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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(14)もう一つの目的

 会食の終盤、デザートが出てきて、そろそろ夕食(会食?)も終わりかといった頃になって、シェライラがふと思い出したような顔で聞いてきた。

「そういえば、この後はどうするの? 旅は続けるの?」

「いや、もう十分楽しみましたからね。ここで何泊かしたら、戻りますよ」

「そうなの。寂しくなるわね」

 本当に寂しそうな顔になって笑ったシェライラに、フローリアが首を振りながら言った。

「別に、今生の別れというわけではないのですから、連絡を取り合えばいいのではありませんか?」

「あら、どうやって?」

 基本的に塔の中で活動しているフローリアは、連絡を取る手段がない。

 

 ・・・・・・と、世間一般には思われている。

「ああ。王都にある父上の屋敷に手紙を送ってくれれば、着くようにしておきますよ」

 アレクが王都に住んでいることは、すでに多くの人が知っていることだ。

 支部長として赴任していたのに加えて、そもそも既に返上しているとはいえ、元の身分は王子なのだから話題にならないはずがない。

「本当に? それなら安心ね」

 これからは連絡を取る手段があると分かったシェライラが、嬉しそうな顔で頷いた。

 

 そのやり取りを聞いていたロスシーが、若干顔を引きつされていたが、ふたりとも見なかったふりをしている。

 ラゼクアマミヤの前女王であり、今も現人神の夫人として知られているフローリアは、各所から繋ぎを取りたいと思われている。

 もしいつでも連絡が取れる権利を得られるとしたら、各国の王家をはじめとして、様々な団体が名乗りを上げてくるはずだ。

 ロスシーは、その手段をあっという間に得てしまったことと、これから先のことを考えて頭を抱えることになる。

 もっとも、あっさりとそれを手に入れることになったシェライラは、個人的な用事でしか使うつもりはないので、全く無意味な悩みになるのだが。

 

 そんなことを考えているロスシーを余所に、フローリアとシェライラの会話は続いていた。

「うちのファースとヘルダを助けたのはともかく、ただ私に会いに来てくれたのかしら?」

「いえ、本当は街を見て帰るつもりだったのですよ。ただ、ここに来る途中でシェラ姉がいると分かったので、寄ってみようと考えたのです」

「あら。それは嬉しいわね」

「あとは、もう一つ目的があったのですが、それは残念ながら無理そうです」

 フローリアが無念そうな顔になってそう言うと、ここでミアが少しだけ驚いたような顔になっていた。

 シェライラと会えればいいという話は聞いていたのだが、もう一つの目的は知らなかったのだ。

 

 きちんとミアの表情に気付いたシェライラが、再度フローリアを見ながら聞いた。

「そうなの? ミア()は知らなかったようだけれど?」

「それはそうでしょうね。言っていなかったですから」

 そう言ったフローリアは、残念そうな顔をしていながらも、どこか楽しそうな色も混じっていた。

 そして、そんなフローリアの顔を見たミアは、嫌な予感に一瞬その身を震わせた。

 

 きっちりとその様子を見ていたフローリアは、ニコリと笑ってから続けて言った。

「折角の機会なので、ミアのお相手でも見つかればなと思っていたのですが、やはり無理でした」

「は、母上っ!?」

「あら。・・・・・・あらあら、まあまあ」

 慌てた様子で椅子から立ち上がるミアを見て、さらににやけているフローリアを確認したシェライラは、交互に見ながら頬を抑えた。

 仲のいい親子の反応を見て、どう応じていいのかと悩んでいるのだ。

 

 ちなみに、このやり取りを聞いて、ロスシーはピクリと頬を動かしていたが、これも気付かなかったフリをしている。

 半分冗談のようなノリでの話なので、本気で受け止められても困ったことになる。

 そのため、この場はスルーするのが正解なのである。

 

 ミアの様子を見て、さらにフローリアが言った。

「この調子ですから、無理にあてがおうとしても、すぐに逃げてしまうのですよ。良い話を聞くのは、当分先のことになるでしょうね」

「そう。残念なことね」

 ため息交じりにシェライラがそう応えるのと同時に、ミアがこめかみをピクピクさせながらフローリアをじろりと睨んだ。

「母上、戯れもそれくらいにしていただけませんか?」

 フローリアを見れば、完全に揶揄う調子モードになっているのが分かる。

 かといって、この場で怒り出すわけにもいかず、睨むことしかできないのだ。

 

 そんなミアを見て、フローリアはフフと笑いながら言った。

「そんな顔をするな。ただの冗談ではないか」

「母上の場合は、冗談ではすまされないと思うのですが?」

 ジト目でそう言ったミアを見て、フローリアは肩をすくめた。

「たまにはいいじゃないか」

 まったく反省する様子を見せないフローリアに、ミアはため息をつくだけでそれ以上は何も言わなかった。

 

 やっぱり仲のいい親子を見て、シェライラはコロコロと笑いながら言った。

「あら。冗談なの?」

「まあ、そういうことにしておいてください」

 シェライラの問いかけに、フローリアが苦笑しながら答えた。

 これ以上この場で揶揄うと、後から(考助に)何を言われるかわからない。

 きちんと加減が分かっているからこそできる戯れなのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 翌日、宣言通りフローリアとミアは公爵家を後にした。

 その際に、やはりシェライラが寂しそうにしていたが、手紙のやり取りはできると言って元気づけた後で別れた。

 見送りの際は、現在屋敷にいる公爵家の面々が総出で対応したのは言うまでもない。

 

 フローリアとミアは、来た時とは違って、帰りは護衛の依頼を受けるわけでもなく、町で馬車を借りて帰った。

 これ以上は塔の管理のことも心配なので、どこかによるでもなく真っ直ぐに帰ることになったのは、当然というべきかミアの意見が反映した形だ。

 とはいえ、馬の体力のことを考えて、決して焦ることなくむしろのんびりとした道中だった。

 そんなこんなで、途中魔物を倒したりしながら、ふたりは無事に王都へと到着するのであった。

ちょっと強引かも知れませんが、これで終わりですw

帰りは超カット!w

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