることは不可能なのだ。

 それは、イグリッドが小柄であるからという理由だけではなく、魔法的にも物理的にも破壊行為ができなくなっているのだ。

 そして、その説明を聞いた考助は、頭の中で「そんなところまで塔と同じなのか」と考えていた。

 塔の場合は、見えない壁が空間の端っことなっているが、塔自体を外側から壊そうとしても決して破壊することができない。

 それと同じような原理が働いているのだろうというのが、考助の考えだ。

 

 

 ラングに案内されながら、考助たちはイグリッドの里を歩き続けた。

 いま歩いているところは、里の中心街というべき場所で、多くの商店らしき建物が集まっている。

 ただし、当然というべきか、建物の規格はイグリッドに合わせて小さくなっている。

 そもそもイグリッドが普段住んでいる普通の住宅は、考助の伸長でも屈んでようやく入れる程度の高さしかない。

 ついでに、部屋の天井も屈まなければ頭をつっかえてしまうくらいの高さしかない。

 

 そんな小規格の建物が集まっているイグリッドの里だが、大きな特徴がひとつある。

 その特徴を支えるものが、いま考助たちがいる商店街には商品として多く売られている。

 それらの商品に目を奪われていたフローリアが、感嘆した様子で言った。

「やはりイグリッドが作る装飾品は、素晴らしいの一言だな」

「ああ、フローリアでもそう思うんだ」

「当たり前だろう」

 考助がやっぱりかという様子で頷くのを見て、フローリアはなにを言っているんだという顔でそう応じた。

 

 生まれた時から美しい装飾品を目にしてきているフローリアは、イグリッドが作り出しているそれらの価値の高さを十分に理解していた。

 だからこそ、先ほどから目を奪われるように、あちこちの店に視線を向けているのだ。

 ついでにいえば、それは別にフローリアだけではなく、ほかの女性陣も同じ様子になっている。

 考助も女性たち程ではないにしろ、その美しさには目を見張るほどなので、どれほどのものかは実感として理解していた。

 

 そんな女性陣を見ながら、考助はふと気になったことをラングに聞くことにした。

「ここで買い物をしたいと思うんだけれど、どうすればいいかな? やっぱり、物々交換?」

 考助がそう聞いたのは、別にイグリッドの経済が物々交換で成り立っていると考えたからではない。

 里から塔へと移ってきたイグリッドが、違和感なく貨幣を使っていることからもそれはわかる。

 そうではなくて、考助が持っているお金が使えるか分からなかったので、そう聞いたのだ。

 

 その考助の問いかけに、ラングは少し考えるような顔になっていった。

「んだなぁ・・・・・・物々交換するにしてもなにを出すかによるべ。ああ、コウスケ殿であれば、肉は持っているんでねべか?」

「肉? 魔物の?」

「んだべ」

「それなら、いくつか種類はあるけれど・・・・・・?」

 基本的に肉といえば魔物のものを指す世界なので、考助だけではなくコウヒやミツキも常にいくらかの魔物の肉はアイテムボックスに仕舞ってある。

 それらの肉とイグリッドが里で使っている貨幣が交換できるのであれば、いくら出しても構わない。

 

 考助の返答を聞いたラングは、少し安心したような顔になって頷いた。

「んだべか。それだば、代表のところにでも行って、貨幣と交換してもらえばいいべさ」

「なるほどね。じゃあ、そうしようか」

 ラングの言葉に頷いた考助は、さっそくとばかりに歩き始めた。

 ちなみに、考助とラングのやり取りを女性陣は黙って聞いていた。

 それもそのはずで、考助がなぜわざわざそんなことをしようとしているかをきちんと理解していたためだ。

 考助は、折角イグリッドの里に来た記念に、それぞれにプレゼントを買ってあげようとしているのである。

 勿論、この場には来ていない者たちには、あとからお土産として渡すことになる。

 

 女性陣からの期待するような視線に気づきつつ、考助は気付かないふりをしていた。

 ここはお互いになにも言わずにいるのがいいと、これまでの付き合いで分かっているのだ。

 そうして考助たちは、一度商店街を離れて、代表のいる屋敷へと向かうのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 貨幣の交換は、割とスムーズに終わった。

 といっても、装飾品を買うとなるとそれなりの金額がかかるので、ある程度の目星をつけてから交換する量を決めた。

 そうした方がいいというラングの助言があったからというのもある。

 さらに、それだけの貨幣を持ち歩くと非常に不便なので、あとからまとめて清算することにもなった。

 商店街での支払いは、代表が仮払いをしておいて、その分を後から考助が肉(など)で支払うことになる。

 勿論代表は、それらの肉を後で専用の店や食堂などに卸すのだ。

 

 そんなことを取り決めた後で、考助たちは改めて商店街に戻って店を回り始めた。

 女性陣は、それらの装飾品が手に入るとわかって、獲物を狙う鷹のように(?)視線が鋭くなっている。

 彼女たちは、別に考助に買ってもらわなくても、自分たちの稼ぎだけで買うこともできる。

 それでもやはり、考助に買ってもらえるということで、入る気合も違っているのであった。

当然ながら女性陣は、それぞれに稼ぎがあるので、自前で買うこともできます。

・・・・・・が、やっぱり考助に買ってもらえるのは、嬉しいというわけですねw


----------------------------------------------

※露骨な報告

コミカライズの続報と電子書籍化について活動報告にて報告いたしました。

そちらもぜひチェックしてみてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ