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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第12部 第1章 引っ越し
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(15)いつもの日常へ

 南にあるエルフの森は侵入不可という結果だけを残した考助たちは、浮遊島を経由して管理層へと戻ってきた。

「やれやれ着いた着いた。エルフの森は残念だったけれど、全体としては成功かな?」

 風呂で体を洗ってからくつろぎスペースのソファに腰かけた考助は、コウヒが用意した飲み物を口にしながらそう言った。

「そうね。神樹を手に入れるという目的は果たしたのだから、十分じゃない?」

 考助と、同じように飲み物を飲んだ後で、コレットもそう言いながら頷いていた。

 

 コレットの言葉を聞いて、フローリアがふと思い出したように聞いて来た。

「そう言えば、神樹は無事に手に入ったが、塔には登録されたのか?」

「ああ、それね。さっきちょっとだけ確認してみたけれど、ちゃんと登録されていたよ。――ただ、残念ながらユニーク扱いだけれどね」

 考助が最後にそう付け足すと、フローリアは残念そうな顔になった。

「そうか。もし複数植えられるのであれば、他の塔にも植えてみたかったのだが」

「それは僕も考えていたけれどね。そう上手くいかないってことかな」

 神樹も世界樹ほどではないにしろ珍しい樹木といえる。

 そのため、容易に増やすことが出来るようにはなっていないようだった。

 

 皆が残念がる中で、コレットはいち早く立ち直っていた。

「まあ、あの神樹が成長すれば、同じように枝を分けてもらえるようになるんじゃない? その時を狙って増やしていけばいいじゃない」

 エセナに見てもらえれば、枝をもらえるかどうかも判別がつくはずだ。

 神樹から枝がもらえるまで、どれくらいの期間を育てなければならないか分からないが、それを待つだけの時間的余裕はある。

「それもそうだな」

 エルフらしい気長なことを言ってきたコレットに、フローリアも同意していた。

 寿命的なことでいえば、フローリアもシルヴィアも木が育つまで待つだけの時間はあるのだ。

 

 何とも気の長い話をするコレットとフローリアに、シルヴィアが冷静な突っ込みを入れた。

「別にあの神樹が育つのを待つまでもなく、別の神樹を捜しに行けばいいのではありませんか?」

「シルヴィア、それは全くただしいわ。でも、出来れば今はその言葉は聞きたくなかったわ」

 コレットは、ひとつめの森はいなかったが、二つ目と三つ目は大活躍をしていた。

 その時のことを考えれば、いくらエルフであっても森の探索はしばらく遠慮したいというのが本音であった。

 

 それは別にコレットだけではなく、考助やフローリアも同じだったようで、多少うんざりとした顔をしている。

 もっとも、言ったシルヴィアも、内心では同じことを考えていた。

 先の言葉を口にしたのは、単に時間で解決する以外の別の道があるということを、皆と共有するためだ。

 安易に、伸びた寿命に頼った方法に思考が向かないようにするためでもある。

 

 他の者たちも、シルヴィアの意図はわかっているので、しばらく行きたくないという意思表示をするだけでそれ以上口にすることはしなかった。

 その代わりに、考助が別のことを口にした。

「まあ、森の探索はまたいつかということするのはいいとして、冒険自体はまたしてみたいかな?」

 塔に引きこもって作業を続けるというのも考助には合っているが、別に冒険が嫌だというわけではない。

 というよりも、むしろ好んでいると言ってもいいだろう。

 そのため、気晴らし程度には世界各地を回ってみたいという願望も持っている。

 

 次の考助の冒険欲がいつ来るかは分からないが、ここにいるメンバーも冒険自体が嫌いというわけではない。

「そうだな。ほかの大陸でのんびりと物見遊山の旅もいいな」

 とフローリアが答えれば、

「私は、いろんなところで食事をしてみたいわ」

 とコレットが食い気を出して、

「私は各地の建物を見て回りたいです。特に、歴史的なものなどがいいですね」

 とシルヴィアが聖職者らしい意見を口にした。

 ちなみに、この世界で歴史的な建造物いえば、たいていが城か神殿と相場が決まっている。

 

 それぞれの意見がでたところで、考助が頷きながらそのすべてに同意していた。

「どうせだったら人がいる所を回ってみたいなあ・・・・・・」

 今回は人どころか周りに木しかないような場所をずっと歩き回っていたので、何となく自然以外の場所を回って見たくなっていた。

 それは考助だけではなかったらしく、他の三人も同意していた。

「まあ、今日の今日は、流石に疲れているからそれも勘弁だけれど」

 考助のもっともな締めの言葉に、その場にいた全員が苦笑をしながら頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 旅の総括(?)を終えた考助たちは、今度こそ本当にのんびりとした時間を過ごし始めた。

 別に何をするでもなく、ただのんべんだらりとするだけだ。

 何ともいえないまったりとした時間が過ぎる中、何かの勘を察知したのか、ナナがやって来た。

 体を小さくしたナナは、ぴょんと考助の上に飛び乗った。

「うん? 何かあった?」

 ソファの上にあおむけに寝そべっていた考助は、首だけを動かして腹の上に乗っているナナを見る。

 

 そのナナは、考助の問いには答えず(?)に、そのまま寝る態勢に入った。

 いつものように単に一緒に寝たいだけと分かった考助は、また先ほどのようにうたた寝の体勢になった。

 一連の流れを見ていたフローリアは、苦笑しながらもなにも言わずにいた。

 ナナが考助に懐いているのはいつものことだが、旅から戻って久しぶりに寛いでいる考助の上にいるナナが、いつもよりも機嫌が良いように見えたのだ。

 

 その日は結局、終日まったりとした時間を過ごして終わり、また翌日からはいつもの日常に戻るのであった。

いつもよりも短いですが、まったり話も掛けたので今日はこの辺で。


これにて第13部第7章は終わりです。

次からは日常に戻って第8章になります。

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