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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
1345/1358

(1)前代未聞の珍事

新章開始です!

ここから第13部第11章になります。

 その日、考助はシュレインに呼ばれてヴァミリニア城にいた。

 ふらりと寄るのではなく呼ばれるというのは非常に珍しく、考助は少し驚きながらシュレインのところに向かった。

 シュレインは、管理層で事前に考助に確認を取るなり、すぐに城へと戻っていた。

 考助の都合を確認するためだけに来ていたようで、一時間もいなかった。

 最近のシュレインは、子育てや里と塔の管理と、かなり忙しく動き回っているのである。

 

 考助が転移門を使ってヴァミリニア城へと向かうと、そこにはすでにひとりのヴァンパイアがいた。

 シュレインから知らせがあったのか、考助の姿を見るなり一度頭を下げるなり、案内すると言ってきた。

 城のどこに向かえばいいのかまでは知らされていなかった考助は、すぐにそれに頷いた。

 ちなみに、一緒に着いて来ているのは、コウヒ&ミツキ、それからシルヴィア、フローリア、最後にナナになる。

 ナナは、たまたま考助が管理層を出ようとしたところに出くわして、そのまま一緒に来ていた。

 

 案内のヴァンパイアが向かった先は、シュレインが普段執務をしている部屋ではなく、会議室のような場所だった。

 そこには既に、シュレインだけではなく、別の者たちがいた。

 それは、現在代表をしているラングを筆頭にしたイグリッドの面々だった。

 ラングは、五年ほど前にイグリッドの代表についたと、シュレインから報告を受けて対面もしている。

 

 自分の姿を見て、慌てて立ち上がろうとしたラングに、考助はそれを止めた。

「そのままでいいから。どうせ、すぐに話を始めるんだよね?」

「まあ、それはそうだが・・・・・・挨拶くらいはさせたらどうだ?」

 苦笑しながらそう言ってきたシュレインに、考助は首を振ってから答えた。

「いや、座ったままでいいから」

 考助は、立って挨拶するのも座って挨拶するのも大した違いはないのだが、なんとなく堅苦しい感じがしたので止めたのだ。

 

 

 さらに続けてなにかを言ってくるよりも先に、考助はさっさと自分のために用意されたと思しき椅子へと座った。

 それを見ていたシュレインは、もう一度苦笑しながらラングを見て言った。

「もう、コウスケはこういうものだと思って諦めてくれるかの」

 ラングは、先ほどからどうしていいのか分からずに困惑していたのだ。

 シュレインは、そのラングにフォローを入れてから、次に考助を見ながら言った。

「其方が堅苦しいことが嫌いなのは知っておるが、せめてちゃんと挨拶くらいはさせてくれんかの?」

「あ~、はい。ごめんなさい」

 考助としても言いたいことはあったが、素直に謝っておいた。

 ここで無理を通せば、それが現人神コウスケに対する礼儀だということになりかねないのだ。

 

 初っ端から微妙な空気になってしまったが、そこは気持ちを切り替えて、まずは考助から切り出すことにした。

「それで? 詳しくは聞いていなかったのだけれど、なにか用があるってことまでは教えて貰えたのだけれど?」

「ハア。まんず、こちらから呼び立てて、申し訳なかっただ」

 考助の問いかけに、ラングはいつものイグリッドらしい言葉遣いでそう言ってきた。

 クサツで働いているイグリッドは、業務につく前に方言を直させられているのだが、普通は相変わらずの言葉遣いなのだ。

 

 イグリッドの言葉遣いに慣れている考助は、右手を振りながら答えた。

「いや、もうお礼は十分だよ」

「そうだか? んだば、要件を言わせてもらうだが、コウスケ殿にひとつお願いがあるべ」

「お願い?」

 イグリッドとはそろそろ長い付き合いになるが、それでも初めてといっていいような「お願い」に、考助は首を傾げた。

 ついでにシュレインを見てみるが、彼女もそこまでは聞いていなかったのか、少し驚いた表情になっている。

 

 そんなシュレインの様子に気付いているのかいないのか、ラングは考助に向かって頷きながら言った。

「んだ。コウスケどのには、是非とも我らが故郷に行ってきて欲しいんだべ」

「・・・・・・はい?」

 唐突すぎることと、これまでではありえないような内容に、考助は思わず気が抜けたような様子で返してしまった。

 だが、それはまだましな方で、シュレインなどは驚きのあまり言葉を失っている。

 

 地底に住んでいると言われているイグリッドは、そこでどんな生活をしているのかは、あまり知られていない。

 それは、そもそもイグリッドが、ほかの種族を自分たちの住まいに案内することが無いからだと言われている。

 現に、考助が知るよりも前から付き合いがあったヴァンパイアは、誰一人として地底に招待されたことなどない。

 そうした理由があるからこそ、シュレインはそこまで驚いたのだ。

 

 そんな稀な提案をされた考助は、驚きつつもこれだけは確認しなければという顔になった。

「あ、いや。招待自体は嬉しいんだけれど、なぜ突然?」

 アマミヤの塔でイグリッドを受けいれるようになってからすでに二十年以上が経っている。

 これまでこんなことを言ってくることが一度もなかっただけに、考助の疑問は当然だった。

「これまでコウスケどのは、多くの仲間たつを引き受けてくれたべ。そのお礼だと思ってくれていいだ」

 考助の疑問に、ラングはそう答えた。

 

「それは嬉しいけれど、そもそも君たちも故郷には二度と戻れないんじゃなかった?」

 確か、最初にイグリッドを連れてきたときに、シュレインがそんな話をしていた。

 それなのに、部外者である自分が、いくらお礼だからといってもそんなに簡単にイグリッドの故郷に行っていいはずがない。

 そんなことを考えて言った考助に、ラングは首を振りながらさらに言った。

「これは、あっちさいる連中の願いでもあるんだ。んだから、コウスケどのは、わすらのことは気にせずに、仲間とともに行ってきてほしいだ」

「あ、ひとりだけで行くって話でもないんだ」

「当然だべ」

 思わず素になって言った考助に、ラングは頷きながらそう応じた。

 

 そのラングの顔を見ながら、考助は難しい顔になって腕を組んでいった。

「それはうれしいのだけれど、突然すぎてなあ・・・・・・」

「やっぱり、難しいだか?」

 人形のような顔立ちをしたイグリッドにそんなことを言われると、考助としても断りづらくなる。

 さらに、それだけではなく、別のところからもイグリッドにとっての援護射撃があった。

 

「いいのではないかの。折角の誘いなのじゃから、是非ともイグリッドの故郷に行こうではないか」

 そう言ったシュレインの顔には、はっきりと地底の世界を見てみたいと書いてあった。

 どうみても着いて来る気まんまんのシュレインに、考助は頭の中に子供はどうするんだろうかと思い浮かべつつ、苦笑しながら言った。

「あ~。まあ、そういうことらしいんで、その招待をお受けいたします。ただ、いきなりは無理なので、後日きちんと日付は調整するという形で大丈夫かな?」

「もちろんだべ」

 考助の言葉にラングが力強く頷いたことで、イグリッドの本来の里への訪問が決まるのであった。

いきなりですが、地底へと旅立ちます。

イグリッドの登場時に、一方通行で戻れないとしていたのは、勿論覚えていますよ?w

ただ、そこはこれからの話にかかわって来るので、質問が来ても答えられません。

ネタバレになってしまうので。

きちんと事情があるということだけは言っておきます。


あと、イグリッドの方言については、どこの方言ということはありません。

敢えて言うならイグリッド語だと思っていただければw

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