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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(10)久しぶりの・・・・・・

 久しぶりに第五層にある神殿を訪ねたシルヴィアは、目の前の光景に首を傾げた。

 百合之神宮へのルートが出来ているのに、相変わらずここの神殿を訪ねて来る者がいるのはまだわかる。

 転移門があって一瞬で行けるとはいえ、各神社へ行くにはそれなりの距離を徒歩で歩かなければならない。

 中央の神社だけで済ませてしまえば、さほど時間がかからないとはいえ、転移門を使うのに並ばされることもある。

 それならば、お手軽に第五層の神殿で済ませてしまおうと考える者がいてもおかしくはない。

 それに、そもそも第五層の神殿を訪ねて来る者は、昔から馴染みのある者だったり、ご近所さんだったりすることが多い。

 ・・・・・・はずだった。

 

 シルヴィアが首を傾げていたのは、どう見てもどこかの神殿からの使いとしか思えないような集団が、第五層の神殿内にいたからである。

 他の神殿関係者には、現人神を主神としている神殿(神社)は、百合之神社に移っていると宣言してあるはずなので、こちらに来るのは珍しいことだ。

 散歩ついでなのか、一緒に着いてきたナナの首を撫でてから、シルヴィアは神殿の中へと入った。

 神殿の中に入って、その集団に近付いてみれば、彼らが何やら騒ぎを起こしていることがわかった。

 見れば、集団の周囲にいる者たちは、困惑したような表情を浮かべている。

 

 そのためシルヴィアは、助け舟を出すつもりで間に入ることにした。

「――一体何の騒ぎでしょうか? ここが現人神の始まりの社だと知ってのことでしょうか」

 始まりの社というのは、考助を現人神として祀るようになった初めての建物という意味を込めて名付けられている。

 別に考助がそう呼ぶように指示をしたわけではなく、この神殿を訪ねて来る者たちが、いつの間にか呼ぶようになっていたのだ。

 シルヴィアやココロが把握した時には、すでに広がっていたので、止めることもできなかった。

 それに、間違っているわけではないので、あえて訂正する必要もない――どころか、分かりやすい呼び名なので、自らも使うようになっていた。

 

 少しだけ咎めるように言ってきたシルヴィアに対するそれぞれの反応は、対照的だった。

 まず、普段から神殿に来ている者たちは、しまったという顔になっている。

 それに対して、騒ぎを起こしているであろう集団は、突然入ってきたシルヴィアを、なんだこいつはという顔で見てきた。

 その反応を見ただけでも、どちらが原因になっているのかはすぐにわかった。

 

 それでも、一応神殿の主神の巫女であるシルヴィアは、どちらの言い分も聞き終えるまでは中立でいなければならない。

 自分を見てくる視線が不快だったとしても、それを表に出さないようにしながら、それぞれを見ながら続けた。

「なにが原因かは分かりませんが、神の社で騒ぎを起こすのは、感心しませんよ?」

 シルヴィアは、なるべく刺激しないように丁寧に言ったつもりだったが、どうやらあまり意味がないことのようだった。

「なんだ、突然入ってきて。お前には関係がないだろう?」

 集団の中心にいた男が、ジロジロと視線を向けて来ながらそう言ってきた。


 その言葉に眩暈を感じつつも、シルヴィアは表情を変えずに言った。

「仮にも聖職者の格好をしているのであれば、その言葉遣いから直されてはいかがですか? その調子だと、誰もまともに話は聞いてくれないと思いますよ?」

 公平に話を聞かなければならないところを、思わずその言葉が口をついて出てしまった。

 別に説教をするつもりはなかったのだが、あまりにもひどすぎたのだ。

 どちらかといえば、修行を重ねたというわけではなく、無頼者を集めてローブを着せて聖職者に仕立て上げたように見える。

 そんな印象を受けたので、つい最初から攻撃的な言葉を言ってしまった。

 

 まだまだ修行が足りないと内心で反省しているシルヴィアに向かって、集団の者たちがザワリとした。

「ほうほう。この俺に向かって、偉そうに説教かい?」

「別に説教というわけではないのですが……自分の話を聞いてもらうのにも態度があると、所属する神殿で教わらなかったのでしょうか?」

 重ねてそう言ったシルヴィアに、中心の男を除いた他の者たちの顔色が変わっていた。

 一人だけ巫女服を着た女性もいたが、なぜかその女性だけは成り行きを見守るように黙っている。

 

 その女性をさりげなく見てから、シルヴィアは中心の男に視線を向けてさらに続けた。

「そもそも神の社である神殿で騒ぎを起こしているということ自体が、聖職者としてはあり得ないのですが、そのことはどう考えているのですか?」

「いちいち、うるせえな。騒ぎを起こしたくなければ、黙ってこっちの言うことを聞けばいいんだよ!」

 それを聞いて、これは話が通じないと理解したシルヴィアは、わざとため息をついてから顔見知りの女性へと話しかけた。

「そもそも、騒ぎの原因は何だったのでしょうか?」

 

 話しかけられた女性は、シルヴィアのことを昔から知っている者だったので、少しだけ固い顔になりながら答えた。

「なんだも何も、そいつらは、いきなりやってきて自分たちがこの神殿を管理すると言ってきたんだよ」

「・・・・・・・・・・・・はい?」

 予想外のことを言われたシルヴィアは、思わず目が点になってしまっていた。

 

 第五層の神殿に聖職者の管理者を置かないということは、ラゼクアマミヤの民であれば誰でも知っている事実である。

 それは、セントラル大陸以外の神殿関係者にとっても同じことだ。

 いや、そのはずだ。

 考助が現人神になったばかりの頃ならともかく、今更そんなことを言ってくる者がいるとは、シルヴィアをして信じられないことだったのだ。

 

 シルヴィアと馴染みの女性の言葉を聞いて、なぜだか集団の者たちは、得意そうな顔になっていた。

「折角立派な建物が空いているんだ。俺たちが有効的に利用してやろうと言っているのが、なぜ悪い?」

 ニヤニヤとした表情を浮かべてこちらを見てくる男たちを見ながら、シルヴィアは頭痛をこらえるようにこめかみに手を当てた。

「なんでしょう・・・・・・。ここしばらくは静かだったから大丈夫だと安心していたのですが、定期的にこういう輩が湧いてくるのは、定めか何かなのでしょうか?」

 それは、誰に言うでもなく、思わず口をついて出てしまった言葉だったが、その場にいた全員に聞こえていた。

 わずかに怒りのようなものも混じっていたが、残念ながらこの場にいる者で、それに気づける者はいなかった。

 

 そんなシルヴィアに、男はさらに重ねて何かを言おうとしたが、当の本人がそれをさせなかった。

「――もういいです。ナナ、やってしまってください」

 シルヴィアがそう言うと、足元にいたナナが「いいの?」という感じで見てきた。

「いいのですよ。ただ、血は流さないようにしてください。あとは好きに任せます」

 シルヴィアがそういい終えるのとほぼ同時に、ナナが動き出した。


「なっ・・・・・・!?」

 ただし、動いたといっても、その姿を完全にとらえた者はいなかったはずだ。

 ナナが動いたと思った次の瞬間には、中央の男と巫女服の女だけが残されて、あとはその場に倒れ込んでいったのだ。

 もし、その動きを捉えられていたとしたら、無様にやられるということはなかったはずだ。

「し、神殿で騒ぎを起こしたら駄目なんじゃないのかよ!?」

 自分が言ったことをあっさりと覆した男に、シルヴィアは何も言わなかった。

 ただ、無言でナナを見て一つだけ頷いた。

 

 シルヴィアは、ナナがわざと中央の男と巫女服の女を残していたことに気付いていた。

 だが、女性はともかく、男まで残しておく必要はなかったので、好きにしていいと伝えたのだ。

 その意図がしっかりと伝わったのか、ナナはあっさりと中央の男の意識も刈り取ってしまった。

 

 それらの一連の流れを見て、巫女服の女はわなわなと手を震わせながら口元に当てている。

「それじゃあ、詳しい話をきっちりと聞かせてもらいましょうか」

 シルヴィアが女に向かってそう言ったのは、もちろんその女がこの騒ぎの中心にいると確信しているからだ。

 その女が何かを言うよりも早く、シルヴィアはさっさと自ら動いて身動きが取れなくなるように、聖法を使ってあっさりとその場を収めるのであった。

たまに沸きます。

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