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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(2)お粗末な結果

「それにしても、なんだってあんな噂を流しているんだろうねえ?」

 トワに調査を依頼して結果を待っている間、考助がふと思い出したようにそう言った。

 適当な理由であればいくらでも思いつく。

 例えば、アマミヤの塔にいるとされているヴァンパイアの評判を落とすため。

 あるいは、ヴァンパイアだと想像させることによって、本来の目的から目を逸らさせるようにするため。

 ――等々。

 

 思い付きでよければたくさんある理由だが、考助からすれば、どれもこれも決定打に欠けるように思えるのだ。

 発生源が北の街ということで、大元は北大陸からだとも想像できるが、それも絶対とは言い難い。

 北大陸の策略だと見せかけて、ほかの大陸からの仕掛けだとも考えられる。

 今ある情報だけでは、軽率に動けないというのが現状だった。

 だからこそ、トワからの情報を待っているのだ。

 

 考助の呟きを聞いたシルヴィアも、同じような顔になりながら頷いた。

「そうですね。そもそも塔の外でヴァンパイアの評判が下がっても、特に影響はないと思うのですが・・・・・・」

「まったくだね」

 シルヴィアの感想に考助が頷いた。

 塔にいるヴァンパイアは、階層の中だけで完結しているのだ。

 外で変な噂が広まったとしても大した影響はない。

 塔―というよりもラゼクアマミヤの運営に影響はあるかも知れないが、それは国が対処すべきことでヴァンパイアや考助たちが出る幕ではないともいえる。

 

 もしこの場にシュレインがいれば、申し訳なさそうな顔をしていたかもしれないが、すでにヴァミリニア城に戻っているので話を聞かれる心配はない。

 だからこそ考助とシルヴィアは、こんなにのんびりと話題に出しているのだ。

「まあ、どういうことになるにせよ、結局国が対処することになりそうな気もするけれどね」

 自分たちの出番はないだろうと宣言する考助に、シルヴィアも頷いてから答えた。

「そうかもしれませんね」

 噂を聞いた当初は、塔にとってもなにかあると考えていたシルヴィアだったが、少し落ち着いて見れば、大したことがないようにも思える。

 所詮勘でしかないので、外れたとしても多少がっかりするくらいで済む。

 

 あっさりと頷いているシルヴィアを見ながら考助が少しだけ考えるように言った。

「もしかしたら、シルヴィアの勘も先読みができるようになっているのかもね」

「どういうことでしょう?」

「いや、なんとなくそう思っただけなんだけれどね。将来的に大事になりそうな事態を前もって察知しているってこと」

 考助のその考えに、シルヴィアは小さく首を傾げた。

「そんなことがあるのでしょうか?」

「さあ、どうだろうね? 勘でもなんでもなくて、ただの予測でもあるけれどね。そうなることもあるかなって」

 シルヴィアの巫女としての力は、未だもって伸びている。

 その力の行きつく先に、そうした予知とか予報的なものがあってもおかしくはないというのが、考助の考えなのだ。

 

 そんな考助に、シルヴィアが探るような視線を向けて聞いた。

「コウスケさんが、そうなってほしいと考えていらっしゃると?」

「いんや。なんか矛盾するみたいだけれどね。結局は本人の気持ち次第だからね。僕からどんな能力を身に着けてほしいとかの希望はないよ」

 考助は昔から、メンバーそれぞれにどんな力を持ってほしいと言ったことはほとんどない。

 それを言ってしまえば、神としての押し付けになってしまうし、傍にいてくれるだけで十分に役に立ってもらえていると考えているのだ。

「そうですか」

 考助はその思いを口にすることはなかったが、シルヴィアは目を細めながら少しだけ笑うのであった。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助から話を聞いたトワは、すぐに北の街での調査を開始した。

 そして一週間後、トワの姿が管理層のくつろぎスペースにあった。

「――というわけで、裏にいたのはやはり北の一国でした。といっても、そこまで深刻なものじゃなかったですが」

「深刻じゃないって?」

「向こうも上手くいけば万々歳と考えていただけなのか、当事者との連絡もほとんどとっていなかったようです」

 そこからトワは、軽く事件の背景を語り始めた。

 

 要は、セントラル大陸の北の街でのラゼクアマミヤの影響力を低下させて、以前のように直接の支配が及ぶようにすることが目的だったようだ。

 ただ、それは以前からも繰り返されていることであって、今回の件に特に力を入れていたということはない。

 というよりも、最初の計画段階で放置されていた案件で、あとは勝手に当事者十人程度だけがやる気になって実行したというわけだ。

 結果から見れば、お粗末としか言いようがない状態だったので、考助から指摘されるまで国が気付かなかったのも無理はない。

 

 ついでに、噛み後を残した犯人は、シュレインが予想した通りの未熟者というのにふさわしい者で、純粋なヴァンパイアの血族ではなく、自然発生的に生まれたばかりのヴァンパイアだった。

 そのヴァンパイアが、上手くおだてられて、相当の金を積まれて今回の件に協力したというわけである。

 そうしたはぐれのヴァンパイアが発生することは、この世界ではまれに起こることだ。

 普通であれば、経験のあるヴァンパイアの元に保護されるのだが、中には中二病的に勘違いを起こす者もいる。

 時には教会関係者が、保護の名の下にヴァンパイアを囲い込むこともあるのだ。

 

「最初からそうするつもりだったのかはわかりませんが、話と金を渡すだけ渡しておいて、後は好きにしろという状態だったので、責任を負わせることもできませんでした」

 本当であれば、金を渡しているという証拠がある時点で関係が成り立っていると突っ込みたいところだが、その金自体は別の名目で渡されているので突っ込み切ることができない。

 以前の関係をついて攻めようとしても、知らぬ存ぜぬの主張が簡単に通る程度の繋がりしかなかったのも痛いところだ。

 もっとも、その程度の関係しかなかったからこそ、今回のようなお粗末な結果にしかならなかったともいえるのだが。

 

 ともあれ、事件が決着したことは紛れもない事実である。

 考助にしてみれば、国家間の関係はもうほとんど関係がないことなので、計画をした相手国に責任が問える問えないは関係のないことだ。

「そう。まあ、国同士のやり取りはそっちに任せるよ。とにかく、事件が無事に終わったんだったらよかった」

 今回は、ほとんど笑い話のような感じで終わったからよかったが、もし本格的に人の心にヴァンパイアに対する忌避が植え付けられたらどうなっていたかわからない。

 そういう意味では、噂の段階でシルヴィアの耳に入ったのは、結果としては良かったともいえるだろう。

 

 

 考助が特に問題視しなかったことで、トワは慌ただしく執務へと戻った。

 今回は事件の報告だけをするためだけに来たので、ゆっくりする暇もなかったようである。

 これで事件そのものは終わったと言えるのだが、一つだけ問題が起こった。

 それがなにかと言えば、

「なんじゃそれは。その半端者を連れてきてやれば、きっちり教育してやるのじゃが」

 と、考助に対して憤りを見せたシュレインだった。

「まあまあ。犯人であることは間違いないんだから、処分は国に任せようよ」

「むう。仕方あるまいの」

 考助になだめられて落ち着きを取り戻したシュレインは、しぶしぶと言った様子でそう言いながら頷くのであった。

決着しました。

まあ、結果自体はどうでもいいという感じですがw

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