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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(11)出した結論

「――――それで考助は悩んでいるのか」

 シルヴィアから話を聞いたフローリアは、知恵熱を出しそうなほどな顔をしている考助を見て、そう言いながら苦笑した。

「そんなに急ぐ必要はないのではと言ったのですが・・・・・・」

「まあ、コウスケのことだから、一度悩み始めると深みにハマるだろうな」

 渋い顔をしているシルヴィアに、フローリアは同じような顔になって頷いた。

 

 フローリアの言葉に、シルヴィアはため息をついた。

「余計なことを言ってしまったのでしょうか・・・・・・」

 そう言って悩む様子を見せるシルヴィアに、フローリアは少しだけ怒ったような顔になった。

「そんなわけがあるか。いつか誰かが言うことになったはずだ。それがシルヴィアに回ってきただけだ。それに、どうせコウスケのことだから、いずれ自分で気付いたのではないか?」

 そのありそうな可能性に、シルヴィアは一瞬あっけにとられたような顔になって、クスリと笑った。

 その顔を見れば、確かにそうだと思っていることは誰が見てもわかるものだった。

 

 この場にはシルヴィアとフローリアしかいないので、慰めた(?)フローリアが笑いながらさらに続けて言った。

「シルヴィアもコウスケと同じく考えすぎるときがあるからな。似た者同士というべきか」

「あら。でもそれは、あなたも同じではありませんか?」

 混ぜっ返すように言ってきたフローリアに、今度はシルヴィアも反撃した。

 ただし、反撃とはいっても、仲のいいもの同士のじゃれあいでしかない。

 フローリアとシルヴィアは、すぐにクスリと笑いあった

 

 お互いに笑いを収めたのを確認してから、フローリアが安心させるような顔になった。

「まあ、コウスケのことだから、ある程度まで悩んだら復活するだろうな。いまは悩ませておいたほうがいい」

「そうですね」

 いつものような結論が出たところで、ふたりはいつも通りに頷きあった。

 もう何度も繰り返しているやり取りだからこそ、今回も大丈夫だという安心感が二人にはあるのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなシルヴィアとフローリアのやり取りがあった数日後、ふたりの予想に違わず、考助はいつも通りの顔になってくつろぎスペースで会話をしていた。

「――というわけで、やっぱり今すぐに決めるのは諦めました」

 遠い目をしてそんなことを言ってきた考助に、フローリアが苦笑を返した。

「なんだ。今回は随分とあっさり諦めたな」

「いや、だって、下手に僕が方向性を決めたら狼たちの将来が定まってしまうから。下手に勢いだけで決めるのは駄目かなと、思い直したわけで」

 言いわけのようにそう言った考助に、フローリアがなるほどと頷いた。

 

 納得のできる理由だけに、シルヴィアもフローリアと同じような顔になっている。

 ただ、気になることはあったので、それを聞くことにした。

「コウスケ様が出した結論なのでそれはそれでいいのですが、では眷属たちは今まで通りなにも道を決めないということでいいのですか?」

「まあ、そういうことになるかな? いずれは決まっていくのかも知れないけれどね」

 加護を与えておいて今更だが、自分自身で強制してまで道を決めるのは間違いだと今の考助は結論づけたのである。

 

 勿論、ワンリから教えて貰った現状の問題は認識している。

 それはそれで放置できる問題ではないので、いずれは解決していくつもりではいる。

 とはいえ、種族の方向性を決めるような重大事をたった数日だけで決めたくはないという思いが先に立ったのだ。

 

 

 ある意味で当然といえる考助の結論に、シルヴィアとフローリアは納得顔で頷いた。

 特にシルヴィアの顔には、安堵がわずかに浮かんでいた。

 考助に言った言葉には責任を持っているが、それでも変な方向に進まなくて済みそうだと感じたためである。

 そのシルヴィアに向かって微笑みを見せたフローリアが、考助を見て言った。

「コウスケの言いたいことは分かった。まあ、落ち着くべきところに落ち着いたということだな」

「そうかな? まあ、そうかもね」

 一度首を傾げた考助だったが、すぐに納得して頷いた。

 

 今回の件は、考助にとってもあまり自信のある結論ではなかったのだ。

 一言で言ってしまえば、単なる先送りでしかないのだから、考助の中に不安のようなものが出て来るのは当然のことだ。

 そんな考助に、フローリアが慰めるわけではないが、フォローするように言った。

「もともと政治をしていれば、決められない問題なんてものはいくらでも出て来る。ましてや今回は、思考どころか普段の生活もまったく違っている種だからな。簡単に決められないというのは当然だ」

 さらにいえば、考助の場合はそれに加えて神としての言葉(神託)になりかねないという問題もある。

 というよりも、間違いなく神託になるはずだ。

 いくら考助でも、そんなことを勢いだけで決めるのはできない。

 

 フローリアの感覚では当たり前の結果だということに、考助は安心したように頷いた。

「そう言ってくれると助かるよ。ただ、ねえ・・・・・・」

「まだなにか問題があるか?」

「いや、ワンリにはどう言ったものかと」

 今回の結論を出すにあたって一番悩んだところがそこだった。

 問題を先送りにするということは、折角ワンリが教えてくれたことを無駄にする・・・・・・とまでは言わないまでも、不意にすることに近い状態には違いない。

 

 悩ましい顔になっている考助に、フローリアが安心させるような顔で言った。

「そこは心配しなくてもいい。というよりも、どうせ考助は今すぐに結論を出さないだけで、この先も悩み続けるのだろう? だったら時折でもその姿を見せてやればいい」

「そうですね。それに、ワンリには私たちから説明しますよ。その方がいいでしょうから」

フローリアの言葉を引き継いで、シルヴィアもそう言ってきた。

 時には当事者本人が説明するよりも、第三者が話をした方がいい時もある。

 今回がまさにその状況だということは、フローリアもシルヴィアもわかっているのだ。

 

 シルヴィアとフローリアからお墨付き(?)を得て、考助も安心した顔になった。

 二人であればフォローはしっかりとしてくれると分かっていたが、それでもきちんと言葉にされれば安心できる。

 また、だからこそシルヴィアとフローリアも言葉に出して言ったのだ。

 長い間一緒にいて、言葉に出さなくてもわかることはあるが、言ってほしいと思う時もある。

 それがこういう時なんだろうなと、考助は二人の顔を見てそんなことを考えるのであった。

結局書いちゃいました。考助が出した結論。

まあ、こんなやり取りがあったんだということで。

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