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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(7)怒れるワンリ、浮かれるワンリ

 考助は、とある人物にむくれられて、困ったような笑みを浮かべていた。

「お兄様、ずるいです」

「いや、ワンリ。ナナが続いたのはたまたまだから」

「むー」

 考助が慌てて言い訳をするも、ワンリは機嫌を直そうとせずに膨れている。

 

 ワンリが何を怒っているのかというと、ここ数日、考助がナナと立て続けに冒険者活動をしていたことを知って、なぜ自分を誘ってくれなかったのかと言っているのだ。

 そんなワンリに気付いているのかいないのか、ナナは考助の足元で、猫のように毛づくろいをしている。

 それを見つけた考助は、心の中で完全に気付いていて、敢えて誤魔化しているだろうと突っ込んでいた。

「――――お兄様、聞いていますか?」

「あ、はい。ごめんなさい。ちゃんと聞いていますよ」

 一瞬だけナナに視線が行ったことに気付いたワンリからしっかりと怒られて、考助は反省した様子を見せるために小さく俯いた。

 

 そんなワンリと考助のやり取りを傍で見ていたシルヴィアが、くすくすと笑いながら間を取り持つように言った。

「まあまあ。ワンリもそれくらいで許してあげましょう? そうしないと、次の探索に連れて行ってもらえないかも知れませんよ?」

「それは嫌です!」

 抗議するように言ってきたワンリに、考助は苦笑しながら首を振った。

「いや、そんなことはしないから」

「本当ですか!?」

「本当本当」

 そう言いながら二度ほど頷いた考助を見て、ワンリはようやくホッとした表情を浮かべる。

 

 そしてワンリは、今度はナナをキッと睨んでから言った。

「とにかく、次の探索は、ナナちゃんは抜きで!」

「ワフッ!?」

 その宣言に、我関せずという態度を取っていたナナが、驚いたように顔を上げて考助とワンリを交互に見てきた。

 その仕草を見ただけでも、しっかりとこれまでの会話を聞いていたことがわかる。

 

 ワンリが怒った様子で、ナナからわざとらしく視線をずらして、絶対に許しませんという態度をとっている。

 それを見たナナは、どうにか機嫌を直そうと、クーンクーンとワンリにすり寄った。

 だが、それをされたワンリは、

「そんなことをしても絶対に許しません! 私に黙っていた罰です!」

 そもそもは、考助がワンリに黙っていたという事もあるのだが、何度か探索に言った後もナナとは会っていた。

 その時に、きちんと教えてくれなかったということで、ワンリは怒っているのだ。

 

 困り果てた様子で、尻尾を巻いているナナを見て、考助は思わず許してあげてと言いそうになってしまった。

 だが、ここで変にナナに手助けをすると、今以上にひどいことになることはよくわかっている。

 そのため考助は、助け舟を出すようにと、シルヴィアを見た。

 その視線の意味をしっかりと理解したシルヴィアは、一度頷いてからワンリに言った。

「ナナもこんなに必死になっているんですから、許してあげてはどうですか?」

「駄目です! 一度許すと、次も同じことをしますから」

「ワフッ!?」

 ワンリの言葉に、ナナが一瞬固まって、何故バレタという顔になった。

 勿論、見た目は狼なので、表情など気付けないはずなのだが、考助ではなくてもその場にいた全員に伝わるほどの分かり易い態度だったのだ。

 

 さすがにナナのその態度に、皆の呆れたような視線が集まった。

 それを受けて、分が悪いと察したのか、ナナはクーンと鳴き声を上げながら助けを求めるように考助を見た。

「・・・・・・うーん。まあ、探索に関しては僕も悪いからね。ナナだけが悪いわけじゃない・・・・・・と言いたいところだけれど、今のはナナが悪いな」

 考助が苦笑しながらそう言うと、ナナは反省するように首を項垂れさせた。

「というわけで、ワンリの希望通りに、次の探索はナナはなしで。でもそれの次はちゃんと連れて行くから。それでいいよね?」

 その考助の言葉を聞いて、ナナは最終的に仕方ないという様子で、コクリと頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなやり取りがあった翌日。

 考助は、約束通りワンリを連れて第五層で狩りを行っていた。

 当然、ナナは連れてきていない。

 他にいるのは、コウヒだけである。

 

 そして、ちょうどクラウンの依頼にあった獲物を見つけた考助が、その相手に向かって攻撃を仕掛け――ようとしたところで、そのまま止まってしまった。

「あー、これは駄目かな?」

「駄目ですね」

 考助が諦め気味にため息をつくと、コウヒがはっきりとそう即答して来た。

 

 一応考助は、狩りに出る前に自分が倒すとワンリには言っておいた。

 ところが、その言葉が耳に入っていなかったのか、それともすっかり忘れ去ってしまったのか、狐型になっているワンリは、獲物に突進していって速攻で倒してしまったのだ。

 誰がどう見てもオーバーキルだということは分かる。

 その時のワンリの浮かれようを見て、考助とコウヒが今のワンリに何を言っても無駄だと判断したのである。

 ワンリがそうなっているのには、考助にも責任の一端がある。

 仕方がないので、考助(とコウヒ)はワンリの狩りに付き合い続けることにした。

 

 

 そしてその結果、数時間後には、人型に戻って考助の前で正座をしているワンリの姿があった。

「――――――すみませんでした」

 項垂れてそう言ってくるワンリを見れば、心から反省していることは分かる。

 以前のナナのように、見た目でだましているということもなさそうだ。

 

 自分が浮かれてやらかしたことはしっかりと覚えているのか、ワンリは一言謝ったきりそれ以上はなにも言ってこなかった。

 それを見た考助は、少し笑いながらワンリの頭を撫でた。

「お兄様・・・・・・?」

「うん、まあ、本来なら怒らなければならないけれど、今回は僕も悪かったからね。これでチャラという事で」

 甘々過ぎるとわかっていても、考助にはそう言うことしかできなかった。

 そんな考助を、ワンリは少しだけ頬を上気されて「ハイ」と頷くのであった。

すっごく久しぶりにナナとワンリの掛け合いを書いた気がしますが、非常に書きやすかったです。

(ワンパターンしかないからかな?w)

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