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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第10章 塔に神様を召喚してみよう
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閑話 とある神殿での出来事

 西の大陸であるスキュラ大陸に、ペリクレス神殿と呼ばれる神殿がある。

 過去にはスピカ神が降臨したこともあるということで、ペリクレス神殿は神与物扱いになっている。

 当然、周囲の町や村に存在する神殿を統括する役目を担っており、大陸有数の規模を誇っていた。

 人々は建物としてのペリクレス神殿と区別をするために、周辺の神殿をまとめている神職者達のまとまりを単純に教会と呼んだりしている。

 教会組織が一つの大きな集団としてまとまらないのは、この世界が一柱の神だけを信仰する世界ではないためだ。

 ある神を中心に組織としてまとまると、じゃあこっちの神はどうなるんだ、となってしまうので、結果としてまとまることが出来ないのである。

 一応三大神と言う中心的な神はいるのだが、だからと言って頂点に立っているかと言えば、そういうわけでもない。

 そもそも三大神を信仰していない種族もいることが珍しくないこの世界において、一つの神だけを頂点に立ててまとまる組織など出来づらいのだ。

 逆にそれが原因で、対立と言うのが起きにくいので、宗教的な紛争が起きたことがほとんどないというのは、ある意味で神々の狙いと言えるかもしれない。

 直接神に確かめた者はいないのだが、そう主張する者達は常に一定数存在しているのであった。

 

 ペリクレス神殿にある少し広めの部屋には、教会の重鎮たちが集まっていた。

 それなりに忙しい者達なので、今集まっているメンバーたちが揃うことはほとんどない。

 だが、そのメンバー達が集まっているのには、きちんとした理由があった。

 以前よりセントラル大陸のミクセンの教会から、アマミヤの塔の支配者についての情報が送られてきていた。

 別にペリクレス教会だけに送られてきている情報ではない。他の神殿にも送られている情報だ。

 曰く、ミクセンの神殿内で交神を行った。

 曰く、神具らしきものを使っていた。

 曰く、神の御使いを引き連れている。

 細かい物を入れればまだあるのだが、大きくその三つの情報は神殿関係者の間で知られていた。

 そのため今回集まっているのは、その情報についてだけで集まったわけではない。

 問題になっているのは、新たにミクセンの教会から送られて来た情報の確認のために集まっていた。


 曰く、三大神の神威召喚に成功した。

 

 先の三つの情報とて、神殿関係者達を揺るがすようなものだったのは間違いがない。

 だが、今回の情報は、はっきり言って全くインパクトが違う。

 極端な話をすれば、交神も神具の使用も聖職者たちにしてみれば珍しいことは確かだが、全く例がないわけではない。

 また、過去には人間や亜人たちと行動を共にした神の御使いもいなかったわけではない。

 そう言う意味では、以前まで流れていた情報は過去に例がある物なのだ。

 だが、神威召喚となると話は全く別になる。

 何しろ成功例は、過去に一度もないのだから。

 召喚陣が神よりもたらされたその時から、特に聖職者たちの間で召喚を行おうと様々な実験が繰り返されてきた。

 そのいずれも成功したためしがないために、人には召喚不可能という結論さえ一部で出されている。

 その神威召喚に成功した。しかも同時に三大神を召喚するというおまけ付きで。

 前人未到どころの話ではない。

 召喚陣の起動すらできないと言われている中で、召喚そのものを成功させて、三大神を同時に召喚した。

 はっきり言えば、世界が違えば聖人扱いされてもおかしくない偉業なのだ。

 下手をすれば、考助を中心に一つの組織にまとまろうと考える者が出てきてもおかしくない話だった。

 ミクセンからの情報の中には、その本人にそう言う意識は感じられないというのがあり、ある意味で教会関係者にとっては救いともいえた。

 ちなみにこの情報はローレルからの物なのだが、ローレルとて伊達や酔狂で神殿長をやっているわけではない。

 その程度のことは見抜けるので、神殿長と言う地位にいるのだ。

 それはさておき、考助の偉業は瞬く間に世界中の高位の聖職者たちの間に広まることになったのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ペリクレス神殿に集まった重鎮たちは、その情報を元にある話し合いが行われていた。

 その話合いが何かというと、ローレルからの嘆願にあった。

 その嘆願とは、アマミヤの塔の神殿に派遣する人材を送ってほしいという物だ。

 事ここに至って、教会側は塔に存在する神殿を無視することは出来なくなった。

 何しろ三大神からの祝福を得ているのだから。

 どうあっても聖職者の誰かを入れないと、面目が立たなくなってしまった。

 加えて、かなりの地位がある者を送り込まないと、三大神の祝福を得た神殿の管理者として見劣りしてしまう。

 神の方は気にしないだろうが、神殿を訪れる信者たちは別なのだ。

 下手な者を送り込むと、教会自体が侮られる可能性がある。

 だからこそローレルは、ほぼ全世界の神殿へお伺いを立てたのだ。

 その辺の事情は、ペリクレス神殿の重鎮たちも理解している。

 理解しているからこそ、人選に難航しているのだ。

 いよいよもって、適切な人材がいないという結論に達しそうになったとき、ある人物が立候補してきた。

「・・・私が行きましょうか?」

 その言葉に、全員の注目が集まり、そして同時に驚愕の表情が広がった。

 およそこういった席では、ほとんど発言することがない、お飾りの者だったからだ。

 最初は当然のように反発の声が聞かれた。

 発言者はそれに対して、何か言うでもなくそれ以降は黙ったまま議論に耳を傾けていた。

 その人物は、ペリクレス神殿にとっても虎の子の存在だったのだ。

 だが、だからこそ、今話題になっているアマミヤの塔の神殿と、つり合いが取れているともいえる。

 反対意見が出尽くしたところで、今度はポツリポツリと消極的賛成の意見も出され始めた。

 とは言え、先ほどの反対意見程の勢いはない。

 このまま見送り、という結論になりそうになったところで、また別の者の言葉が重鎮たちの胸に刺さった。

「・・・他の教会はどう対応するのでしょうね?」

 これには全員が沈黙した。

 全ての教会組織がそうだとは言わないが、ペリクレス教会と同様に虎の子を持っている教会は他にもある。

 はっきり言えば、三大神の祝福を授かった神殿との繋がりは出来るだけ持ちたい。

 それが、元になってしまうとは言え、ペリクレス神殿に在籍していた者ならなおさらだ。

 逆に言えば、こちらが送らずに他の教会が送った者が、収まってしまうとその教会が繋がりを持てるということになる。

 話し合いは遅くまで続けられることになり、その日の結論は先延ばしされることになった。

 

 翌日、結局ペリクレス神殿は虎の子であるハーンを、塔の神殿へ送ることを決定した。

 当然自信をもって送り込むことに決めた人材でありこの時点では、派遣を断られることになるとは、欠片も考えていないのであった。

本編にしてもよかったでしょうか?w

これで第10章は終わりです。


2014/6/27 誤字訂正

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