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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(9)ファースの反省

 少年たちの護衛である騎士たちを見送ったフローリアとミアは、薬草採取を終えてから街へと戻った。

 途中途中で、どこかから視線を感じたりもしていたが、それは完全に無視している。

 誰が、どういう目的で行っているかわかっているので、あえてつつく必要もないと考えていたのである。

 自分たちは何もやましいことはしていないので、監視なら好きにすればいいと思っていたということもある。

 とにかく、クラウンの支部で報告を終えたフローリアとミアは、二体の狼と一緒に宿に戻りようやく人心地着いた。

 

 宿屋の女将から貰ったお湯で体を拭いてから部屋に入ったフローリアは、眉をしかめながら言った。

「むう。やはり風呂に入れないとなると、不便だな」

「気持ちはわかりますが、どうしようもないですよ、母上」

「わかっている。だが、愚痴ぐらいはいってもいいではないか。やはり便利なものに慣れすぎるとだめだな」

 フローリアは、そんなことを言ってため息をついた。

 

 贅沢すぎると分かっているので、首を左右に振って風呂に入りたいという思いを断ち切ったフローリアに、ミアが意味ありげな視線を向けた。

「迎えは来ると思いますか?」

「なんだ。気づいていたのか」

 ミアの言葉に、フローリアが肩をすくめながらそう答えた。

「それはもう。あれだけあからさまなことをされれば、気付かないはずがないです」

「それもそうだな」

 ミアの答えに、フローリアも当たり前だという顔をして頷いた。

 

 ミアが言っているのは、あの少年に渡した布のことだ。

 フローリアが書いた文言はミアにはきちんと見えていたが、書かれていた内容の意味までは分からない。

 ただ、それがなんのためのものかは、推測できていた。

 

 じっと見つめてくるミアを見て、フローリアはもう一度肩をすくめた。

「さて、どうなるかはわからないさ。あの少年がきっちりと相手に渡してくれれば通じるだろうが・・・・・・その前に没収でもされたら意味がないしな」

「それもそうですね」

 言われてみれば当然の言葉に、ミアも素直に頷いた。

 フローリアの顔を見れば、届いても届かなくてもどちらでも構わないと考えていることが分かったためだ。

 フローリアがそう考えているのであれば、自分が口を挟むようなことではない。

 フローリアが撒いた種がきちんと芽吹くことになるのかどうか、しばらくは楽しみに待つことにしようと、人ごとのように考えるミアであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 護衛の騎士たちに守られて屋敷へと着いたファースとヘルダは、そのまま真っ直ぐに父と母がいる部屋へと向かった。

 屋敷に着いたらすぐに向かうようにと言われていたのだ。

 両親が待つ部屋に入ったファースとヘルダは、さらに別の人物が立っているのを見て、少しだけ驚いたような顔になった。

 そこには、食事時くらいにしか姿を見せないはずの祖母であるシェライラがいたのである。

 シェライラは、ファースの父であるロスシーの実の母親だ。

 ついでにいえば、フロレス王国の元王女でもあるので、現在でも純然たる影響力を国内に持っている。

 もっとも当人は、そんなものは関係ないとばかりに、普段は屋敷の離れに住んでいて女の社交などに口出しをすることもほとんどなくなっているのだが。

 

 そんなシェライラが姿を見せていることにファースとヘルダが驚きを示すのは、当然のことだろう。

「なんですか、ふたりとも。孫が揃って暴漢に襲われたと報告を受けて、心配をしては駄目とでもいうの?」

 シェライラからそんなことを言われたファースとヘルダは、揃って慌てて首を左右に振った。

 そして、一気に驚きから覚めたファースが、両親とシェライラに向かって頭を下げた。

「この度は、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした」

 ファースがそう言うと、ヘルダも慌てて頭を下げた。

 

 ファースとヘルダが揃って頭を上げるのを確認してから、ロスシーが厳しい顔になって言った。

「さて、ファース。なぜいきなり呼ばれたかはわかっているな?」

 普通、暴漢に襲われたとなれば、多少の休息を取ってから呼ばれるはずが、今回は直行するように言われていた。

 その理由に気付けないほど、ファースは鈍くはない。

「はい。自らの能力スキルを過信しすぎました。結果としては無事に帰ってこれましたが、あくまでも結果でしかありません」

「そ、そんなもとはといえば私が!」

 反省して頭を下げるファースを見て、ヘルダが慌てた様子で何かを言おうとした。

 

 だが、ファースは首を左右に振った。

「いいやヘルダ。最終的に構わないと決めたのは私なのだから、ヘルダが何をしていても関係がないのだよ」

 ファースはそう言ったが、ヘルダはまだ「でも・・・・・・」と何か言いたげだった。

 それに対して、さらに続けるようにロスシーが言った。

「ヘルダ。私が問題にしているのは、二人が屋敷を抜け出したことではない。ファースがスキルを過信して調子の乗りすぎたことを注意しているのだよ」

 ロスシーは、少しだけ優し気な表情になってヘルダにそう言った。

 

 ファースは、神から《直観》スキルを与えられている。

 クラウンへ登録すればもっと持っていることが調べられるかもしれないが、神からの啓示で判明しているスキルはそれだけだ。

 そのスキルは、ファースの身に危機が起こる際に、回避できるように事前に何らかの方法で知らせてくれる。

 ファースがヘルダの「お願い」を聞いて、簡単に街の外にまで出てしまったのは、そのスキルの存在があったためである。

 だが、あの暴漢に襲われるという結果になってしまった。

 結果は女性二人の冒険者に助けられて、スキルは正しいということにはなったが、そんなことは問題ではない。

 場合によっては、ファースは無事でもヘルダがただでは済まなかったということもあり得たのだから、ロスシーが怒るのも当然だった。

 

 反省の色を見せるファースに、ロスシーはしばらく厳しい顔をしていたが、やがてそれを崩して頷いた。

「・・・・・・まあ、反省しているのであれば、今回はいいだろう」

 なんだかんだ言いながらロスシーは、自分の子供たちには甘いのである。

 

 それが身に染みて分かっているファースは、反省の態度を崩さないままシェライラを見た。

「あの、御祖母様、心配させてしまって申し訳ございませんでした」

 普段は姿を見せない祖母がわざわざ来ているということは、自分たちのことを心配してくれてのことだということは分かっている。

「いいのですよ。元気な姿を見せてくれて安心しましたよ」

「ありがとうございます。それで、いきなりこんなものを渡してもいいのかわからないのですが・・・・・・」

 そう言って言いよどむファースを見て、シェライラは首を傾げた。

 

 それを見たファースは、それでもあの女冒険者から渡された布を取り出した。

 そして、一応危険がないことが分かるように広げながら、シェライラへと見せた。

「実は、私たちを助けてくれた冒険者の一人が、これを渡してほしいと――」

 ファースがその言葉を最後まで言うよりも早く、シェライラは驚いたような顔をして勢いよく近づいてきて、その布を手に取った。

 

 そして、シェライラのその様子を見て、皆が驚くのも構わず、傍にいる自分付きの侍女へと指示をだした。

「す、すぐにファースを助けたという冒険者をここへ連れてきなさい! 扱いは私への賓客です!」

 それを聞いて、その場にいた一同は、驚いてシェライラを見るのであった。

10話までに終わりそうもないですね。がっくり。

短く終わるといったのは嘘になってしまいました。

申し訳ございません。


書いてて楽しいのですよ、とってもw

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