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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(15)ようやくの発見

 考助がそれに気づいたのは、眷属たちがいない階層の調査をしていた時のことだった。

 この時は飛竜のコーで上空を飛んでいて、魔物の動きで気になることがあり低空飛行をしていた。

 その際に、ふと視界に気になるものが入ってきたのだ。

「――うん? あれは?」

 魔物のことも気になっていたが、ついそちらの方に意識が向いてしまった。

 一緒に着いて来ていたミツキが、少し驚いていたほどだ。

 

 魔物のことはまた後でも構わないと考えた考助は、そのままコーを適当な場所に下ろした。

 そして、自身もコーから降りて、目的の場所へ向かって歩き始めた。

「考助様、どうかした?」

「ああ、うん。見間違いじゃなければ、探していたものがあったんだよね。まさか今になって見つかるとは思わなかったけれど」

 考助はそう言いながら先ほど見つけた木に向かって歩いて行った。

 ミツキは心の中で首を傾げつつも、考助のやることを止めずに一緒に着いていく。

 

 

 そして、考助が目指した木には、青い実がいっぱいなっている木だった。

「これは・・・・・・?」

 初めて見るその実に、ミツキは首を傾げながら考助に問いかけた。

「これ、多分梅の木だね。向こうではいっぱいあったんだけれど、こっちでは一度も見たことがなかったから、てっきりないもんだと思っていたよ」

 考助は、そう言いながら感慨深げに大きくため息をついた。

 

 何気に梅干しが好きだった考助は、こちらに来てから梅の木を探し回っていたのだ。

 それが、なかなか見つからず、ほとんど諦めていた状態での発見だっただけに、感動も一入である。

 ちなみに、なぜこちらの世界で梅の木と梅が見つからないのかは、不明である。

 一部では嫌がられている梅干しだが、別に日本だけの専売特許というわけではない。

 似たような漬け方をしている食べ物は、ほかの国でもあったはずだ。

 

 それはともかく、見た目はまんま青梅の実であるその木を見上げながら、考助はさてどうするかと考えた。

 空から周辺を見た感じでは、この木は一本しか生えていなかった。

 勿論、実を取ったからといってすぐに枯れてしまうわけではないので、そこは問題はない。

 考助が気にしているのは、どうにかしてこの木を増やすことができないかということだった。

 

 悩む考助に、ミツキが首を傾げながら聞いてきた。

「普通に種を育てるだけでは、ダメなの?」

「いや、駄目ってことはないんだけれど、素人がやってそんなに簡単に行くかなと」

 そう言いつつもやってみるしかないことは考助もよくわかっている。

 

 そこまで考えた考助だったが、ふと思い出したように手をポンと合わせた。

「あ、そうか。折角だから専門家に聞いてみよう」

 考助がそう言うのを聞いたミツキは、専門家というのが誰であるのか分かって、それ以上なにかを言うのは止めた。

 そして、考助はすぐにその専門家を呼び出した。

「エセナ、ちょっといいかな?」

「はい、兄様」

 エセナは、考助の呼びかけに応じてすぐに姿を見せた。

 

 久しぶりの呼び出しだったためか、エセナはうれしそうな顔で笑っていた。

「この木なんだけれど、増やすことって出来る?」

 考助が指刺した木を見て、エセナはすぐに頷いた。

「特に病気とかもなさそうなので問題はありませんが・・・・・・なにかありましたか?」

「いや、探していたんだけれどなかなか見つからなくってね。ようやく見つけたから、ちゃんと枯れさせずに育てたいと思って。この木はこのままここに残してね」

 考助の言葉を聞いたエセナは、それでも首を傾げていた。

 

 考助がどうしたのかと聞く前に、エセナは言いにくそうな顔になって言ってきた。

「この木でしたら、私が管理している場所にもいくつか生えていますが・・・・・・そういえば実もたくさんなっていますね。食用にでもされるのでしょうか?」

「え・・・・・・」

 エセナからの情報に、考助は思わず呆然とした顔になってしまった。

 その気持ちとしては、これまでの長い間探していた苦労はなんだったんだというものだ。

 

 最初からエセナに聞けばよかったのかもしれないが、そもそも現物をなしに上手く説明できたか分からない。

 実がなる木はたくさんあるし、そもそも木の実を食用することがないエセナに、梅の実のことをきちんと伝えられたかは不明だ。

 そう自分の中で言い訳をした考助は、気を取り直して言った。

「そ、そう。それだったら実を取って行っても大丈夫かな?」

「それは勿論大丈夫でしょうが・・・・・・このあたりのことは、よくわかりません。場所を変えて採取しますか?」

 どうせだったらエセナが管理できている場所で収穫すればいいと考えて、考助はその提案にすぐに頷いた。

 いきなり梅の木を増やすという苦労をせずに梅の実が手に入るのであれば、それに越したことはないのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 エセナの言葉に従って、エルフがいる階層に場所を移した考助は、挨拶もそこそこに、そのまま梅の木がある場所へと移動した。

 その際、珍しく考助が来ていることに興味を持ったのか、シェリルも着いて来た。

 ちなみに、コレットはアマミヤの塔の第五層の家で過ごしているので、こちらにはいない。

 

 そして、エセナの案内にしたがって、考助はすぐに梅の木を見つけることができた。

 季節もしっかりとあっているのか、多くの実がなっている。

「おお~、ほんとだ。ちゃんといっぱいなっているね。取っても大丈夫なんだよね?」

「はい。勿論です」

 考助の確認に、エセナはすぐに頷いてきた。

 実を取ったくらいで枯れてしまうようなことにはならない。

 

 シェリルもそれはよくわかっているので止めることはしなかったが、気にしたのは別のことだ。

「そこまで珍しい木というわけではないのですが、その実は食用にでもされるのでしょうか?」

「あれ? エルフたちは知らないんだ?」

 木に詳しいエルフのことなので、てっきり食用にしていると考えていた考助だったが、シェリルの様子を見てそうではないことをここで知った。

「はい。珍しい木ではありませんが、そこまで多いわけでもないので、敢えて食用にすることはないです」

「ああ、なるほど」

 エルフがいる階層は、さすがにエセナが管理しているだけあって、多くの食用植物が生えている。

 そのため、わざわざ数が少なめの新しい物にまで手を伸ばすことのほうが珍しいのだ。

 

 そもそも梅の実自体もそのまま食べて美味しい物ではない(好みにもよるだろうが)。

 それならば、今まで通りの収穫を行ったほうがいいと考えるのは、当然のことだろう。

 そう考えた考助は、頷きながらもその視線は、梅の実にロックオンされていた。

「まあ、上手くいくかはやってみないと分からないけれど・・・・・・とりあえず採取からかな?」

 梅の実を取ること自体は、難しいことではない。

 

 シェリルは、考助の言葉に頷いて「手伝います」と申し出てきた。

 そして、ふたりがかりで梅の実を取り始めたのだが、何キロも取っても仕方ないので、適当なところでやめておいた。

 アイテムボックスがあるので、それこそ取り尽すほどに取ってしまっても大丈夫なのだが、さすがにそれは自重しておくのであった。

そういえば書いていなかったなあと思ったので書いてみました。


なぜ今頃になって見つけたという突っ込みはなしでw

たまたまです、としか答えようがないですから。


次は調理(加工?)編です。

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