表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
1343/1358

(19)特殊なメイドゴーレム

 主にコウヒとミツキが作っているメイドゴーレムは、現在では様々な用途に分けて作られている。

 一番分かり易いのは、家事用のメイドゴーレムだ。

 ただ、一口に家事用といっても、清掃や調理など細かく分けて作られる。

 なぜ一体のメイドゴーレムにしないのかといえば、単純にできる仕事の量が決まっているからだ。

 勿論、リソースを増やそうとして研究は続けているのだが、なかなか上手くいかないのが現状である。

 ただし、まったく方法がないというわけではないが、考助たちにとっても貴重な材料を使わなければならないため、複数の生産は不可能なのだ。

 

 そんないろいろな役目を持たされている各種メイドゴーレムだが、管理層には変わった用途で使っているものがいる。

 それがなにかといえば――――、

「前から不思議だったのですが、あのはなんのためにいるのでしょう~?」

 魔道具のことで質問があると研究室に入ってきたピーチが、とあるメイドゴーレムを指しながらそう聞いてきた。

 その指先を視線で追った考助は、「ああ」と頷きながら答えた。

「あれは、転移門の管理をしているんだよ」

 考助のその答えを聞いたピーチは、なるほどと頷いていた。

 

 現在、アマミヤの塔で使われている転移門の数は、通常の階層にある転移門以外に、軽く三桁を超えている。

 通常のルートとは違い、塔の中で移動するためのものだけでも二十以上になり、さらに外へと向けて転移するものを含めると、とても頭の中だけで管理しておくのは不可能なのだ。

 転移門は、ラゼクアマミヤ王国だけではなく、クラウンにとっても重要な位置づけにある。

 そのため、その情報は簡単に外に出していいものではない。

 

 アマミヤの塔で使われている転移門に関して、すべての情報を握っているのは考助、コウヒ、ミツキくらいしかいない。

 女性陣の中で一番多く把握しているフローリアでさえ、王国とクラウンで利用しているものを把握しているくらいだ。

 それ以外のアマミヤの塔にある転移門は、考助たち三人くらいしか正確には分かっていないのだ。

 その三人にしても、すべてを把握するのは不可能になってきているため、メイドゴーレムの出番というわけだ。

 ちなみに、当然だが転移門用のメイドゴーレムは、ほとんど研究室の外に出ることはなく、変なところから情報流出する危険性はない。

 

 ここで、ピーチについて来ていたコレットが、疑問が浮かんだという顔になって聞いてきた。

「ここにいる限りは大丈夫だとは思うけれど、連れ去られたりしたら大変なんじゃない?」

 考助の研究室があるのは研究室の奥なので、いまコレットが言ったようなことが起こる可能性は限りなく少ない。

 それでも、一パーセントの可能性がある限りは、対策をしておくことが重要なのだ。

「まあ、そうなんだけれどね。コウヒやミツキが、その辺のことを考えていないと思う?」

 逆にそう聞き返されたコレットは、なんともいえない顔になって首を左右に振った。

 

 考助が言った通り、転移門用のメイドゴーレムには、直接の危害が加えられたときのための防御策はしっかりとしている。

 そもそも管理層にあるメイドゴーレムは、いまでも最高の技術を使って作られている。

 はっきりいえば、機密の塊のような存在なので、防犯対策はしっかりとされているのだ。

 その一番分かり易い例は、メイドゴーレム自体に、戦闘能力がつけられていることだろう。

 メイドゴーレム単体だと、Cランクの魔物は倒すことができる。

 ただしそれは、あくまでも管理層にあるメイドゴーレムであって、一般にクラウンで作られている簡易版ではそんな能力はついていない。

 

「・・・・・・とまあ、ここまでは標準装備として――」

「それが、標準装備ですか~」

 Cランク程度の強さがある自律したゴーレムなど、普通ではありえない。

 考助の言葉にピーチが苦笑するのは、当然のことだと言えるだろう。

 

 その感想をきれいに無視して、考助はさらに続けて言った。

「――あのメイドゴーレムは、許可なく管理層から出るとすべてのデータを失うという機能が付いているんだよ」

「ああ、それはまた。・・・・・・凶悪ね」

 一瞬なんといっていいのか分からないという顔をしたコレットは、どうにか最後にそう絞り出した。

 もし、転移門の情報を欲してメイドゴーレムを盗み出したとして、その肝心の情報がきれいさっぱりなくなっていると知った場合には、コレットが言ったような感情を抱くだろう。

 そもそもそんなものを盗み出している時点で悪党だという事実は、この際きっぱりと無視をする。

 

 ここで、コレットの感想に頷きつつ、ピーチが首を傾げながら聞いてきた。

「それは一番いい対策でしょうが、そうなってしまった場合はどうするのですか~?」

 メイドゴーレムからデータが消えてしまえば、そこから先、管理層でも管理が難しくなるのではないか。

 ピーチは、そのことが気になったのだ。

「それはそれでまた別の場所で管理しているから、大丈夫だよ。どこにあるかは秘密だけれどね」

 考助は、少し笑いながらそう答えた。

 

 転移門の全データは、メイドゴーレムとその元になっているデータを管理する端末のような魔道具に保存されている。

 ただし、その端末(もどき)は、とても持ち運びができるような重さと大きさではない。

 防犯のためにわざとそう作っているのだ。

 また、その端末だと、利用者――この場合は考助たちが、いちいち端末がある場所へ移動しなければいけなくなる。

 その手間を省くために、メイドゴーレムを作ったといっても過言ではないのだ。

 

 二重三重の防犯対策をしていることを知って、ピーチとコレットは同時に納得顔で頷いていた。

「流石ですね~」

「防犯に関しては、まったく自重していないわね」

「それはね。そもそも他人の物を盗み出して、自分の利益にしようという魂胆が気に食わないし」

 考助は、肩をすくめながらそう言った。

 別に命まで取ろうとしているわけではないので、これくらいはしても良いだろうという考えなのだ。

 

 そのこと自体は、ピーチとコレットも反対するような要素はなにもない。

 ピーチは、もう一度転移門管理用のメイドゴーレムを見て、ため息交じりにこう言った。

「まあ、管理層のこんな奥深くまで来れるだけでも、とんでもない実力者ですから~」

 その一言が、大げさすぎる防犯対策をしている一番の理由になのであった。

こんなのも作っていますよ、ということで。


---------------------------------------------

今月の22日には書籍版の8巻が発売となります。

そちらも是非、よろしくお願いいたします。

m(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ