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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(14)分からないものは分からない

 南西の塔で見つけた不可思議現象が消えた後、考助はフローリアと一緒に管理層へと戻ってきた。

「うーん・・・・・・。あれはなんだったのか」

 首をひねりながらそう呟く考助に、フローリアもわけが分からないという顔をして首を振った。

「どう見ても氾濫の予兆のように見えたんだがな」

 考助が話していた通りに、魔物たちがまとまって行動しているのは見えていた。

 ところが、その動きを確認してからしばらくして、魔物たちは再びいつものような動きに戻ったのである。

 不思議だったのは、その間、一切の争いがなかったということだ。

 魔物は、一カ所に集まれば、当然のように魔物同士でも縄張り争いをする。

 それがない時点で氾濫だと考えていた考助は、決して間違っていたわけではない。

 もし間違っていたとすれば、それはその前提自体が間違っているということになる。

 

 揃って首をひねりながら戻ってきた考助とフローリアを見て、くつろぎスペースにいたシルヴィアとピーチが顔を見合わせてから聞いてきた。

「なにかあったのですか?」

「ですね~。二人とも面白い顔になっていますよ」

 聞きようによってはひどい言い草だが、考助とフローリアは自身の顔を自覚していただけに、反論する気にはならなかった。

 ついでに、そんなことよりも、南西の塔で起こっていた不可思議現象のほうが気になっている。

 

 

 とはいえ、いつまでも揶揄われるのは不本意なので、考助とフローリアは順番に南西の塔で起こっていたことをシルヴィアとピーチに話した。

「――というわけで、もしかしたら氾濫の原因を突き止めた・・・・・・かもしれないと思ったんだけれど、空振りに終わったんだよね」

「なるほど~」

 話を聞き終えたピーチが、考助とフローリアが揃ってがっかりしていた理由が分かって納得顔になっていた。

 

 氾濫の原因が分かったとなれば、起こる前に対処できる可能性もあるため、十分に意義のある成果となる。

 もし本当に見つかったとすれば、考助は隠さずにトワ辺りに伝えるだろう。

 そうすれば、町や村が丸々襲われて潰されるなんて自体は、起こる確率が非常に低くなるはずなのだ。

 いくら神として、自身の行いを自制している考助も、この件に関しては秘密にしておくつもりはなかった。

 

 だからこそ、氾濫が起こらずにそのまま自然消滅してしまった今回の現象には、隠しきれない落胆を覚えているのである。

「せめて、リーダー種だけでも確認出来たらよかったんだけれどなあ・・・・・・」

 たとえ集団としてまとまらなくても、リーダー種さえ見つけることができれば、それは氾濫の前兆だったと言い切ることができる。

 逆に言えば、リーダー種が出ていなければ、いくら多くの魔物が集まっていたとしても氾濫だと言い切ることはできない。

 発生したリーダー種が複数種の魔物をまとめて動かしているということが氾濫の定義なので、発生していただけでは氾濫だとは言えない。

 それでも、今回確認した現象で、リーダー種が生まれていれば、間違いなく氾濫の前兆だと言い切っていい状態だった。

 

 考助の話を聞いて考えるような表情になっていたシルヴィアが、ここで疑問を投げかけてきた。

「リーダー種が出なかったのは残念ですが、ではなぜ魔物たちは集まっていたのでしょうか」

 今回の現象で、複数種類の魔物が一カ所に集まっていたのは確かである。

 それはそれで、不可思議現象であることには違いない。

 シルヴィアが疑問に思うのも当然だった。

 というよりも、それが不思議だったからこそ最初の考助とフローリアの様子に戻るのだ。

 

 シルヴィアの疑問に、フローリアがため息交じりに言った。

「それが分かっていれば、私たちもこんな顔をしていないのだがな」

「なにかがあったのは間違いないのだけれど、それがなにかはさっぱり分からないんだよね」

 一応、魔物が集まっていたところを中心に、うろうろと調査をしてみたのだが、原因らしいものはなにもなかった。

 あったのは、普通としか思えないフィールドが広がっているだけだった。

 これでなにか分かり易いものでも現地にあったのならよかったのだが、残念ながら痕跡らしいものは、まったく見つからなかったのである。

 

 

 珍しくお手上げ状態の考助は、ふとピーチを見て言った。

「折角ピーチがいるんだから、占いでもしてもらおうか」

 それこそ神にすがる思いで、考助はそんなことを言い出した。

 自分自身が神の一柱であることは、この際横に置いておく。

「占いですか~。答えが見つかるとは限りませんよ?」

「それはよくわかっているよ」

 念を押してきたピーチに、考助もすぐに頷き返した。

 占いが万能ではないことは、すでにこれまでの経験でよくわかっている。

 

 占いはあくまでもなにかのきっかけになればいいと、考助は考えている。

 だからこそ、今回のようなまったく手掛かりのないことには、占いに頼ってみる気になったのだ。

 ――――ところが、である。

「ああ、これは駄目ですね~」

 混ぜていたカードをあっさりと止めて、ピーチはそんなことを言ってきた。

 

 カードを開くどころか、混ぜる段階でお手上げ宣言をしてきたピーチに、考助はどこか納得した表情で頷いた。

「ああ。やっぱり?」

 ピーチに占いを頼んで、同じような状態になったことは何度もある。

 そのため、考助もある程度は予想ができていたのだ。

「はい~。やっぱり占う対象が広すぎる・・・・・・のでしょうか~」

 今回の現象の原因を占おうとしたのだが、やはり雲をつかむような状態であるのは占いにとっても同じようだ。

 ついでに、考助のことを占おうとしても、そもそも占いの出た結果が今回の件に類することなのかが判断がつかない。

 

 結局占いでも駄目だと分かった考助は、すぐに諦めることにした。

 勿論、占いで結果が出なかったからといって、ピーチに怒りをぶつけるような馬鹿な真似をするつもりは全くない。

 というよりも、そんなことを考えたことすらない。

 分からないことは分からないこととして、同じような現象が起こったときに類似案件として継続調査をしていくことはよくあることだ。

 今回の件もまた、要継続調査ということで、塔の不可思議現象の一つとしてまとめられるのであった。

スパっと解決!

・・・・・・というわけには、いきません。

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