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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
1311/1358

(1)実家(?)へ挨拶

ここから第13部第9章になります。

ただ、第9章ではなく、間章(短め)で済ませるかも知れませんので、

章が変わったということだけご理解ください。

 フロレス王国の王都へと転移したフローリアとミアは、すぐにアレクたちが暮らす屋敷へと向かった。

 アレク夫婦は、王都の大商人たちが住んでいる高級住宅街に居を構えている。

 そのため、当然のように門の前には門番が立っているのだが、いきなり訪ねてきた二人をいぶかし気な表情で見てきた。

「なんだお前たちは?」

 遠慮なくジロジロとみてくるその門番を見て、フローリアは首を傾げた。

「おや? ここまで連絡が来ていないのか? 今朝こちらに向かうと連絡したはずだが・・・・・・?」

 アマミヤの塔の管理層からアレクの屋敷へは、通信具を使って交信するすることができる。

 それを使って事前に連絡を入れておいたのだが、どうやら門番まではその話が来ていなかったようだ。

 

 門番の様子を見て、さてどうするかと考えるフローリアだったが、諦めて戻るよりも先に状況に変化が起きた。

 門からほど近い場所にある屋敷の扉が開いて、慌てた様子で家令のひとりが門まで駆け寄ってきたのだ。

 そしてその家令は、フローリアとミアのところに来るなり、慌てて頭を下げた。

「申し訳ございません。連絡に不手際があったようで!」

「ああ、いや。構わない。それで、通っていいのか?」

「勿論でございます、お嬢様」

 その家令がフローリアに向かってお嬢様と言うと、不思議そうな顔でそのやり取りを見ていた門番が、驚いたような表情になった。

 これだけ立派な屋敷に住める者の「お嬢様」が、馬車どころか護衛らしき者も連れずに歩いていること自体が不思議なのだから、そうなるのも当然である。

 

 家令が門番に向かって何かを合図すると、門番は慌てた様子で門を開けた。

 そこから堂々と敷地内に入ったフローリアとミアは、家令に案内されるまま屋敷へと入った。

 そしてそこには、以前からアレクの家に仕えていた最年長の家令が頭を下げながら待っていた。

「おお、まだまだ現役で頑張っていたか」

 フローリアが嬉しそうにそう声をかけると、その家令は嬉しそうに目を細めながらホホと笑った。

「仕事のほとんどは若い者に引き継ぎました。今は旦那様の遊びの相手ですよ」

「それはいい。父上の一番嫌うものは、暇だからな」

 家令の軽口に、フローリアも笑いながらそう返した。

 

 フローリアと軽い挨拶を交わしたその家令は、ミアに向かってもきちんと頭を下げた。

「ご無沙汰しております」

「ええ。あなたも元気そうでよかったわ」

 アレクがラゼクアマミヤで宰相をしているときに、この家令はアレクの家の一切合切を取り仕切っていた。

 当然、ミアともそれこそ生まれた時から面識があるのだ。

 

 

 懐かしい家令との挨拶を終えたフローリアとミアは、案内されるままにリビングへと向かった。

 そしてそこでは、アレクとソニヤが待っていた。

「よく来たな、フローリア、ミア」

「本当に。連絡が来たときは驚きましたよ」

 初老と言っていい年齢になっているアレクとソニヤだが、まだまだ元気な様子で、揃って立ちながら出迎えていた。

 

 そのアレクとソニヤの傍に、まずはフローリアから近寄って頭を下げた。

「久しぶりです。父上、母上」

「ご無沙汰しております。おじい様、おばあ様」

「そんな堅苦しい挨拶は終わりにして、久しぶりにのんびりと話をしよう。時間はあるのだろう?」

 アレクが目を細めながら椅子を勧めてくると、フローリアも頷いた。

 もともと今日は、アレクの屋敷に泊めさせてもらうつもりだったので、話をする時間はたっぷりとあるのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「――なるほど。王国内の旅行か」

 フローリアから話を聞いたアレクは、納得顔で頷いた。

「まあ、たまにはそういうこともいいのではないか? 大きな事件も起きないだろうしな」

 そう言って何やら意味ありげな視線を向けるアレクに、フローリアとミアは苦笑を返した。

「父上、そういうことを言うと、フラグになると言うらしいぞ?」

「むっ。どういうことだ?」

 意味が分からないことを言うフローリア()に、アレクは首を傾げた。

 

 フローリアは、考助から昔に聞いた説明をそっくりそのまま教えた。

「――というわけで、面倒な事態が起こる前に、関係がなさそうなことで準備がされることを、フラグを立てるというそうだ」

「・・・・・・なるほど」

 フローリアのあっているようで微妙に間違っている説明を聞いたアレクは、納得した顔で頷いた。

 ここではそれを訂正する者がいないので、そのままそういうものだと浸透してしまった。

 もっとも、この場に考助がいたとしても、本来の意味での説明をすることは難しいだろう。

 

 苦笑をしながら自分とフローリアの話を聞いていたミアに、アレクが視線を向けて言った。

「フローリアはともかく、ミアも負けず劣らず巻き込まれ体質のような気もするが・・・・・・」

「そ、そんなことはない・・・・・・はずです」

 そう言って微妙に自信なさげな表情になるミアに、フローリアは苦笑をしながら言った。

「ここははっきり違うと答える場面だぞ? まあ、自信が持てないのも無理はないと思うが」

 ミアは、というよりも、考助の子供たちは、考助ほどではないにしろ、小さい時からいろいろなトラブルに巻き込まれてきた。

 それを考えれば、今回の旅で何かが起こるのではと言われるのも仕方ないことだった。

 ちなみに、ミアはミアで、母上フローリアも負けてないはずと考えていたが、この場でそれを口にすることはなかった。

 

 そんなミアの気持ちに気付かないまま、アレクはようやくここで、ふたりの足元にいる存在に視線を向けた。

「それで? その二体の狼は、コウスケ殿からの贈り物か?」

「贈り物というよりも、どちらかといえば、護衛だろうな」

 フローリアは、そう言いながら自分の足元にいた狼の首筋を撫でた。

 勿論、考助の眷属であり、ナナを除けば最高の種族にまで進化をしている。

 ついでに、ミアの足元にいる狼も同じ種族だ。

 それだけでも、考助が過保護だということがわかる。

 

 そんなことまでは分からないアレクだったが、ナナという存在を知っているために、ただの狼ではないということは理解できている。

「そうか。それなら、早めに従魔登録は済ませておくんだな」

「ああ、明日にでも支部で登録をするさ」

 フローリアのその返答を聞いたアレクは、そうするといいと言って頷いた。

 

 その後はソニヤも交えて軽い雑談をすることになるのだが、やはり話の中で考助が出てくることになるのは、当然と言えば当然のことなのであった。

というわけで始まりましたフローリアとミアの二人旅。

初めての試みなので、どういう反応が返ってくるか、不安と共に待っておきます。

m(__)m

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