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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(12)泳ぎ

 アマミヤの塔の麓辺りにある拠点は、現在でも最初の頃とほとんど変わらない広さを維持している。

 それは、周辺にある畑も含めてのことだ。

 スライムを使えばいくらでも畑を増やすことはできるのだが、敢えて広げることはしていない。

 スライムを増やすだけなら塔の階層を使えばいいし、畑で採れる採取物も増やす必要はない。

 そもそも農産物を売って生活をするつもりがないので、今のままで十分なのだ。

 専業で農業をやっている者たちからすれば、お遊び感覚と言われても仕方ないとさえ考助は考えている。

 

 とにかく、拠点そのものはほとんど変わることなく、ずっと同じ調子で管理がされている。

「――――のは、いいんだけれど……」

 建物の外に出て、家の入口を見た考助は、ぽつりとそう呟いた。

「なにか問題でもありましたか?」

 考助に付き合って外に出ていたシルヴィアが、首を傾げながらそう聞いた。

 特に前振りとかがあったわけではないので、さすがのシルヴィアも意味が分からなかったのだ。

 

 つい言葉に出してしまったことに気付いた考助は、少しだけ恥ずかしそうな顔になった。

「いや、ここの広さはこのままでいいとは思うのだけれど、なにか他に出来ることはないかなーと思ってね」

「なにか出来ること、ですか」

 考助の言葉を聞いて、シルヴィアは一度、少しだけ考えるような表情になってからさらに続けた。

「畑以外にということですよね?」

「まあね」

 シルヴィアの問いかけに、考助はコクリと頷いた。

 

 はっきりとそう答えたはいいものの、考助もなにかやりたいことが具体的に浮かんでいるわけではない。

「折角作った畑はつぶしたくないから、出来るだけ狭い範囲でできることがいいかなあ・・・・・・」

 ただ、狭い範囲といっても畑にしていない部分は結構残っている。

 以前いた世界の住宅事情からすれば、余裕でプールが作れるくらいの広さが残っているのだ。

 

 そう考えた考助は、ふとなにかを思いついたような顔になった。

「・・・・・・そうか。プールか」

 このときの考助は、別に桃色ピンク思考をしていたわけではない。

 この世界では、いったん町の外に出れば、普通に魔物が出て来る。

 そのため、漁師町などを除けば、泳ぎができるものは極端に少ないのだ。

 ちなみに、考助自身は泳げるが、嫁んさんズを含めて子供たちが泳ぐところを見たことが、全くではないが、ほとんどなかった。

 

 そもそも元の世界の日本で小学生が泳ぎを教わるようになったのは、理由の一つとして川の氾濫があった。

 川が増水であふれた時、そのいざという時のために、多少なりとも泳ぎができないとだめだからという理由で始まった・・・・・・という話を考助はどこかで聞いたことがあった。

 その真偽はともかくとして、理由自体は悪いことではない。

 そもそも今いる世界でも、川の氾濫は普通にあるのだ。

 しかも、土木技術はさほど高くないため、しょっちゅう起こっているともいえる。

 ちなみに、塔の階層でもきちんと雨が降るので、川の氾濫は起こっている。

 

 せっかく学校というものを作ったのだから、そこで泳ぎを教えてはどうかと考助は思い立ったのだ。

 人の命を救うためなのだから別に現人神が直接手を差し伸べてもいいだろうと、考助の中にある基準(?)にも合格している。

 勿論、作る場所はこの拠点ではない。

「そうかそうか。プールか。その手があったな」

 突然納得した顔でそんなことを言い始めた考助を見て、シルヴィアは不思議そうな顔でそれを見るのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 管理層に戻った考助は、さっそくトワを呼び出した。

 といっても、国王であるトワはすぐに来れるわけではない。

 緊急ではなくゆっくりでいいと伝えていたので、トワが来たのは二日後の夕方だった。

「――珍しく呼び出しまでして、なにか用かと思えばそういうことですか」

 考助から話を聞いたトワは、考えるような顔になって、ゆっくり頷いた。

 

「意図は分かりますし、泳ぎを習慣づけたいという目的もわかりますが・・・・・・」

「やっぱり難しい?」

 考助は、首を傾げながらそう聞いた。

「いえ、どうでしょうか。はっきり言えば、やってみなければ分からないといったところでしょう」

「まあ、初めて尽くしのことだからな」

 トワの意見を支持するように、傍で話を聞いていたフローリアも同意した。

 

 ただ、フローリアは前もって考助から意見を聞いていたので、トワが考え付くような問題点にもきちんと気付いていた。

 その上で、今回の話をトワにしたのだ。

「別に考助が言ったとおりに、学校だけで教える必要はあるまい。そもそも、一番必要になるのは、冒険者たちではないか?」

 冒険者は、移動をする際に水場を探して歩くことが基本となる。

 勿論、雨が降った日などはむやみやたらに近づかないということもしているのだが、遠征の時にはそういうわけにはいかないことも多々ある。

「まあ、そうでしょうね」

 フローリアの言いたいことを理解したトワは、そう言いながら頷き返した。

 

 それを確認したフローリアは、さらに続けて言った。

「それに、冒険者に限らず、軍にだって必要なことだとは思うぞ? それらのところから順番に教えて行けばいいじゃないか」

「まあ、確かに・・・・・・」

 最初から一気に一般に広めていくのではなく、限定したところから教えて行けばいいというフローリアの説明に、トワも納得の表情になっていた。

 そもそも義務教育も広まっていない世界で、いきなりすべての人に泳ぎを教えようというのが不可能なのである。

 当然考助もそんな無茶なことをしろと押し付けるつもりはない。

 

 考助は、最後にまとめるようにトワを見ながら言った。

「そもそも川でも魔物が出てくるような世界で泳ぎを教わって、どこまで実効性があるかは疑問だけれどね。やらないでいるよりは、やって後悔した方がいいんじゃない? まあ、どうするかの判断は任せるけれど」

「そういうことですか」

 考助の意図を理解したトワは、納得した顔で頷き返した。

 

 王だからこそ失敗してはいけないのではなく、失敗を恐れて何もしないでいるほうが駄目だという考助に、トワは内心で苦笑していた。

 確かにフローリアから王位を継いですでに結構な年月が経っている。

 その間に、守りに入っていたのではないかと言われれば、確かにそういうところが増えているとも言えなくはない。

 久しぶりに目が覚めるような思いをしたトワは、考えておきますと返答をしつつ、頭の中ではすでにどう実行していくかを考え始めているのであった。

なんか、以前に同じような話を書いたことがあったような・・・・・・と思いつつ、結局最後まで書いてしまいました。


最近、こういうことが多いですね><

(ネタ切れか!?)

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