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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(4)女神降臨

 今夜泊まることになっている屋敷に入った考助は、すぐに立ち止まって呟いた。

「……なるほど。そういうことね」

 その呟きが耳に入ったのは隣を歩いていたミツキだけだったが、考助が止まったことには皆が気付いた。

「コウスケ、どうしたんじゃ?」

 考助は、すぐ後ろを歩いていたシュレインからそう聞かれて、振り返ってから答えた。

「うん。・・・・・・まあ、呼ばれているんだけれど、いまはとりあえず落ち着こうか」

 さすがに案内されている最中に余計なことをするつもりは、考助にはない。

 それに、呼ばれていることは分かっているが、いまはまだそのタイミングではないこともわかる。

 

 その考助の雰囲気を感じ取ったのか、ほかの面々は一度顔を見合わせてからなにも言わずに進み始めた。

 なんとなく考助が言っている意味は理解できているので、ここで止めても意味がないと分かっているのだ。

 逆に、そのやり取りを見ていたイグリッドたちは、不思議そうに首を傾げている。

 それを見た考助は、少なくともこの件に関しては、彼らは直接関わっているわけではないということがわかった。

 

 考助は、そのイグリッドを笑顔で促しながら言った。

「まずは落ち着きましょう。どういう意味かは、そこでお話しします」

 まったく説明になっていないが、とりあえずはそれで納得したのか、ラングにも促されたからなのか、代表者はとりあえず頷きながら案内を始めた。

 もっとも、案内とはいってもすでに建物の中に入っているので、あとはそれぞれの部屋を紹介するだけである。

 

 

 まずはリビングらしい部屋に入った考助は、代表者に向かって言った。

「こちらの屋敷は自由に使ってもいいのですか?」

「んだ。それで構わねえべ。入ったら駄目な部屋もないべ」

「そうですか。それでしたら、特に案内してもらう必要はないですよ? 部屋割りも適当に決めてしまいますから」

「んだか? それじゃあ、そうしたほうがいいべ」

 折角案内しようとしてくれているところを、あっさりと断った考助に、これまたあっさりと代表者は納得していた。

 ちょっと強引過ぎたかと少しだけ冷や汗を流していた考助だったが、その答えを聞いて安心した。

 

 それよりも、いまの考助には、この屋敷についたときから気になっていたことがある。

 それを、最初に実行することにした。

「すみません。まずは軽く話でもするのが礼儀なのでしょうが、まずはこちらの用事を済ませてしまってもよろしいでしょうか? 先ほどの会話も気になっていますよね?」

「んだか? それは構わねえべ」

 万事おおらかな性格のなのか、代表者のイグリッドは、考助の言葉にすぐに同意してきた。

 勿論、屋敷についた時の考助たちの会話が気になっているということもあるのだろう。

 

 その代表者の同意を得た考助は、皆から少しだけ離れた場所に移動した。

 そして、全員に向かってその場を動かないように言ってから、神威召喚・・・・を始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助が神威召喚を終えると、そこには一柱の女神が立っていた。

 それは一度シュレインたちも会ったことがあるクラーラだった。

「あらあら。さっそく呼んでもらってごめんなさいね」

「いいえ、それは良いのですが、なにか急ぎの用でもありましたか? 今回はそちらでもきっちりと準備をしていましたよね?」

「あら。わかっちゃった?」

「それは、まあ・・・・・・」

 少し茶目っ気のある顔でそう言ってきたクラーラに、考助は真顔で頷いた。

 エリスと話をした時から女神が関わっていることは分かっていたので、神域側で召喚の準備をしていたとしても、それほど驚くようなことでもなかったのだ。

 

 その考助(と同行者)の反応とは対照的に、案内役だったイグリッドの代表者は、はっきりと驚きを示していた。

「はばっ!? ク、クラーラさ・・・・・・ま? な、なんてこった、だべ・・・・・・!?」

 勿論、驚ているのはその代表者だけではなく、一緒に着いて来ていたそのほかのふたりのイグリッドも同じだ。

 ただ、こちらは言葉を発することなく、両目を見開いて固まっている。

 そうしていると、本当に人形のようにしか見えないよなあと、考助は割と暢気なことを考えていた。

 

 そんな考助に、クラーラが少し困ったような顔になって言った。

「彼らはどうするの?」

「呼んでくれと催促したのはそちらですから、自分でどうにかしてください」

 あっさりとそう返してきた考助に、クラーラは少しだけ面白そうな笑みを浮かべた。

「あら。随分と冷たいのね」

「こちらの用で呼んだのでしたらまだしも、今回はそちらからの要請ですから」

「それもそうね」

 考助の言い分に納得したのか、あるいは最初からそのつもりだったのかは分からないが、クラーラはすぐにそう返してきた。

 

 

 その後は、イグリッドが落ち着くまでに、少しだけ時間を要した。

 そもそもイグリッドにとって、大地の神であるクラーラは、ドンピシャで信仰の対象なのだ。

 その神が目の前に現れたのだから、驚くなというほうが無理である。

 ただ、クラーラからの説明を聞いたイグリッドの代表は、どこか納得した様子で頷いていた。

「――クラーラ神が降臨されたことには驚いただが、今回のことを考えると納得だべ」

「そうでしょう?」

 代表の言葉に、クラーラも満足そうに頷いた。

 

 今度はその両者の会話に、考助たちが疑問の表情になった。

 クラーラは、上手く話を逸らしつつ、肝心なことは言わないように代表に説明をしていたのだ。

「あ~、一応聞くけれど、今回僕らがここに呼ばれた理由って教えて貰えるのかな?」

 無理だろうと分かってはいたが、一応考助はクラーラにそう聞いた。

 

 ただ、問われたクラーラは、ニンマリとした笑みを浮かべながら考助に向かっていった。

「まだ、秘密です~」

 その答えに、考助だけではなく、他の面々も『そうですよね』と揃って同じことを心の中に思い浮かべるのであった。

というわけで、久しぶりのクラーラ登場でした。


ちなみに、今回の目的に関しては、ちゃんと(?)引っ張り続けますw

(といっても、そんなにずるずるとは引っ張らない・・・・・・はずです)

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